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【スウィング研究】平均313Y! ミケルソンの飛びの秘密は「ヒールアップ」にあった

PHOTO/Blue Sky Photos

50歳にして全米プロを制したフィル・ミケルソン。最終日に同組のブルックス・ケプカを何度もアウトドライブしていたが、その驚異の飛距離どこから生まれているのだろうか。レックス倉本が解説!

解説/レックス倉本
テレビの解説でもおなじみの、フロリダ在住プロゴルファー。PGAツアーや米国ゴルフ界に精通している

柔軟性とパワーを
ヒールアップで補う

ミケルソンは、300ヤードが当たり前のPGAツアーで戦っていくために、数年前から飛距離アップに取り組んできました。彼のSNSでも下半身の強化シーンがたびたび投稿されていましたね。

飛距離を伸ばすためにミケルソンが注目したのが“地面反力”。地面からの反力を利用するには、地面を強く踏み込むことが重要ですが、そのために取り入れたのがヒールアップでした。

体の柔軟性が落ちていくなかで、ヒールアップすることで体を回転しやすくし、さらに右足で踏み込むための準備をしています。上げた右足のかかとをインパクトにかけて踏み込んでいき、その地面反力を利用してひざを伸ばしながらフォローでヘッドを走らせています。このフットワークはほとんどの“飛ばし屋”と呼ばれる選手が採用している動きです。

フォローで右足つま先がめくれているのはパワーを限界まで使っている証拠。実際、全米プロ時のスタッツを見ると、彼の平均飛距離は313ヤード。あのデシャンボーを飛距離で上回っていたホールもありました。

50歳でこれだけの飛距離を出せるのは、ハードなトレーニングだけでなく、効率よくパワーを生み出すフットワークがあるからこそだといえます。

50歳で平均313Y!
圧巻のフットワーク

切り返しで強く右足に踏み込んでから右のかかとを中心に鋭く回転。「フォローにかけて右ひざが伸びているのは地面反力が使えている証拠です」(レックス倉本)

左は2017年のスウィング。当時はヒールアップをしなくても十分な捻転が作れていたが、柔軟性の低下に伴い、右足をヒールアップすることで深いトップを作ることを可能にしている

入射角がゆるやかになり
スウィング軌道が安定

ヒールアップに加え、もう1つ変わったのがスウィング軌道。もともと彼のスウィングには2つ特徴があり、1つはタメが深いためにヘッドの入射角が鋭角になりやすいこと。もう1つはフェースローテーションが大きいこと。今までは、絶妙なタイミングで感覚的に合わせることができていましたが、シャフトを47.9インチと長くしたことでフェースを開閉するタイミングがよりシビアになってきました。そこで、軌道をフラットにし、入射角を緩やかにすることでタイミングを取りやすくしています。ダウンスウィングの写真を見ると、以前よりも低い位置からクラブが下りているのがわかります。

入射角を緩やかにした一方で、フェースローテーションはこれまでどおり積極的に活用しています。フォローの段階では左手首が手のひら側に折れており、ハーフウェイダウンからフェースを180度近く開閉させていることがわかります。この動きの中でボールをとらえてコントロールできるのはさすがですね。

ミケルソンはロブショットの名手としても有名ですが、この手首の使い方がまさに名手の理由です。飛距離と操作性を兼ね備えているからこそ、長く難しいキアワアイランドを攻略できたのかもしれません。

軌道がフラットに。
巧みなリストワークは健在

インパクト直後の手首の形に注目。この段階ですでに左手首を手のひら側に折り、フェース面は完全に閉じている。タイミングを間違えば大きなミスになるこのスウィングは、まさにミケルソンの感性があってこそなせるわざ

左の写真は2018年のスウィング。ダウンでシャフトが左の肩口から下りてきていたが、現在のスウィングでは、左の上腕付近から下りてきている。これによって入射角がゆるやかになり、よりボールに力が伝わりやすくなっている

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月15日号より