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【山を動かす】「43インチもあり」「長いから飛ぶとは限らない」ドライバーの“46インチ規制”どう思う?

ゴルフにまつわるさまざまな問題に関し、読者や識者に率直な意見をぶつけてもらう連載「山を動かす」。今回のテーマはクラブの長さ規制について昨年、USGAとR&Aはツアーがローカルルールとしてクラブの長さを「46インチ以下(パター以外)」に規制できるルールを発表。これによってゴルフ界はどう変わる? 識者、アマチュアゴルファーに意見を聞いた。

●遅きに失した感はありますが、できないよりはましで、賛同に手を挙げます。飛びすぎてコースが短くなってしまうという問題は20年前から論議されていて、私はUSGAのルール委員会に出席していた頃「規制すべきだ」と提案していました。委員会では「ボールを大きくしたら」とか「クラブの本数を14本から12~13本に減らしたら」などの提案が出ていましたが、USGAでは結果的に手をつけずに、“逃げて”きたと個人的には思っています。私は46インチどころか、昔やっていた43インチでもいいとさえ思っています。というのも、飛距離が伸びたのは、プレーヤーのスキルというより、クラブやボールなど、科学・工学の進化ゆえでしょう。その点、野球の用具は科学・工学の力を抑えて、プレーヤーの資質を競わせているように思います。ゴルフも“原点回帰”しないと伝統あるゴルフ場が役立たずになってしまうと、コース設計家の立場からも憂うところです。(川田太三/USGAルールコミッティ、コース設計家)

●46インチ規制、大いに賛成です。遅かったぐらいです。僕はプロとアマのルールは違ってしかるべきだと思っています。高反発素材のクラブはプロはダメだけど、一般ゴルファーが普通に使うぶんには禁止していませんよね。用品用具の進化はアマよりプロのほうが恩恵を受けていると思います。話は変わりますが、ボートレースでは長年続いた「選手持ちプロペラ制度」を2012年に廃止しました。プロペラの改良次第で性能が変わる制度をやめ、2つのメーカーの選択制を採用。つまり用具を統一して、競わせる制度に変更したわけです。この用品の統一という点で、プロゴルフの世界も見習えばいいと思っていますよ。(タケ小山/テレビ解説者)

●飛ばしはゴルフの大きな醍醐味。われわれアマチュアの“今日イチ”は、せいぜい吹き流し位置にあるだけなので、コース側が困ることもない。長尺を使いこなして今日イチの楽しみを満喫したい。(50代男性・千葉県)

P・ミケルソンは47.9インチのドライバーで50歳にして全米プロVの快挙(PHOTO/Blue Sky Photos)

●ゴルフの場合は他の競技と違ってゴルフコースが相手で、歴史あるゴルフ場や文化、慣習などが壊れてしまうという危惧から46インチ規制、つまり飛距離の抑制に向かうんでしょう。20年以上前に竹林隆光さん(故人)が開発した「ゲロンD」という48インチのドライバーが発売されました。しかし、当時のゴルファーの多くがそれを正しく使いこなせず、普及しませんでした。単純に長いから飛ぶというわけではなく長いクラブを正しく打ちこなす努力と技術も必要なんです。以前、セントアンドリュースのゴルフミュージアムでヒッコリーシャフトのロングノーズというアンティーククラブを見ましたが、これが結構な長さ。それを見て、長いクラブなら飛ぶとか打ちやすいということではなく、与えられたものを正しく打ちこなす努力をした人が恩恵を得られるんだと思いました。そう考えると46インチ規制はどうなのかなと……。以前R&Aの役員に「ドライバーは慣性モーメントの規制が厳しくなっているのに、どうしてパターヘッドには慣性モーメントの規制がないのですか?」と尋ねたら「パターは力学ではなくフィーリングだから」という答えでした。僕からすれば、パターヘッドも確実に力学の世界だと思うんですけどね。彼ら(USGAとR&A)は力学的思考で、どうやったら飛ばなくさせられるかを考えていて、その結論が長さに向かってしまうんです。エリートゴルファーに限るローカルルールとして、一般アマチュアの楽しみを残してくれた部分は評価しますけど、ちょっと釈然としません。(永井延宏/ティーチングプロ)

●デシャンボーのゴルフと私のゴルフは別のもの。だから別のルールが必要。規制に異存はありません。(40代女性・東京都)

●トラックマンのデータで飛距離にとって最も大切な要素はミート率だとわかっています。シャフトを長くするとヘッドスピードは上がるもののミート率が落ち、飛距離がバラつく。だから、現状ではミート率を優先し44~45インチぐらいのドライバーの選手が多いんです。ゴルフ団体が46インチ規制に動き出したのは、USGAセッティングの難しいウィングドフットを、圧倒的な飛距離でねじ伏せた20年のデシャンボーがきっかけかもしれません。もちろん飛距離アップは用具だけではなく、スウィング改造やゴルファーの肉体改造の要素も大きいのですが、まさか筋トレ禁止というわけにもいかないので、長さの規制に向かったのだと思います。ただ、今年、初シードをとった阿部裕樹プロのようなケースもあります。阿部プロはあまり飛距離が出ない非力な選手ですが、47インチのドライバーを使いこなし、平均281.7ヤードの飛距離をマークし、賞金ランク62位になりました。コンパクトなスウィングでミート率を上げた結果の飛距離アップと考えていいでしょう。そういう選手の努力を考えると、長さ規制に対してちょっと複雑な気持ちにもなります。(内藤雄士/プロコーチ)

●46インチ規制は、これから始まるさまざまな規制の序の口で、さらに規制は厳しくなると僕は思っています。ゴルフ場の距離をこれ以上伸ばすのは無理。ならば、道具の規制に向かうのは必然です。昔、ジャック・ニクラスがケイマンボールという飛距離が半分しか出ないボールを開発しましたが、ボールの規制はいろいろと利権もあって難しいので、一番手っ取り早いシャフト長の規制になったのだと思っています。最終的にはシャフトは43インチ、ロフトは15度以上と規制されるというのが僕の予想。このスペックでもデシャンボーなら300ヤードは飛ばせます。ゴルフ統括団体は飛距離のリミットを300ヤードと考えているのではないでしょうか。僕がゴルフを始めた50年前、プロの飛距離は飛ぶ人が250ヤードぐらいで、アマは200ヤードぐらい。差は約50ヤードでしたが今はプロとアマの差は100ヤード近く。道具の進化もありますが、アマチュアとエリートゴルファーに二極化している。プロがアスリート化している部分も見逃がせません。この二極化に対するゴルフ統括団体の危機感があるように思います。だから、46インチ規制も「エリートゴルファーのローカルルール」としているのは、そうしないとゴルフ自体が生き残れないと考えているからでしょう。前回のルール改正もアマチュアに対しては緩く、エリートゴルファーとは違ったルールになっているのも、ゴルフ生き残りの危機感からだと思っています。(マーク金井/クラブアナリスト)

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