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稲見萌寧の“絶対距離感”僕らにも手に入る? スコアに直結!「距離感」の正しい磨き方

100Y以内を確実に乗せる、アプローチで1パット圏内に寄せる、グリーン上で確実に2パット以内で上がる――スコアメイクをする上で最も重要なもののひとつが「距離感」だ。どこからでもいとも簡単に寄せてくるプロのような距離感は、我々にも身につけることができるのか。今回は、「距離感」というものの正体と、その磨き方を教えてもらった。

TEXT/Kenji Oba PHOTO/Yasuo Masuda、Tadashi Anezaki THANKS/オーク・ヒルズCC

稲見萌寧の「絶対距離感」
僕らにも習得できる?

メダリストにして賞金女王争いでトップを走る稲見萌寧。その強さはスタッツにも表れている。出場41試合で、獲得賞金以外にも、優勝回数(8勝)、年間トップ10回数(22試合)、平均ストローク(70.13)、平均バーディ数(3.67)、パーセーブ率(90.23%)でトップを走る(データは10月28日現在)。

注目すべきは、ともに1位を独走する「パーオン率」と「リカバリー率」だ。前者のデータは75%、後者は70%を超えている。つまり4回に3回以上はグリーンをとらえ、たまにグリーンを外しても7割の確率でパー以上のスコアで上がっているわけだ。稲見が「ショットメーカー」といわれる、納得のデータといえる。

精度の高いショットについて奥嶋誠昭コーチは「絶対音感ならぬ“絶対距離感”がある」という。アイアンショットは2Y刻みから、長い番手でも5Y刻みで打ち分けられるというのだ。

そうした能力が身についたのは育った環境も大きい。というのも稲見はジュニア時代、千葉の北谷津ゴルフガーデンでゴルフを覚えた。パー3が18ホールあるショートコースで、池田勇太や葭葉ルミなど、30人以上のプロを輩出したことでも知られている。

稲見はジュニア時代、1日10時間以上を北谷津で過ごしてきた。芝の上から打てるのはもちろん、グリーンの状態やボールのライ、高低差、風や天候などに合わせ、距離を打ち分ける感覚を磨いたのだ。ショートコース特有の小さな砲台グリーンでどこに止めるか、という技術もそこで身につけた。

では、アマチュアのゴルフはどうだろうか? フルショットはそこそこよく、狙った方向に飛んでいる。だが、グリーンまで残り80Y(中途半端な距離)のコントロールショットになると、手前にショートしたり、奥にオーバーしたり……そんな経験をしたゴルファーは多いはずだ。結局、パッティングも含め、100Y以内でスコアを崩しているのが、アベレージゴルファーが伸び悩む大きな要因といえるだろう。

では、稲見が持つ“絶対距離感”は、アマチュアでも身につけることができるのか?

距離感のベースは“周辺視野”と
“空間認知能力”で決まる

解説/大本研太郎

2018年PGAティーチングプロアワード最優秀賞受賞。東京・恵比寿でゴルフスタジオ「GPC恵比寿」を主宰。スウィング理論だけでなく、マネジメントやメンタルにも精通。現在、女子プロの東浩子、臼井麗香などを指導中

「精度の差はありますが、距離感は日常生活でも欠かせない、誰もが持っている能力なんです」というのは、ゴルフを多角的な視点で指導する大本研太郎プロだ。大本プロによれば距離感には2つのキーワードがあるという。そのひとつが「周辺視野」だ。焦点を絞るのではなく、広い視野で景色全体を見ることだ。反対にモノにフォーカスし、凝視することを「中心視野」と呼ぶ。


「実はアマチュアの多くは、中心視野になっているんです。これはゴルフに限らず、道具や体の部位に視線が集中してしまうからです。周囲に人がいるのに素振りをしたり、他の人がプレー中なのに打ってしまうのは、中心視野によって起こるトラブルなんです」

ちなみに中心視野はスウィングの天敵である力みも生む。「ボールをよく見ろ」はレッスンの定番だが、目元に力が入ることで全身が力んでしまうこともある。

「プロはボールを凝視していません。意識的に周辺視野、つまりボールをぼんやり見ているのです。まずは視線を集中させず、遠くを見る、広い景色を見るなど、周辺視野を意識することが大切です。たとえば大きなグリーンは遠く、小さなグリーンは近く見えますが、このパッと見た距離と実際の距離を歩測や距離計などで検証することで、周辺視野の精度もどんどん高めていけるのです」

もうひとつが「空間認知能力」と呼ばれるもの。視覚情報を脳で処理することで距離も含めた状況を判断する能力のことだ。わかりやすい例でいうとクルマの車庫入れで、車庫入れが上手い人ほど、空間認知能力が高いという。

「車庫入れの上手い人は、どのタイミングでハンドルを何度切り、どれだけアクセルを踏むかなどとは考えません。視覚情報(車庫の幅、奥行きなど)から見えない部分(死角)もイメージしてクルマを操作します。これはゴミ箱にゴミを入れる、キャッチボールで相手の胸元に投げるのと同じ。実際の距離がわからないのに投げられるのは、空間認知能力を使っている証拠なのです」

この空間認知能力は日常生活において不可欠なものだ。たとえば繁華街で人とぶつからずに歩けるのは人との距離や動きを予測しているからだ。階段も同じ。踏み外せば大ケガになる階段を難なく上り下りできるのは、空間認知能力のなせるワザといっていい。

「歳を重ねるとつまずくのは筋力だけでなく、空間認知能力の衰えも影響しています。空間認知能力は周辺視野なしでは成り立ちません。普段から視野を広くし、そこに動作を加えることで距離感のベースができ上がっていくのです」

距離感のキーワード1 周辺視野
焦点を中心に絞らず広い範囲を見る

周辺視野とは視野が広い状態を指し、まさにボールをぼんやり見ることそのものだ。グリーンまで何Y、池を越えるには何Yといった奥行き(距離感)は広い視野なしでは判断できない。モノを凝視する中心視野、たとえばスマホに集中していては周りの状況は把握できない

距離感のキーワード2 空間認知能力
立体的な位置関係を把握する能力

視覚情報を脳で処理し(見えない部分の捕捉も)、三次元空間における状況を把握してイメージ、予測しながら動けるのが空間認知能力だ。人とぶつからずに歩ける、高さも幅も違う階段を上り下りできるのは、誰もがこの能力を持っているから。ただ加齢とともに衰える能力でもある

空間認知能力は日常生活で鍛えられる!
空間認知能力を発揮するには広い視野、つまり周辺視野が必須だ。まずは普段から広い視野を心がけたい。そこに歩く、走る、投げる、使うなどの動作が加わることで空間認知能力は高められる。ジグソーパズル、自転車の運転、絵を描く、地図を読み解く、キャッチボールなどは、空間認知能力を鍛える最適な動作なのだ

「視覚で得た情報に反応できる
“手の感覚”を磨くことが大事です」

距離感の正体はわかったが、ゴルフにおける距離感はどう作ればいいのか?

「距離感を作るには、手の感覚が重要です。運動時における感覚では、手の感覚が3割以上を占めているからです」と大本プロ。「ペンフィールドのホムンクルス」という、手と顔が異常に大きな人形がある。これはカナダの脳神経外科医・ペンフィールドが脳(運動野と体性感覚野)と体の部位との対応関係をまとめたもので「脳の中のこびと」とも呼ばれている。

「つまり、手の感覚なくして距離感は作れないということです。グリーン上でカップに向かってボールを転がし、近くに寄せたり、入れたりするのが上手な人ほど、手の感覚が優れている証拠です。ただ、これは積極的に手を使え、ということではありません。手を使うとスウィング中にムダな動きが生まれるので注意しましょう」(大本)

ゴルフに求められる手の感覚とはクラブの重さ、インパクトの打感、手の中でクラブが引っ張られたり、ねじれたりする感触を感じ取ることだ。そして大本プロは、距離感に直結する右手の感覚がとても大切だと語る。

「プロがグリーン上で距離感を出すとき、よく右手を振るのはそのためです。周辺視野による視覚情報、空間認知能力による傾斜、見えない風などを判断し、それに右手の感覚を合わせていく。そうやってターゲットに対する距離感が磨かれていくのです」

右手=力感
左手=方向性

手の感覚はどちらも大事なものだが、距離感で考えれば、重要なのは右手(右打ちの場合)。ターゲットに対する右手の感覚によって距離感が作られるわけだ。一方左手は、クラブの動きをガイドし、方向性を出すのに役立つ

では、どのように右手の感覚を磨けばいいのだろう。大本プロは「カップのフチで止める」パッティングとアプローチの練習が効果的だという。

「入れるのではなく止めることが大事。止めることで正確な距離感が作られるからです。どう転がし、どう浮かせるかではなく、狙った場所にどう止めるか。それが右手の感覚を磨き、自分の距離感として培われていくのです」

手の感覚を磨くためにやってはいけないことがある。それが「フルショット」と「振り幅を決めること」だ。フルショットは転ばないようにバランスを保とうと体が反応しやすく、振り幅を決めると右手の感覚は鈍ってしまう。ターゲットに対し、どのくらいの力感(手の感覚)で打つかが決まれば、振り幅は自然に決まるのだ。

10mのロングパット、20Yのアプローチから始めるのがいい、と大本プロ。徐々に距離を伸ばし、間の距離を打ち分けていくことで、精度の高い距離感が体の中に記憶されていくはずだ。

「いきなり稲見選手のような2Y刻みは難しいですが、打った瞬間に大きいか、小さいかがわかれば、精度の高い距離感に近づけている証拠。スコアメイクもグッとラクになりますよ」

運動は3割以上が手の感覚で行われている。「手のひらは第二の脳」と呼ばれる由縁でもある。手でボールを転がす、投げて転がすなど、視覚情報に対していかに手の感覚を合わせられるかが、距離感作りの最初の一歩なのだ

カップのフチに「止める」練習をしてみよう

カップに「入れる」のではなく、手前に「止める」ようにすることで、正確な距離感が身につく。まずは10mのパットと20Yのアプローチから始めよう。パットではカップを見たまま打つと、よりイメージが出しやすい

こんな練習も効果的!

週刊ゴルフダイジェスト2021年11月16日号より