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「ゴルフの楽しみを奪おうとしている」長尺規制にミケルソンが猛抗議

フィル・ミケルソンが自身のSNSで長尺規制に抗議した。

今年の2月、USGA(全米ゴルフ協会)とR&Aが、ドライバーの長さを46インチまでにすることを検討しているのは既報のとおり。現時点では規制がいつからどのように施行されるかは明らかではないが、飛距離がこのまま伸び続ければコースの距離も長くせざるをえず、将来的にゴルフに悪影響を与えるというのがその理由。

47.5インチのドライバーを使って史上最年長メジャー覇者となったミケルソンにとって、規制は由々しき問題。そこでSNSにこう投稿した。

「間もなくUSGAはドライバーの長さを46インチに制限します。これは憂うべきこと。より短いクラブでより激しく振って飛ばさなければならないのは体への負担が増し、ケガのリスクが増える。アークの大きさで飛ばす術が否定されたのです。40年ぶりのブームが到来したのにゴルフの統治機関はアマチュアの楽しみを奪おうとしています」

現在ドライバーの長さは48インチまで許可されている。多くの選手が長尺を試してはいるが、実際に試合で使用しているのは、PGAツアーではB・デシャンボーとミケルソンくらい。ほとんどの選手が45.5インチ以下で、R・ファウラーなどはかなり短いドライバーを使用している。

アマチュアも46インチを超えるクラブを使用している人は多くない。46インチ規制が発動されることで影響を被るのはほんの一握りといえる。それでも規制にのりだす意味は、将来起こり得る事態(飛び過ぎ問題)を回避するための予防策なのだろう。

平均300ヤード超えができたのはJ・デイリーだけだった時代は去り、今年のスタッツではB・デシャンボーの323ヤードを筆頭に、63人が300ヤード超え。J・ニクラスらが飛ばないボール待望論を唱えるなど、飛距離アップはゴルフ界の将来にとって頭の痛い問題でもある。

U字溝が禁止されたときにもUSGAを「バカげている」と非難したミケルソン。彼の発言は長尺規制に待ったをかけることになるのか?

長尺を使いこなせるのもひとつの技術。短尺でも平気で300Y飛ばしている現状では、あえて長さを規制する必要はない気もするが……(PHOTO/Blue Sky Photos)

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月28日号より

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  • PHOTO/Blue Sky Photos、Tadashi Anezaki ILLUST/Yuki Kitazawa 賞金ランキングトップをひた走る星野陸也(25)が敬愛してやまないのが、倍以上年の離れたフィル・ミケルソン。50歳を超えてなお進化し続けるミケルソンのスウィングの凄さを星野陸也が語る! 解説/星野陸也 ほしのりくや。1996年生まれ、茨城県出身。高校生のころにミケルソンのスウィングを見て感銘を受け、研究し続ける。現在賞金ランク1位 体主体ではなくクラブ主体で飛ばす 僕はミケルソンが好きすぎるので、話し出したらいくら時間があっても足りません(笑)。なので今回は、スウィングについてお話ししますね。50歳を過ぎても300ヤードを超えるなんて凄い! この年齢で飛ばせるのは“クラブに仕事をさせて”振っているから。シャフトのしなりを生かし、体への負担が少ないスウィングです。僕が思う一番の特徴は、手首の柔らかさ。手首を柔らかく使うと、シャフトが素直にしなってくれるので、クラブ全体の運動量を上げることができます。一見、オーバースウィングに見えるのも手首を柔らかく使い、しなりがトップから切り返しで最大になった結果だと僕は思います。これにより、ヘッドの助走距離が長くなるので、ヘッド速度も上がりやすいんです。また、ローテーションを積極的に使っているように見えますが、実際はシャフトがしなり戻ることで、自然とヘッドが返っているだけ。意図して返しているのではないと思います。これだけクラブに仕事をさせられれば、体に負担がなく、今まで大きなケガもなかったのも納得です。いや〜、超効率的で、ほんといいスウィングですよねぇ。 <ミケルソンはココが凄い 1>50歳を過ぎても300Y超! 「そもそも50 歳で300 ヤードなんてありえないですよ。クラブを長くしているようですが、使いこなすのも難しいですからね。凄い!」 <ミケルソンはここが凄い 2>ドライバーからウェッジまでリズムが同じ 「スウィングリズムは神です(笑)。どんな場面でも、ドライバーからウェッジまで同じように振れるんですよね」 <ミケルソンはここが凄い 3>類まれなイマジネーション 「何をしてくるか想像つかないところも魅力です。技術はもちろんですが、発想力がありえないです!」 レックス倉本が証言「ミケルソンは人間的な魅力もすごいんです」 エピソード 1優勝スピーチでまず周りへの感謝を口にする 大学1年生のときの優勝スピーチ。開口一番、先輩への感謝を口にしたという。「19歳であれはすごい」(レックス) エピソード 2ギャラリーにホットドッグをおごったことがある ある試合の練習ラウンド。ついていたギャラリーのテンションがイマイチと察したミケルソンは、自腹でホットドッグを振る舞った エピソード 3訪問先には必ず手土産持参 契約先などへ訪問する際は、たとえ人数が多くても必ずハンバーガーを手土産に持っていくとか。常に感謝を忘れない人柄 月刊ゴルフダイジェスト2021年8月号より
  • TEXT/Kenji Oba PHOTO/Blue Sky Photos フィル・ミケルソンのメジャー優勝は2013年の全英オープン以来、8年ぶり6勝目。特筆すべきは、ゴルフ史上初めて50歳代(50歳11カ月7日)でメジャー優勝を果たした快挙だろう。しかしこの快挙は決して偶然成し得たものではなく、その裏には類まれなる努力と万全の準備があった。 解説/佐藤信人51歳。ツアー9勝。海外取材が豊富で、現在は週刊GD連載「うの目、たかの目、さとうの目」をはじめ、テレビ解説などでも活躍中 ドラコン仕様のようなドライバーで挑んだ 「まるで漫画を見ているかのような劇的なドラマでした」と語りだした佐藤信人プロ。その規格外のドラマを生んだ要因をプロの目で分析してもらった。「まず挙げるべきは、ティーショット用に、ロフト5.5度、47.9インチの超長尺ドライバーとロフト11.5度の2番ウッド(ブラッシー)の2本を入れたこと。飛ばしたい場面では超長尺、置いておきたい場面ではブラッシーとはっきり使い分けていました」象徴的だったのは最終日の16番。ロングドライブ仕様の超長尺で放ったショットは初速178マイル(79.6m/s)を記録し、フォローに乗せて366ヤードをマーク。デシャンボーら飛ばし屋を抑えて出場選手の最長距離だった。「長尺を使えば誰でも飛びます。しかし『当たれば』という条件付き。ツアーレップのコメントによれば、ほとんどの選手が手こずるなか、ミケルソンは簡単に使いこなすそうです。スウィングのブラッシュアップが功を奏したのか、もともと合うのかはわかりませんが、ドラコンドライバーのような長尺を実戦で使いこなす技術、体力、チャレンジ精神がもたらした成果です」 ルールぎりぎりの47.9インチ、ロフトは5.5度という超長尺ドライバーを使用。守るホールは11.5度のブラッシーを握った 〈ミケルソンのクラブセッティング〉(全米プロ最終日)[1W]エピック スピード トリプルダイヤモンド(5.5度)/ベンタス ブラック6X(47.9インチ)[2W]テーラーメイド オリジナルワン(11.5度)/ベンタス ブラック7X[4W]マーベリック サブゼロ(16.5度)[UT]X21 UTプロト(20.5度、25度)[Iron]APEX MB21(6I~PW)[Wedge]PMグラインド21Row(50度、55度、60度)[PT]オデッセイ ミルドブレード“PM”[Ball]クロム ソフト X トリプルトラック 独創的なセッティングだが、本人は06年のマスターズでドライバーを2本入れ、2度目のグリーンジャケットに袖を通している。「今回、他の選手に比べミケルソンが測定器を使うシーンが何度も中継で映し出されました。勝つため、1打でも良くするためにはなんでもする、という姿勢の表れ。クラブセッティングもそのひとつで、彼には普通のこと。年齢を重ねても衰えない貪欲さこそが一番の勝因ではないでしょうか」貪欲さという点では、佐藤プロはミケルソンと、弟でキャディを務めたティムの歩くスピードに注目した。「とにかくゆっくり歩く2人の姿が印象的でした」という。時間計測されたシーンもあったが、歩くスピードは変えなかった。「メディテーション(瞑想)という言葉を使っていましたが、瞑想をトレーニングに取り入れ、そのうえでキャディと一緒に同じスピードで歩き、長く会話するようにしたそうです。そうした心の安定強化に加え、フィジカルトレーニングと食事制限まで、ドラマの裏には徹底した準備がありました」3日目を終えてロフト16度のUTが割れるアクシンデントに見舞われたが、動揺することなく最終日は16.5度の4Wを投入して乗り切った。これもメンタル強化の賜物だろう。ミケルソンは、もともとファンを大切にする選手として知られるが、ピンチの場面でも笑顔でファンと会話を交わすシーンが多かった。日本人で初めてマスターズを制した松山英樹もそうだった。「アンガーコントロールは大きな課題。やはり笑顔は勝利を導く大切な技術です」と佐藤プロ。 夢を実現させるための最大の犠牲は食べること 体型の変化も一目瞭然だ。数年前の太りぎみ体型から今はアスリート体型に戻った。加齢と闘うべくフィジカル管理に汗を流し、「夢のために僕が払った最大の犠牲は食べること」とは本人。徹底した食事制限も続けた。同年生まれの佐藤プロは、集中力維持の練習法にも舌を巻く。「加齢で衰えるのは体力だけではありません。集中力も低下します。そこでミケルソンは集中力をキープするため36ホール、時に45ホールを真剣に回るのだそうです。マラソンランナーが毎日50キロを走り、本番の42.195キロに備えるのと同じ理屈です。いい練習だと頭で理解はしても、それができる体力と意志のある50歳はそうそういるものではありません」 50歳を超えても錆びないタッチ 今回の全米プロは最長7800ヤード超のコース。さらにミケルソンが超長尺ドライバーを投入したことで、距離ばかりが注目されがちだが、佐藤プロの分析では「距離と同じ、いやそれ以上に勝敗に影響したのがショートゲームでした」どういうことか?「前回、キアワアイランドで開催された全米プロ(12年)はマキロイが圧勝でメジャー2勝目を飾りました。そこだけを見れば飛ばし屋有利となるわけですが、実はI・ポールター、S・ストリッカーなどショートゲームの名手が上位に食い込んでいました。今回L・ウエストハイゼンなどショートゲームが巧みな選手が優勝争いに残りました。キアワの各ホールは、ほぼ砲台グリーンで紙一重の落としどころが要求されます。そこに苦しんだ選手は脱落……。そうした観点からミケルソンを見ると、91年のPGAツアー、ノーザンテレコムでアマチュア優勝して以来30年間、彼のショートゲームは、まったく錆びることがありませんでした。そこも大きいと思います」 〈キアワアイランド開催の全米プロ上位選手〉2021年大会 優勝 P・ミケルソン(50)-6 2位T L・ウエストハイゼン(38)-4 2位T B・ケプカ(31)-4 4位T S・ローリー(34)-2 4位T P・ハリントン(49)-2 4位T H・ヒッグス(29)-2 4位T P・ケーシー(43)-22012年大会 優勝 R・マキロイ(23)-13 2位 D・リン(38)-5 3位T I・ポールター(36)-4 3位T K・ブラッドリー(25)-4 3位T C・ペターソン(34)-4 3位T J・ローズ(31)-4 7位T S・ストリッカー(45)-3 ほか3名 ※年齢は2012年当時風と砲台グリーンが特徴のキアワアイランドGRオーシャンC。佐藤プロの指摘通り、21年はウエストハイゼンやハリントン、12年はポールターやストリッカーなど小技の名手が上位に入った また、リンクスコースは風向きによってティーイングエリアが日々変更される。そうなると目一杯の7800ヤードを使い切ることはない。そこで佐藤プロの戦前の優勝予想は、「飛ばし屋よりむしろショートゲームの上手い選手でした。そこまでは予想通りでしたが、さすがに50歳のミケルソンが優勝するとは想定外でした」と苦笑する。パッティングが冴え渡っていたのも要因のひとつ。一時は慣性モーメントの大きな大型ヘッドを使い、握り方もクロウグリップにした時期があったが、代名詞ともいえるL字ヘッドパターで、グリップもオーソドックスなスタイルに戻していた。「71ホール目の最終日の17番だけはクロウで打ったのは謎ですが、とにかく安定していたことは間違いありません」 パターはミケルソンの原点、オーソドックスなL字ヘッド。打ち方も最終日17番のショートパットのクロウグリップを除き、オーソドックスなスタイルでパッティング 盟友タイガーへのメッセージ… レフティのミケルソンにはラッキーもあった。最終日の6番から13番は左からのアゲンスト。次々と選手がスコアを崩していくなか、ここをイーブンでまとめたが、「左からのアゲンストは右打ちにとっては最も構えにくい風向きですが、レフティのミケルソンにはさほど苦にならなかったかもしれません。そういう意味では神風でした。ただ、運だけで勝ったように思われるのは嫌なので強調するつもりはありません。これまで述べてきたように、絶えないチャレンジ精神と向上心、完璧な準備、努力の継続、すべてがあっての優勝です。同時にゴルフ界をリードしてきたタイガーのマスターズ(19年)復活優勝は大きな刺激になったはず。今回、事故で療養中のタイガーに、この優勝は『早く戻ってこい、待っているぞ!』というメッセージでもあったようにとらえています。規格外の2人ですから、さらなるドラマにも期待ですね」最後にマスターズチャンピオンとして出場した松山英樹(23位タイ)について聞いた。「評論家や記者が選ぶ、大会前の全米パワーランキングに松山くんの名前はありませんでした。それは実力からではなく、マスターズの優勝者がその後、調子を落とすことがわかっているからです。まして例年と違いマスターズから1カ月しかありませんでした。松山くん自身『約1カ月ゴルフしていなかった代償』と答えています。ただ3日目の途中まで首位を争い、多くの評論家や記者に『やはり松山、ハンパない』と印象づけたはず。おそらく6月の全米オープンでは、パワーランキングの上位に顔を出すと思います」50歳を過ぎたミケルソンの悲願のグランドスラム、そして松山のマスターズに続くメジャー制覇と、今から全米オープンが楽しみだ。 週刊ゴルフダイジェスト2021年6月15日号より
  • PHOTO/Blue Sky Photos 50歳にして全米プロを制したフィル・ミケルソン。最終日に同組のブルックス・ケプカを何度もアウトドライブしていたが、その驚異の飛距離どこから生まれているのだろうか。レックス倉本が解説! 解説/レックス倉本テレビの解説でもおなじみの、フロリダ在住プロゴルファー。PGAツアーや米国ゴルフ界に精通している 柔軟性とパワーをヒールアップで補う ミケルソンは、300ヤードが当たり前のPGAツアーで戦っていくために、数年前から飛距離アップに取り組んできました。彼のSNSでも下半身の強化シーンがたびたび投稿されていましたね。飛距離を伸ばすためにミケルソンが注目したのが“地面反力”。地面からの反力を利用するには、地面を強く踏み込むことが重要ですが、そのために取り入れたのがヒールアップでした。体の柔軟性が落ちていくなかで、ヒールアップすることで体を回転しやすくし、さらに右足で踏み込むための準備をしています。上げた右足のかかとをインパクトにかけて踏み込んでいき、その地面反力を利用してひざを伸ばしながらフォローでヘッドを走らせています。このフットワークはほとんどの“飛ばし屋”と呼ばれる選手が採用している動きです。フォローで右足つま先がめくれているのはパワーを限界まで使っている証拠。実際、全米プロ時のスタッツを見ると、彼の平均飛距離は313ヤード。あのデシャンボーを飛距離で上回っていたホールもありました。50歳でこれだけの飛距離を出せるのは、ハードなトレーニングだけでなく、効率よくパワーを生み出すフットワークがあるからこそだといえます。 50歳で平均313Y!圧巻のフットワーク 切り返しで強く右足に踏み込んでから右のかかとを中心に鋭く回転。「フォローにかけて右ひざが伸びているのは地面反力が使えている証拠です」(レックス倉本) 左は2017年のスウィング。当時はヒールアップをしなくても十分な捻転が作れていたが、柔軟性の低下に伴い、右足をヒールアップすることで深いトップを作ることを可能にしている 入射角がゆるやかになりスウィング軌道が安定 ヒールアップに加え、もう1つ変わったのがスウィング軌道。もともと彼のスウィングには2つ特徴があり、1つはタメが深いためにヘッドの入射角が鋭角になりやすいこと。もう1つはフェースローテーションが大きいこと。今までは、絶妙なタイミングで感覚的に合わせることができていましたが、シャフトを47.9インチと長くしたことでフェースを開閉するタイミングがよりシビアになってきました。そこで、軌道をフラットにし、入射角を緩やかにすることでタイミングを取りやすくしています。ダウンスウィングの写真を見ると、以前よりも低い位置からクラブが下りているのがわかります。入射角を緩やかにした一方で、フェースローテーションはこれまでどおり積極的に活用しています。フォローの段階では左手首が手のひら側に折れており、ハーフウェイダウンからフェースを180度近く開閉させていることがわかります。この動きの中でボールをとらえてコントロールできるのはさすがですね。ミケルソンはロブショットの名手としても有名ですが、この手首の使い方がまさに名手の理由です。飛距離と操作性を兼ね備えているからこそ、長く難しいキアワアイランドを攻略できたのかもしれません。 軌道がフラットに。巧みなリストワークは健在 インパクト直後の手首の形に注目。この段階ですでに左手首を手のひら側に折り、フェース面は完全に閉じている。タイミングを間違えば大きなミスになるこのスウィングは、まさにミケルソンの感性があってこそなせるわざ 左の写真は2018年のスウィング。ダウンでシャフトが左の肩口から下りてきていたが、現在のスウィングでは、左の上腕付近から下りてきている。これによって入射角がゆるやかになり、よりボールに力が伝わりやすくなっている 週刊ゴルフダイジェスト2021年6月15日号より