Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • 週刊GD
  • 【知られざるジャンボ尾崎】#1「一晩で2回カレーを食べたオーガスタの夜」

【知られざるジャンボ尾崎】#1「一晩で2回カレーを食べたオーガスタの夜」

通算113勝(海外1勝)の偉業を成し遂げているプロゴルファー尾崎将司。スケールの大きいゴルフと他を寄せ付けない圧倒的な強さから“ジャンボ”と呼ばれ、長年にわたり日本のゴルフシーンを牽引してきた。試合中は相手を睥睨し、萎縮させてしまうほどの強いオーラを放っていたジャンボの意外な一面を、長年ジャンボを取材してきたベテラン記者が明かす。

試合前、ギターを弾いたり歌ったりして寛いでいたジャンボ。この日のメインはカレーだったが小鉢にはカルシウム補給のための乾燥させた小魚なども用意されていた

1979マスターズ
一晩で2回カレーを食べたオーガスタの夜

1977年から85年までは毎年、マスターズの取材でオーガスタに行っていた。オーガスタは南北戦争の激戦地となった南部の小さな町だが、当時は思っていたよりもはるかに地味だった。モーテルは数軒あったが本格的なホテルはダウンタウンに1軒しかなかった。そのためマスターズの期間中は、オーガスタの商工会議所がコース近隣住民の住宅を借り上げ、選手や世界中から取材に訪れる記者たちの宿泊施設として貸し出していた。

79年、日本から招待されていたのはジャンボ尾崎と青木功の2人だったが、両名が宿泊している家に行き、試合に備えて寛ぐシーンを取材することになった。最初に向かったのは青木功プロが借りていた、閑静なエリアにある大きな一軒家だった。

夕方に近かったことからチエ夫人は夕食の支度に専念中。キッチンから漂ってくる匂いで、その日の青木家の晩餐はカレーだとわかった。

カレーを食べる青木功とチエ夫人

「お父さんは2階で寝ているので、夕食ができたら起こしてきて」とチエ夫人。「えっ、お父さんって青木プロ……だよね。オレが起こすの?」と心の中で思いながら2階の寝室に。寝室をのぞくと大きなベッドの上で横になり、気持ちよさそうに熟睡している青木功の寝姿が。一体どうやって起こせばいいのか……。「ご飯ですよ、起きてください」と心の中で数回シミュレーション。覚悟を決めて「プロ、ご飯です」と声を掛けたら「おう、来てたのか」と青木プロ。

「よかったら一緒に食べない?」と誘われ、断れるはずもなく、「はい、ありがとうございます」と3人でカレーを食した。しばらく取材したあと、今度はジャンボ尾崎が泊まっている家に向かって猛スピードで移動。

玄関から中に入ると、ジャンボはギターを弾いて寛いでいた。その後、足の爪を切っているところを撮影したら、「何撮ってるんだ」と言われてしまった。そのとき、キッチン方向から匂ってきたのはまたしてもカレー。

「余分にあるから食べませんか」と義子夫人が声を掛けてくれた。まさか「今、青木さんの所でカレー食べてきましたからお腹一杯なので結構です」とは口が裂けても言えない。

「はい、ありがとうございます」と言って素直に頂いた。お腹が一杯だったにもかかわらず、かなり美味しかった記憶がある。あとから食べたのでより印象に残っているのかもしれない。青木家はH社、尾崎家はS社のカレールーだったに違いないと43年経った今でも勝手に思い込んでいる。

一晩で2回カレーを食べたオーガスタの夜。つい昨日のような気がして、いまだに忘れられない思い出だ。

「何撮ってるんだ」と言われた瞬間

文●吉川丈雄
年齢不詳でいまだに現役記者。ゴルフダイジェスト入社後、シンガポール、マレーシアをはじめ、フランス、モロッコ、英国、スイス、スウェーデン、イタリア、アメリカ、カナダ、メキシコ、中国、台湾、アラブ首長国連邦、オーストラリア、ニューカレドニア、タイ、インドネシアなどのコース、トーナメントを取材。日本ゴルフコース設計者協会 名誉協力会員

週刊ゴルフダイジェスト2022年8月23・30日合併号より

  • 通算113勝(海外1勝)の偉業を成し遂げているプロゴルファー尾崎将司。スケールの大きいゴルフと他を寄せ付けない圧倒的な強さから“ジャンボ”と呼ばれ、長年にわたり日本のゴルフシーンを牽引してきた。試合中は相手を睥睨し、萎縮させてしまうほどの強いオーラを放っていたジャンボの意外な一面を、長年ジャンボを取材してきたベテラン記者が明かす。 庭にあった陶板焼きの「夢」の字はジャンボ自筆 ……
  • 通算113勝(海外1勝)の偉業を成し遂げているプロゴルファー尾崎将司。スケールの大きいゴルフと他を寄せ付けない圧倒的な強さから“ジャンボ”と呼ばれ、長年にわたり日本のゴルフシーンを牽引してきた。試合中は相手を睥睨し、萎縮させてしまうほどの強いオーラを放っていたジャンボの意外な一面を、長年ジャンボを取材してきたベテラン記者が明かす。 83年に「MTNⅢ」、翌年「MTNⅢリミテッド……
  • 通算113勝(海外1勝)の偉業を成し遂げているプロゴルファー尾崎将司。スケールの大きいゴルフと他を寄せ付けない圧倒的な強さから“ジャンボ”と呼ばれ、長年にわたり日本のゴルフシーンを牽引してきた。試合中は相手を睥睨し、萎縮させてしまうほどの強いオーラを放っていたジャンボの意外な一面を、長年ジャンボを取材してきたベテラン記者が明かす。 マルマンオープンは1980~94年まで開催され、ジ……
  • 通算113勝(海外1勝)の偉業を成し遂げているプロゴルファー尾崎将司。スケールの大きいゴルフと他を寄せ付けない圧倒的な強さから“ジャンボ”と呼ばれ、長年にわたり日本のゴルフシーンを牽引してきた。試合中は相手を睥睨し、萎縮させてしまうほどの強いオーラを放っていたジャンボの意外な一面を、長年ジャンボを取材してきたベテラン記者が明かす。 広島オープンでは通算9勝と圧倒的な強さを発揮 ……
  • 通算113勝(海外1勝)の偉業を成し遂げているプロゴルファー尾崎将司。スケールの大きいゴルフと他を寄せ付けない圧倒的な強さから“ジャンボ”と呼ばれ、長年にわたり日本のゴルフシーンを牽引してきた。試合中は相手を睥睨し、萎縮させてしまうほどの強いオーラを放っていたジャンボの意外な一面を、長年ジャンボを取材してきたベテラン記者が明かす。 80年全英オープンはスコットランドのミュアフィール……
  • 通算113勝(海外1勝)の偉業を成し遂げているプロゴルファー尾崎将司。スケールの大きいゴルフと他を寄せ付けない圧倒的な強さから“ジャンボ”と呼ばれ、長年にわたり日本のゴルフシーンを牽引してきた。試合中は相手を睥睨し、萎縮させてしまうほどの強いオーラを放っていたジャンボの意外な一面を、長年ジャンボを取材してきたベテラン記者が明かす。 フェラーリ365GT4BBをジャン……