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【わかったなんて言えません】Vol.56 比嘉一貴#3「時松さんのアプローチを盗んでいます」

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。今週のゲスト前回に続き、8月のセガサミーカップでツアー2勝目を挙げた比嘉一貴プロ。今回は練習ラウンドでの「下準備」についてのお話から、アプローチの距離感に話が及ぶ。

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん”

ご指名/比嘉一貴

沖縄生まれ。ツアー2勝。本部高校、東北福祉大時代から活躍。17年プロ入り。158㎝と小柄ながらキレのあるショットが武器

時松 今も下準備のコースメモは作っているの?

比嘉 やっていないです。2019年でひと通り、開催コースのものは作ったので、そのメモを持っているから。

時松 新しいトーナメントで回るコースとかはどうするの。グリーンブックを買うとか?

比嘉 はい。本当はコースメモを作ったほうがいいとは思うんですけど、水平器を使って18ホールのグリーンの傾斜を測ってメモを作るのは、ハードすぎて。それだけのために月曜日の朝5時にコースに来て、夕方6時に帰るんですけど、日曜日に試合をして、翌日の月曜日に、となると、やっぱり体壊しましたよね。しかもツアーの後半の大事な一カ月でしたから、そこは反省点でした。

時松 僕は一貴とは逆で、グリーンに乗ったら芝目とかいろいろ考えたくなくて、パッと見て、ピッと打ったほうがフィーリングも結果もよい。それが、ボール1個かな、ワンカップかな、と迷うようになってくると入らなくなってくるんだよね。

比嘉 多分、源蔵さんは嫌なイメージを残したくないんでしょうね。だから知らないコースで練ランなしで、ぶっつけでやったときのほうが、案外、結果はいいんだと思うんです。いきなりコースに立って、見たままのイメージで打ってミスなくできるタイプだと思いますよ。

時松 一貴は何で事前にコースを詳しくチェックするの。


比嘉 悔いを残したくないんです。打った後に、あぁ、ここに打ったらいけなかったんだっていうのをなくしたいんです。

時松 カッコいいな。

比嘉 だから僕は源蔵さんとは逆に、グリーン周りに近づくほどチェックはします。

時松 2019年に作った『比嘉メモ』をツアーで売ってみれば。

比嘉 いや、売りたくないです。字が汚いから僕しかわからないし。でも源蔵さんには買ってもらいたいです。多分、使わないだろうから(笑)。源蔵さんは距離を測らなくても、見た目でキッチリ打てますからね。

時松 それはさ、事前に下調べや練習をやらないってだけでしょう(笑)。

比嘉 いや。していなくても、試合でできるってところが天才肌なんですよ。

時松 なんかやけに持ち上げるなぁ。

比嘉 だって自分は、けっこう源蔵さんからアプローチの技を盗んでいますからね。

時松 え、そうなの。

比嘉 はい。転がしですけど、源蔵さんのはキモイくらいラインに乗りますよね。入りそうっていうラインに乗せるためのスピード感が絶妙です。その辺は自分ができないから、すごいなと思いますね。それで見て勉強しています。だから源蔵さんと回った翌週は、自分もやたら52度のウェッジとかでアプローチしますもん。

時松 
結果はどうなの?

比嘉 かなりイイんですよね。イメージがよくなります。(石川)遼さんもそうですけど。遼さんはスピンをかけるアプローチですけど、あれは真似できないです。ホントにすごいです。

時松 確かに。

「打ち方を真似すると距離感も良くなります」

「源蔵さんのアプローチはパッティングの感覚と似ているのかなと思いますけど、スピード感が完璧。グリップの握り方もクラブの使い方も違うので、まるまる真似はしないですけど、イメージがよくなります」(比嘉)

比嘉 源蔵さんはアプローチで入っても当たり前のような顔をしていますけど、何で入るんですかね。

時松 何でかなぁ……。でも、入れようと思っていないよね。入れようと思ったらメッチャ強くなったりして距離がズレたりすることが多くなる。だから打つ前に考えているのは、距離感くらいかな。

比嘉 距離感って、キャリーの落としどころのイメージですか。

時松 そうだね。落としどころはしっかりイメージする。

比嘉
 源蔵さんは中途半端な40〜50Yとかも上手いですよね。それって自分のなかに絶対距離感みたいなものがあるんじゃないですかね。

時松 どうして?

比嘉 練習をものすごくしていれば距離感も身につくと思うけど、でも源蔵さんはやっていないのにできるから、それが絶対距離感なのかなと思うんです。

時松 絶体距離感のことはわからないけど、アマチュアの方でアプローチが苦手で距離感が悪い人を見ていると、基本、バックスウィングが小さくて、フォローで距離を合わせようとすることが多いんです。バンカーショットも、アマチュアの人は小さいバックスウィングで、インパクトで手でしゃくり上げようとするからボールが上がらないということが多い。でもプロのバンカーショットは、絶対にフォローで出そうとはしない。バンカーはテークバックを大きくして、フォローはほとんどないっていう打ち方でしょ。多分、アレだと思うんだよね。距離感とかって、バックスウィングでイメージしているんだと思います。

比嘉 なるほど。(次週に続く)

週刊ゴルフダイジェスト11月23日号より

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