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圧巻イーグル! 松山英樹が逆転でソニーオープン制覇。アジア勢最多タイのPGAツアー8勝目

速報
2022.01.17

<ソニーオープン・イン・ハワイ/ワイアラエCC(米ハワイ)/7044Y・パー70/1月13日~16日>

2022年の2戦目「ソニーオープン・イン・ハワイ」最終日、首位と2打差の2位からスタートした松山英樹が、スコアを7つ伸ばして首位に並び、プレーオフに進出。1ホール目でイーグルパットを沈め、逆転優勝を果たした。

写真はZOZOチャンピオンシップ(PHOTO/Tadashi Anezaki)

首位のR・ヘンリーと1打差で迎えた最終18番、2オンも狙えるパー5。それまで3日間、ティーショットでフェアウェイウッドを使用していた松山が抜いたのは、ドライバー。ティーイングエリアの右端いっぱいにティーアップし、左コーナーのバンカーを目がけ思いっきり振り抜いていったティーショットは、300Y先のバンカーをゆうに越え、343Yのスーパードライブ。

プレッシャーのかかったヘンリーは、フェアウェイウッドでのティーショットが右に抜けバンカーへ。

松山は残り208Yのセカンドを確実にグリーン左手前にオン。16mのイーグルトライはわずかにショートしたものの、このホール、バーディ。一方のヘンリーは、残り126Yの3打目を2.5mに寄せたものの、入らずパー。優勝はプレーオフに持ち越された。

プレーオフは18番パー5。ヘンリーのティーショットは、先ほどと同じ右バンカーへ。それを見た松山は、先ほどとは違い5番ウッドを選択。コースなりの薄いドローで確実にフェアウェイをキープした。

そして圧巻だったのが、残り277Yのセカンドショット。3番ウッドを振り抜いた当たりは、逆光の中、美しいフェードボールでピン手前1mにズドン。昨年の「ZOZOチャンピオンシップ」のセカンドショットを彷彿とさせる1打でイーグルを奪取し、2022年の初勝利を飾った。

「青木(功)さんが初めてPGAツアーで勝ったところで僕がまた勝てて凄くうれしい」と語った松山。これでK・J・チョイと並びアジア勢最多タイとなるPGAツアー8勝目。この調子なら、9勝目も時間の問題だろう。

<ソニーオープン・イン・ハワイ 最終成績>

1位 松山英樹 -23
——-プレーオフ——-
2位 R・ヘンリー -23
3位T K・キズナー -19
3位T S・パワー -19
5位T M・トンプソン -18
5位T L・グローバー -18
7位T M・クーチャー -17
7位T R・ノックス -17
7位T K・ミッチェル -17
7位T A・スベンソン -17
——-
12位T 小平智 -15
42位T 中島啓太 -10
79位T 金谷拓実 -3
118位T 星野陸也 E

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  • ソニーオープンでプレーオフを制し、米ツアー8勝目を挙げた松山英樹。一時は5打あったR・ヘンリーとの差を、なぜひっくり返すことができたのか。帯同する目澤秀憲コーチに話を聞いた。 PHOTO/Blue Sky Photos 目澤秀憲 めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任 松山英樹のスタイルは「ディフェンシブに攻める」 72ホール目、ドライバーで放ったビッグフック 72ホール目の18番、松山プロはドライバーでいきましたが、実はあの週、18番でドライバーを使ったのは初めて。マン振りしないとバンカーは越えないところを、あの極限のプレッシャーの中でしっかりとやり切ったのは凄いですよね。でも僕が“松山プロらしいな”と思ったのは2打目です。結果だけ見れば6番アイアンで打ってショート。「思ったより止まってしまった」感じでしたが、あれが強さの秘密で、いわゆる「ディフェンシブな攻め」。もちろん「3」狙いでしたが、「4」も残した攻め方。奥にこぼれて「5」になってしまう可能性のあるピンデッドは狙わず、うまく転がればチャンスにつく球を選択しました。ラッセル・ヘンリーのパットが入らなくなっていたのも伏線にあったと思います。バックナインでプレッシャーをかけ続けていましたからね。その決断が、73ホール目へとつながったのだと思います。 73ホール目のセカンドメジャーチャンプ「貫禄の1打」 73ホール目のティーショット、松山プロは5番ウッドを選択しました。正規の18番を回っているときに、プレーオフをどう戦うか、しっかり計算していたのだと思います。 この記事は有料会員限定です続きを読むには有料登録が必要です フェアウェイがあまり転がらないので、クリークで打っても転がってバンカーやラフに行くことがない。ピンポジションも全部頭に入っていて、2打目でスプーンの距離がちょうど残ることも考えていました。グリーンが軟らかくてスプーンで球が止まるというのも、もちろん計算に入っていたはず。2日目にもスプーンで打って、同じように球がカラーとグリーンの間で止まっていたのが脳裏にあったと思います。その2打目は左からの風にぶつけるカットボールで、277ヤードをベタピンに寄せました。僕はブッシュネル(距離計測器)越しに球を見ていましたが、「打った瞬間、ピンのほうに向かっているな」と思ったら、あの着弾ですからね。 驚いたのは、ボールスピードが178マイル出ていたことです。スプーンだと普段は170マイルぐらい。優勝争いのアドレナリンも出ての数字だと思いますが、そのプラスアルファも加味した距離を計算していたというのがまた凄い。ライ、グリーンの状況、風、アドレナリン、逆光、相手の状況、いろんな要素を加味した1打。ホールを重ねるごとに体も切れてスウィングも良くなっていましたが、プレッシャーがかかったときにあの球が打てるというのは、やはりメジャーチャンプの貫禄というのを見た気がします。 最大の勝因は“鉄のゲーム運び” ストロークゲインドパッティング(パットの貢献度)がフィールドの1位というのは、今までの勝ちパターンからすると珍しいですが、今回の勝因は、ショットやパットというよりは、やはり松山プロの「戦い方の妙」につきると思います。最終日はヘンリーとマッチプレーの様相でしたが、まさに真綿で締め上げるように、彼をじわじわと追い詰めていきました。後半を迎える前に5打差あれば“そこそこのリード”ですが、メジャーチャンピオンの松山プロの前では足りなかった。松山プロは前半の9番ホールで3パットしましたが、あれも攻めていった結果でしたから、ヘンリーは内心怖かったと思います。10番も攻めていたし、12番も出力全開、13番もティーショットは完璧で、15番もピンに寄らなかったのに長いパットを決めた。16番も外れましたけど、攻めたパットでした。ボディブローのように相手へ圧力をかけ、終盤になるにつれて、ヘンリーは体力も気力も削られていました。 前半終了時点で5打の差があった HOLE123456789PAR444344345松山-16-17-17-18-18-18-18-18-19ヘンリー-18-19-19-19-19-20-21-22-24 HOLE101112131415161718PAR434444435松山-20-21-21-21-21-22-22-22-23ヘンリー-24-23-23-23-23-23-23-23-23スタート時点では2打差。前半ハーフで5打差がついたが、後半怒濤の追い上げ。72ホール目でヘンリーをとらえ、プレーオフ1ホール目で勝利を収めた これまで松山プロと1年間一緒に取り組み続けてきて、クラブパスとか、フェースの管理とか、アタックアングルとか、「なんとなくこういう感じ」というのが頭の中に入ってきていて、そのうえでスウィングもブラッシュアップしてきました。ここ17試合で3勝というのは、もちろんそうしたベースもあると思いますが、でもそういうことだけじゃなくて、最近の松山プロは試合に勝つうえでの「ゲーム運び」に凄みが増している気がします。今回のソニーオープンでも、最終日は一日の流れを考えつつ、相手にプレッシャーをかけ続けた。争うのがヘンリーでもヘンリーではなくても、おそらく今の松山プロは、優勝争いであの駆け引きがやり切れるのだと思います。10月にZOZO選手権で勝って以来、仕事やオフなどで練習できていなかったと思いますが、ハワイにいた2週間でトータル44アンダーですからね。本当に安定感が出てきていると思います。このあと試合が続きますが、僕もしっかりとサポートしていきたいと思います。 週刊ゴルフダイジェスト2022年2月8日号より こちらもチェック!
  • 若手からベテランまで、役者が揃い、今年も熱戦が予想される男子の海外メジャー。そこでPGAツアー事情に詳しい、佐藤信人、杉澤伸章、内藤雄士、進藤大典の4人がどこよりも早くメジャーの戦いを予想。まずは4月のマスターズから!TEXT/Kenji Oba PHOTO/Taku Miyamoto、Tadashi Anezaki、Akira Kato マスターズオーガスタナショナルGC/4月7日(木)~10日(日) ――21年は松山英樹選手がグリーンジャケットに袖を通すという、日本人にとっては本当にうれしい大会になりました。松山選手の連覇に期待したいのですが……。 杉澤 16、17年のフェニックスオープンでも連覇は経験しているし、なによりオーガスタとの相性はタイガー並み。可能性は十分あるでしょう。佐藤 21年は前週のテキサスオープンで調子も悪く、イライラするようなところもあって、それがかえって期待値と自分自身へのハードルを下げ、それがいい結果につながったとの指摘もあります。杉澤 流れによって期待がプレッシャーとなるかエネルギーになるかは分かりませんが、僕が思うにメジャーでは最終日より初日の迎え方が大事だと思います。この辺は大ちゃん(進藤)のほうが詳しいと思うけど、松山選手のその辺をどう見ていますか?進藤 メジャーでは嫌でも気合いが入ります。これは“裏方あるある”ですが、「頑張ろうぜ!」なんて声をかけるのは野暮中の野暮(笑)。英樹はマスターズでの優勝以降、メジャーに余裕をもって臨んでいるように感じているんです。英樹自身の変化だけでなく、優勝の経験が「チーム松山」を大きく成長させているとも思うんですね。内藤 年末に金谷(拓実)くんが世界ランク50位に滑り込み、出場権を獲得しました。そこにアジアパシフィックアマで勝った中島啓太くん。日本人が活躍するとめっぽう強いのも松山選手なので、2人の活躍にも期待したいですよね。 続きを読む 佐藤 中島くんの場合、マスターズのほか、全米、全英オープンの出場権もあるわけでしょ。同年のメジャー3大会のローアマも可能性があるんじゃないのかな。内藤 日本人選手以外に目を向けると、そろそろ来そうだと感じるのがザンダー・シャウフェレかな。21年は最後まで優勝争いを演じ、勝ちたかっただろうし。そのリベンジか東京五輪では見事、金メダルにも輝きました。佐藤 まだマスターズチャンピオンを出していない国の選手は、松山選手の優勝に大きな影響を受けたんじゃないでしょうか。たとえばノルウェーのビクトール・ホブランとか、チリのホアキン・ニーマンとか。韓国ではY・E・ヤンが全米プロで勝っていますが、イム・ソンジェにも十分チャンスはあるでしょう。進藤 個人的にはジョーダン・スピースやブライソン・デシャンボーあたりが来るのかなあ、と思います。杉澤 あくまでも僕の願望ですけど、松山選手が誰にグリーンジャケットを着せるのか。その観点からいうとパトリック・カントレーなんかどうですか? 松山選手とは同じ歳、11年に松山選手がローアマ獲得、その翌年に松山選手を抑えてローアマになったのがカントレー。そうなったらドラマじゃないですか?佐藤 なるほどねぇ。グリーンジャケットもそうだけど、松山選手の用意するチャンピオンズディナーも気になります。松山選手の第二の故郷、仙台の牛タンとか出したら良さそうだけど、どうもタイガーは牛タンは嫌いらしい(笑)。進藤 確かジェイソン・デイも食べなかった気がします(笑)。 史上3人目の連覇達成なるか⁉ 86回目を迎えるマスターズだが、連覇を達成したのは65、66年のジャック・ニクラスと01、02年のタイガー・ウッズのみ 佐藤 あと願望で言わせてもらえば、ローリー・マキロイのキャリアグランドスラム。ゴルフ界がどんな熱狂に包まれるのかを肌で感じてみたい。マキロイは涙のたびに強くなる選手で、19年に母国のロイヤルポートラッシュの全英オープンでまさかの予選落ち。涙、涙の記者会見でした。しかし翌年は2勝を挙げて、フェデックスランク1位になりました。そして21年はライダーカップで負けて涙を見せて、10月のザ・CJカップで優勝しています。内藤 なるほど。ただ、ライダーカップから時間が空きすぎているので、その間にあと2勝は欲しいかな。体力的にもプレッシャーも年々大きくなって難しくなるだろうし、ここ2~3年が勝負になるでしょうね。佐藤 マスターズは優勝すると、毎年いつでも戻ってくることのできる大会です。たとえ現役を引退したとしても、あのパー3コンテストの輪のなかには、マキロイは絶対にいてほしいし、いるべき選手だと思います。個人的にはアーニー・エルスがいないのにも違和感があるし、寂しさもあります。それだけに絶対に勝ってほしい選手です。杉澤 コリン・モリカワもマスターズに勝つと、こちらもグランドスラムにリーチになるんですよね。もしかすると、そのあとに全米オープンにも勝って……、なんてとんでもないことも起こるかもしれません。あとで話が出ると思いますが、ショットの精度はもとより、彼の頭のよさは、メジャーで勝つ絶対条件だと思います。 佐藤信人 高校卒業後米国に渡り、ネバタ州立大ゴルフ部で活躍。帰国後プロテストを受験して合格。02年日本ツアー選手権などメジャー3勝、通算9勝。18年からJGTOの広報理事を務める 杉澤伸章 横田真一の専属キャディとしてキャリアをスタートさせ、02年から丸山茂樹の専属キャディとして渡米。現在は若手育成やゴルフ人口増加のために講演会やテレビ解説など多方面で活躍中 内藤雄士 日本大学ゴルフ部在籍中に米国ゴルフ留学し、最新ゴルフ理論を学ぶ。丸山茂樹のコーチとして海外も経験。現在も多くのプロをサポートしながら、ツアー中継の解説などメディアでも活躍 進藤大典 東北福祉大学では宮里優作や岩田寛と同期。宮里、谷原秀人の専属キャディとして活躍した後、13年からは松山英樹の専属キャディとして国内外を転戦。現在はメディアでも活躍する 週刊ゴルフダイジェスト2022年1月11・18日合併号より
  • インパクトの安定感、音、球の高さ、球質、どこを切り取っても一級品の松山英樹のアイアン技術は、どのようにして生まれ、磨き上げられてきたのか? まずはその凄さについて、プロ仲間に話を聞いた。 TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara、Takahiro Masuda 同業のプロゴルファーからも一目置かれる松山英樹のアイアンショット。日本屈指のアイアン巧者、宮里優作をして「アイアンのコンタクトが、毎回毎回、すごくいいところから入って、めちゃくちゃクリーンに当たるのがすごい。『カシュッ』という音でわかります」と言わしめるほど。インパクト音については、宮里以外のプロの口からも、「すごい」という証言が得られた。大学の後輩、比嘉一貴にによると「VISA(16年VISA太平洋マスターズ)で優勝したときに一緒にラウンドさせてもらって、聞いたことのない音の『分厚さ』にびっくりしました。ZOZO(21年ZOZOチャンピオンシップ)の練習場で見たときもそれは変わってなくて、音を聞くだけでナイスショットだってわかる感じでしたね」。単に強い衝突が起きた音ではなく、意思を持ってボールを操ろうとしている音。だからすごい。木下稜介は、「ショートアイアンは『ブワッ』じゃなく、『ふわーん』という感じで、真っすぐ、やわらかく飛ぶんです。入射角が絶妙で、スピン量が最適な証拠です」と言い、岩田寛は、「(松山が自身最高のスウィングをしていたと語る)13年のスウィングが好きで、スロー再生して何度も見ましたが、『腰から腰』がものすごく安定していましたね。あのスウィングなら、“一生”曲がらないです」と言う。アイアンの機能を熟知し、狙ったところにボールを運ぶにはどう振ればいいか、突き詰めた結果が「音」に凝縮されているのだ。 プロ仲間の証言 「入射が安定しているから、手を離すような当たりでもピンハイまでいく」(宮里優作) 「腰を切りつつ、前傾角度をキープして打つので、入射角が一定。上体の強さとやわらかさがないとあの打ち方はできません」 「“一生真っすぐ行くじゃん”って思った」(岩田寛) 「一緒に回って、ミドルアイアンの音を1球聞いただけで、『はい、ピンそば』と確信するほど。それくらいヘッドの入りがいい」 「あの音は日本ツアーでは聞いたことがない」(比嘉一貴) 「どうすればあの音が出るのか、練習すれば到達できるのかと聞かれると不安になるほど、特別な『音』ですね」 「手で投げたように飛ぶ。あとからボールが出てくる感じ」(木下稜介) 手先で打っていないから、運んでいる感じが出る。ロングアイアンの球も強いけどやわらかい。だから止まるんです >>驚異的な「音」と「再現性」はどうやって生まれる?スウィングを詳細分析 週刊ゴルフダイジェスト2022年1月11・18日合併号より こちらもチェック!
  • マスターズ優勝後、7月にコロナ感染、病み上がりで出場した東京五輪でメダル争い。そして10月のZOZOチャンピオンシップでツアー7勝目を挙げるなど、激動の1年間を走り抜けた松山英樹。まもなく30歳になる彼は、いま何を考え、そしてどこに向かっているのか? 心の内をじっくりと語ってもらった。 PHOTO/Takanori Miki、Taku Miyamoto 松山英樹1992年2月25日生まれの29歳。2010年のアジアアマで優勝し、11年のマスターズでローアマに輝く。13年にプロ転向し、国内ツアー賞金王に。14年から米ツアーに本格参戦し、メモリアルトーナメントで初優勝。21年のマスターズで日本人初のメジャー制覇を遂げ、同年10月、日本開催のZOZOチャンピオンシップを制して、米ツアー7勝目を挙げた 「ああ、もう勝てないのかな」正直そう思っていました GD 2017年以降、4年近く勝利がないなかで、4月のマスターズで悲願のメジャー優勝、そして10月にZOZOチャンピオンシップでも優勝し、ツアー7勝目を挙げました。いろんなことがあった1年だったと思いますが、それまで勝てなかった日々を振り返ってみて、いまどんな心境ですか?松山 勝てない時期の最初の1、2年は正直「まあ勝てるだろう」って高をくくっていて、楽観的に考えていました。でも19年、20年になってもなかなか思うような成績が出なくて、コロナ禍になる前、2週連続トップ10に入ったのに(20年3月)、そこで勝てなかった時点で、「あぁ、もう勝てなくなるのかな」と思っている自分がいました。それはコロナ中断明けの試合でも続いて、BMW選手権(20年8月)で上位争いしましたが、そのときも優勝争いをしている感覚はあまりなかった。必死につないで、つないで、なんとか優勝争いしている状態で、ただそこにいるお客さんのような感じでした。GD その「勝てない感覚」に、いつ変化が訪れたのですか?松山 ヒューストンオープン(20年11月)で2位になったときに、「まだ気持ち的に争っている」というのを久しぶりに体感しました。まだ勝てる可能性があるなと。でもその後21年になっても、状態が悪くないのに予選も落ちるし、トップ10にも入れないのが続いて、「なんでだろう」ってすごく考えていました。GD 4月のマスターズ前にそこに変化が訪れたということですか? この記事は有料会員限定です続きを読むには有料登録が必要です 松山 そうですね。オーガスタに入って、前の週にやっていたことと、その前の週にやっていたことがすごくマッチしたんです。オーガスタで練習をしていくなかで、頭の中がすごくクリアになってきて、自分への期待度もどんどん上がっていたんです。「勝てるかもしれない、勝てなくても絶対に上位にいる、優勝は争える」って。いつもなら練習ラウンドも1.5や2ラウンドはするんですが、試合前日も練習ラウンドはしないで練習だけで終わりにしたんです。コースも知っているし、自分の状態を上げることに専念しようって思いました。それが結果的に良かったですね。 オーガスタに移動した瞬間全部がつながった GD 優勝を狙えると思えるようになったのは、スウィングが安定してきたということですか?松山 そうですね、考えることが少なくなったというのがいちばん大きいですね。今までだったらスウィングのことを考えるだけでなく、そこにプラスして球筋を考えていたんですが、あの週は考えることが本当に少なくなっていました。GD 具体的にどのぐらいクリアになっていたんですか。松山 昨年から目澤さん( コーチ)と一緒にやり始めて、目澤さんの言っていることもすごくよくわかりますし、そこに取り組んできたんですけど、一方で自分をなくしている部分もあるのかなとも思っていたんです。それが何の拍子かわからないですが、マスターズ前週のテキサスオープンで時間をかけて練習をしていたら、なんかいい感じだなというのを見つけて。その試合はダメでしたけど、オーガスタに移動した瞬間に、「ああ、だからこうなるんだ」とパターまで含めて全部がつながっていく感じがあったんです。だから、「あ、戦えるな」って。GD 目澤さんが話すようなGC4(弾道解析器)などで測っているデータと、スウィングがマッチしてきたということですか?松山 そうですね。取り組んできたことと自分がやっていることがすごくハマったというか。頭で考えていることを体でうまく表現できるようになって、クラブを上手く扱えるようになったんです。 GD そうなると、マスターズの4日間は、スウィングをシンプルに考えていたということですか?松山 そうですね、けっこうシンプルでした。クラブを上げるときは、ここ(テークバック)とリズムだけという感じでした。意識していたとしても、1カ所、2カ所……、あっても3カ所ぐらい。GD ちなみに普段はどれぐらい考えているんですか?松山 んー、何個かな。アドレスだけで多分4つぐらいある(笑)。GD そんなにあるんですか。松山 まぁでも、それがどんどん減っていけばいくほどやっぱり調子が良くなるんです。考えることが1、2個だったら、すごくシンプルですから、それは調子がいいって発言になると思います。なかなかそういうふうにはならないですけどね。GD ZOZOチャンピオンシップのときは、調子が良くないと言っていましたが、そのときは考えることがいっぱいあったと。松山 いっぱいありましたね(笑)。でも、考えることがあるなかでも、最終日に向けて徐々に減りつつあったかなとは思います。 「良かった、腹が立つんだ」 GD マスターズに勝って、自分の中で心境は変わりましたか?松山 うーん、どうですかね。変わったと言えば変わったかな。3週間クラブ握らないとか今までなかったですからね。今回もZOZOで優勝してからまだ1回もクラブ触っていないですし、そういうことが平気でできるようになっています(取材はZOZOから2週間後)。GD それはプラスなことですか?松山 絶対マイナスでしょ。体を休めるには必要な時期だと思っていますが、でもさすがにちょっとやばいかなと。GD 目標だったメジャー優勝を遂げて、燃え尽きてしまったような感覚はありますか?松山 そうなるんじゃないかと、自分でも心配していました。でも、マスターズ優勝後、最初に出場した試合で(AT&T)、結果が出なくて腹立っている自分がいて、「ああ良かった、自分は変わってなかった、腹が立つんだ。やっぱりゴルフが好きなんだ」と思ったんです。そこで「勝ったからいいや」って思うようだったら多分ゴルフをやらなくなっていたはず。でも本当に腹が立って、イライラしながら練習もしていたし、その姿を客観的に考えて、「ああ良かった」と思いました。GD それまで「メジャー優勝」だった目標は、その後どう変わりましたか?松山 ツアー6勝目をマスターズで挙げて、ZOZOで7勝目も挙げたので、K・J(チョイ)さんに並ぶ8勝目を挙げることが、いまは一番近い目標だと思っています。丸山(茂樹)さんが持つツアー3勝という数字を抜いたときに、「早くK・Jさんの数字を抜けよ」って言われていたので、すごく意識していました。無理じゃないかと思うこともありましたが、あと1勝で並ぶところまできたので、それを早く遂げたいなと。 GD 22年はマスターズのV2もありますが、どんな戦い方を考えていますか。松山 早いうちにもう1勝して、シーズンを楽にプレーしたいですね。もちろんオーガスタでもう一回勝ちたいですし、それに向けてどういうスケジュールを組むか考えなきゃいけないと思っています。GD マスターズに向けてピークを作っていくと。松山 毎試合、山のてっぺんだったらいいんですけど、「ピークから下がったときどこにいるか」がすごく大事なので、そこの基準が上がれば、調子が悪くてもパーッと勝てるかもしれないと思っています。GD マスターズの勝算は?松山 正直ないですね。そこはコンディション次第で、すごく変わると思っています。それこそ一昨年のマスターズ(20年11月)みたいに20アンダー出るセッティングだと、僕にとってはしんどい。10アンダーから15アンダーぐらいのセッティングだったら勝負できるかなと思っています。13番ホールは距離が延びると思うし、天気次第でスコアがどれぐらい伸びなくなるかも変わりますからね。でも、たとえどんな天候だとしても、20アンダーの世界になったとしても、そこについていけるようなプレーはしたいと思っています。 週刊ゴルフダイジェスト2022年1月11・18日合併号より こちらもチェック!
  • 日本でもアメリカでも、あるいはイギリスでも、ラウンド中でなければ松山英樹は大抵、練習場にいる。アジア人として初めてマスターズを制し、世界ランク1位にもっとも近い日本人プレーヤーであるにもかかわらず、誰よりも練習するのはなぜか? その練習で、松山は何を目指すのか? 松山と親交が深い、内藤雄士コーチが「世界一の練習」の中身と“意味”を解説してくれた。 TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara、KJR THANKS/ハイランドセンター トーリーパインズGCで日没近くまで練習する松山 内藤雄士 丸山茂樹をはじめ、多くのトッププレーヤーの優勝をサポートしてきたプロコーチの第一人者。現在は若手の大西魁斗のコーチも務める 地道な練習をコツコツとやってきたから今がある アマチュアのスウィングには「課題」がたくさんあるから、練習場でやることはいくらでもある。でも、松山英樹はどうなのか? プロの目で見ても、ほぼ「完成形」に近いといわれる彼のスウィングの、どこに改善点があるのだろうか。「松山君のすごいところは、いつでも自分のウィークポイントを探していること。しかも、弱点をちゃんと見つけ出して、その改善に向かって努力するから練習の『質』が高いんです」と、内藤雄士はいう。目先の試合結果よりも、自分自身が理想とするスウィングを長期的視野に立って追い求めているということか。「松山君の姿は、ベン・ホーガンと重なる感じがします。ホーガンは、あれだけの勝ち星を重ねながら、勝つことよりも理想のスウィングを作り上げることに執着した人物。松山君も、気持ちは同じなんじゃないかと思います。じゃあそのスウィングはいつか完成するのかというと、おそらく死ぬまで完成しない。松山君の中で、常に足りないパズルのピースがあって、そのひとつをはめるために膨大な量の練習をこなす。ひとつがはまったら、また次のピースというふうに努力を重ねてきて、今があるという感じ。その濃密すぎる作業をこれからも続けていくんだと思うと、世界ナンバーワンを目指す道のりの険しさにゾッとします」(内藤)。 続きを読む 松山はプロ入り後、コーチをつけずに自分ひとりで「理想のスウィング」を追求してきた。スウィングに対する深い理解と探求心がなければ、到底続けられない壮大な実験・研究の日々。現在は目澤秀憲コーチとの二人三脚で同じ作業を続けている 実際、松山が内藤にスウィングの話をするときは、「できていること」が話題になることはなく、「ここがよくない」とか、「(別の動きをしようと思っているのに)こうなっちゃう」ということばかり話すという。信じられないことだが、松山の内的感覚としては、我々アマチュアと同じく、「自分はまだ上手くない」と思っているのではないか。「驚いたのは、あるひとつの課題に対して、『2年間、取り組んでいる』という話を聞いたときです。どんなプロだって、新しい課題に取り組んで、1カ月やって上手くいかなかったら、『自分には合っていない』と判断して、別のやり方を探すのが普通です。ところが、松山君はできるまでやり続ける。2年も続けるというのは、ちょっと聞いたことがないです」と、内藤が明かす。現在の松山英樹は、気の遠くなるような努力の積み重ねでできている。と同時に、今、この瞬間もその「ゴルフ細胞」が入れ替わり、昨日よりも少し強い、松山英樹に生まれ変わり続けているのだ。「ジャック・ニクラスが、70歳を超えてもまだ『毎日上達している』と言っていますが、松山君もマスターズに勝って終わる選手じゃないってことだけは確かですね」(内藤)。 ティーオフの4時間前から試合は始まっている 試合当日、松山の1日はスタート時間の4時間前起床から始まる。「なんだ、そのくらいなら自分も同じだ」と思った人は、起床後のタイムテーブルを見てほしい。起きてすぐのランニングから始まり、食事と移動時間以外は、スタートまでとにかく「ずっと」練習している。「キャディの早藤(将太)君が朝のランニングに付き合うと、ついていけないくらいのペースで走るらしいんです。そうやって全身に血を巡らせて、頭と体を起こす。タイガー(ウッズ)も長年続けてきたやり方です」と、内藤。コース入りしたら、パッティンググリーンを経由して、ドライビングレンジへ。ただし、ここで打つ球数はおよそ60球とあまり多くない。「とくにドライバーの球数がたった5球と少ないのが、アマチュアには参考になる点です。これは、短いクラブの完成度が高ければ、ドライバーも問題なく打てることを熟知しているから。アマチュアが、不安なドライバーをたくさん打って、それでスウィングを崩しちゃうのとは対照的です」(内藤) 【松山英樹の1日(試合の日)】4:00 起床4:10 体のケア4:30 ランニング&トレーニング6:00 朝食6:30 コース入り6:35 パッティング練習7:00 打撃練習7:35 アプローチ練習7:45 パッティング練習8:00 ティーオフ13:00 ホールアウト13:30 打撃練習15:30 アプローチ練習16:00 パッティング練習17:00 帰宅 Q.ラウンド前の練習はどんなことしているの?A.スタートのぎりぎりまでその日の調子をチェック スタート前にボールを打つのは、あくまでもその日の調子、球筋を見極めるため。感覚だけに頼らず、動画でもチェックして、スウィング全体のバランスやリズムが崩れていないかを確認することで、平常心でスタートできる Q.ラウンド後の練習はどんなことしているの?A.弾道計測器でデータをチェックしながら練習 ラウンド後の練習では、その日のコースでの反省を踏まえ、悪かった部分の「原因」を探り、必要なら修正する。その際、頼りになるのが「トラックマン」などの弾道計測器。自分の感覚と、実際のスウィングの「ズレ」を確認できる 松山英樹 3つのの鉄板メニュー 松山の「片手打ち」は、もはや練習場の風景の一部。「松山君は、右手のほうが『当たっちゃうから難しい』と言っています。右手は器用な分、手打ちでも打ててしまうと。だから必ず、左手で右胸や右ひじを押さえてやっていますよね。つまり、練習の最初に『片手打ち』をやるのは、体で打つことを確認するためということです」と、内藤。また以前から、軟らかめのカーボンシャフトが入った7番アイアンでボールを打つ姿をよく見かける。「軟らかいシャフトは力むと暴れるので、自然とグリッププレッシャーをゆるめて、クラブをプレーンに乗せる振り方になります。とくに朝の練習で軟らかいシャフトは有効で、アマチュアも真似する価値があります」(内藤)。 松山の鉄板メニュー1 片手打ち 【効果】体の回転で打つ感覚を染み込ませる 左右とも、手を使わずに体の回転で打つという点は同じ。わきを軽く締めて腕と体の一体感をキープしつつ、胸の面の向きが変わるように、上体をしっかり回転させて打つ 松山の鉄板メニュー2 軟らかシャフト 【効果】プレーンが安定しリズムが生まれる グリップに力が入ると、腕、肩も硬直し、切り返しで右肩がかぶりやすい。軟らかいシャフトは力んで、クラブが上から入るとまったく当たらないので、自然にオンプレーンに振れる 松山の鉄板メニュー3 両わき締め打ち 【効果】腕と体の運動量が一致する テークバックでボールが落ちるのは、腕に対して体の回転量が不足している。切り返しでボールが落ちる場合は、右わきのゆるみが原因。腕と体が同じ量だけ動けば、ボールは落ちない 週刊ゴルフダイジェスト2021年12月21日号より こちらもチェック!