Dr.クォンの反力打法 Vol.46 ピッチャーの動作解析で分かった! ヘッドがビュンと走る「運動連鎖」
ヘッドを効率よく、かつ最大限に加速させるためのキーワード、それが今回取り上げる「運動連鎖」だ。まずは運動連鎖のしくみについて教えてもらった。
【語り手/クォン教授】
ヤン・フー・クォン。テキサス女子大学教授。専門はバイオメカニクス。生体力学的に理に適ったスウィングを研究。教え子にタイガーの元コーチ、クリス・コモらがいる
【聞き手/吉田洋一郎プロ】
よしだ・ひろいちろう。D・レッドベターをはじめ、世界の名だたるコーチのもとを訪れ、最新理論を直接吸収。日々探究・研鑽に余念がないゴルフスウィング研究家
吉田 反力打法の説明のなかで、先生はよく、体を動かす順序が大事だとおっしゃっています。今回はそのあたりを詳しく伺いたいと思います。
クォン いわゆる「運動連鎖」のことだね。
吉田 それです! なんとなくは理解しているつもりなのですが……。
クォン 運動連鎖は、もともと球などの投球動作の解析から生まれた概念なんだ。
吉田 そうなんですね。
クォン ものを投げるとき、末端部分である手の指を最大限に加速するために、腰を回し、肩を回し、それから腕、ひじ、手首……と順番に関節を動かしていく。この順序を逆にして、いきなり手から動かしたらどうだろう?
吉田 きっとキャッチャーまでも届かないですね。
クォン ゴルフの場合は、投球のように片方の手だけを振るわけではないから、少し複雑になるが、末端であるクラブヘッドを走らせるという点では、投球と同じように正しい順序で動かす必要がある。
吉田 たしかに手やクラブヘッドだけを動かそうと思っても、ヘッドは速く動いてくれません。
クォン 基本的には運動連鎖は、体の中心部から末端部へと順番に連鎖していく運動のことをいう。
吉田 ゴルフでいうと、体幹のあたりが運動連鎖の起点になるわけですね。
クォン そして正しい順番で体を動かすことができれば、無駄な力を使うことなく、カンタンにヘッドスピードを上げることができる。
吉田 ゴルフの大敵である「手打ち」や「力み」は、運動連鎖を無視して、末端部をいきなり速く動かそうとするから生じるといえますね。
投球の場合は、まず股関節(Pelvis)が回り、次いで胸郭(Thorax)、肩(Shoulder)、ひじ(Elbow)、手首(Wrist)と順番に動くことで、末端である手が最大限に加速する。ゴルフでもこの運動連鎖が重要だ
クォン さらに前回も言ったように、順序よく体を動かすことができれば、体にやさしくケガをしにくくなる
吉田 飛距離が伸びて、体への負担も少ない。いいことづくめです。
クォン では具体的に、体のどの部位が、どういう順序で動いていくのか。それをわかりやすく示したのが下のグラフだ。
吉田 ……先生、まったくわかりませ ん。
クォン おお、失礼。これは学生向けに作った資料だった。では次回、このグラフの見方を含め、運動連鎖をさらに掘り下げていこう。
Dr. クォン&吉田洋一郎
『驚異の反力打法』
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