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優勝を決めたセカンドは「計算された1打」目澤コーチが語る松山英樹の8勝目

ソニーオープンでプレーオフを制し、米ツアー8勝目を挙げた松山英樹。一時は5打あったR・ヘンリーとの差を、なぜひっくり返すことができたのか。帯同する目澤秀憲コーチに話を聞いた。

PHOTO/Blue Sky Photos

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

松山英樹のスタイルは
「ディフェンシブに攻める」

72ホール目、ドライバーで放ったビッグフック

72ホール目の18番、松山プロはドライバーでいきましたが、実はあの週、18番でドライバーを使ったのは初めて。マン振りしないとバンカーは越えないところを、あの極限のプレッシャーの中でしっかりとやり切ったのは凄いですよね。

でも僕が“松山プロらしいな”と思ったのは2打目です。結果だけ見れば6番アイアンで打ってショート。「思ったより止まってしまった」感じでしたが、あれが強さの秘密で、いわゆる「ディフェンシブな攻め」。もちろん「3」狙いでしたが、「4」も残した攻め方。奥にこぼれて「5」になってしまう可能性のあるピンデッドは狙わず、うまく転がればチャンスにつく球を選択しました。ラッセル・ヘンリーのパットが入らなくなっていたのも伏線にあったと思います。バックナインでプレッシャーをかけ続けていましたからね。その決断が、73ホール目へとつながったのだと思います。

73ホール目のセカンド
メジャーチャンプ「貫禄の1打」

73ホール目のティーショット、松山プロは5番ウッドを選択しました。正規の18番を回っているときに、プレーオフをどう戦うか、しっかり計算していたのだと思います。


フェアウェイがあまり転がらないので、クリークで打っても転がってバンカーやラフに行くことがない。ピンポジションも全部頭に入っていて、2打目でスプーンの距離がちょうど残ることも考えていました。グリーンが軟らかくてスプーンで球が止まるというのも、もちろん計算に入っていたはず。2日目にもスプーンで打って、同じように球がカラーとグリーンの間で止まっていたのが脳裏にあったと思います。

その2打目は左からの風にぶつけるカットボールで、277ヤードをベタピンに寄せました。僕はブッシュネル(距離計測器)越しに球を見ていましたが、「打った瞬間、ピンのほうに向かっているな」と思ったら、あの着弾ですからね。

驚いたのは、ボールスピードが178マイル出ていたことです。スプーンだと普段は170マイルぐらい。優勝争いのアドレナリンも出ての数字だと思いますが、そのプラスアルファも加味した距離を計算していたというのがまた凄い。

ライ、グリーンの状況、風、アドレナリン、逆光、相手の状況、いろんな要素を加味した1打。ホールを重ねるごとに体も切れてスウィングも良くなっていましたが、プレッシャーがかかったときにあの球が打てるというのは、やはりメジャーチャンプの貫禄というのを見た気がします。

最大の勝因は“鉄のゲーム運び”

ストロークゲインドパッティング(パットの貢献度)がフィールドの1位というのは、今までの勝ちパターンからすると珍しいですが、今回の勝因は、ショットやパットというよりは、やはり松山プロの「戦い方の妙」につきると思います。最終日はヘンリーとマッチプレーの様相でしたが、まさに真綿で締め上げるように、彼をじわじわと追い詰めていきました。後半を迎える前に5打差あれば“そこそこのリード”ですが、メジャーチャンピオンの松山プロの前では足りなかった。

松山プロは前半の9番ホールで3パットしましたが、あれも攻めていった結果でしたから、ヘンリーは内心怖かったと思います。10番も攻めていたし、12番も出力全開、13番もティーショットは完璧で、15番もピンに寄らなかったのに長いパットを決めた。16番も外れましたけど、攻めたパットでした。ボディブローのように相手へ圧力をかけ、終盤になるにつれて、ヘンリーは体力も気力も削られていました。

前半終了時点で5打の差があった

HOLE123456789
PAR444344345
松山-16-17-17-18-18-18-18-18-19
ヘンリー-18-19-19-19-19-20-21-22-24
HOLE101112131415161718
PAR434444435
松山-20-21-21-21-21-22-22-22-23
ヘンリー-24-23-23-23-23-23-23-23-23
スタート時点では2打差。前半ハーフで5打差がついたが、後半怒濤の追い上げ。72ホール目でヘンリーをとらえ、プレーオフ1ホール目で勝利を収めた

これまで松山プロと1年間一緒に取り組み続けてきて、クラブパスとか、フェースの管理とか、アタックアングルとか、「なんとなくこういう感じ」というのが頭の中に入ってきていて、そのうえでスウィングもブラッシュアップしてきました。ここ17試合で3勝というのは、もちろんそうしたベースもあると思いますが、でもそういうことだけじゃなくて、最近の松山プロは試合に勝つうえでの「ゲーム運び」に凄みが増している気がします。今回のソニーオープンでも、最終日は一日の流れを考えつつ、相手にプレッシャーをかけ続けた。争うのがヘンリーでもヘンリーではなくても、おそらく今の松山プロは、優勝争いであの駆け引きがやり切れるのだと思います。

10月にZOZO選手権で勝って以来、仕事やオフなどで練習できていなかったと思いますが、ハワイにいた2週間でトータル44アンダーですからね。本当に安定感が出てきていると思います。このあと試合が続きますが、僕もしっかりとサポートしていきたいと思います。

週刊ゴルフダイジェスト2022年2月8日号より

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