【クラブ駆け込み寺】Vol.5 大慣性モーメントなのに方向性が安定しない! そんな人に最適なチューン法とは?
“頑固オヤジ”が勇退し、あとを継いだのが練習場で小さな工房を営む通称“アニキ”。今回は「慣性モーメントが大きいドライバーなのに、方向性が安定しない」という相談が寄せられた。
ILLUST/Kochi Hajime
Q. スイートエリアが広い新ドライバーを
生かすには、どんなチューン法がいい?
スイートエリアがすごく広くなったと話題の新ドライバーを試打したところ、打ち方が悪いのか方向性が定まりません。何かチューンする方法があれば教えてください。
“打点ブレ補正”と
“打面合わせ”は別
各メーカーから新モデルが発表されましたね。テーラーメイドの『Qi10 MAX』、ピンの『G430 MAX10K』は、ヘッドの左右MOI(慣性モーメント)はルール上限の5900g・㎠以内に抑えつつ、上下MOIを合計すると「10K」(10000g・㎠)を超えるというもの。
また、キャロウェイは打点ごとの肉厚を変える「Aiフェース」を進化させた『パラダイムAiスモーク』を発表しましたが、いずれもスイートエリアの拡大を強調していました。“頑固オヤジ”さんは30年ほど昔の、マグレガーの初代『マックテック』のキャッチコピーを思い出したようで、「要はあれだ、“空振りさえしなければ”の令和版だな」とか笑っていましたけど。
確かに、打点ブレしても打球の飛距離が落ちず、余計なサイドスピンがかかりにくければ方向性も高まるはず。スイートエリアが広いことは大きなメリットですが……。
「『10K』、試打したらつかまらなくて。で、つかまえにいくと引っかけ。たまに真っすぐ飛ぶと、よく飛んでいるんですけど、これじゃコースで使えそうもない。腕が悪いんだろうけど、シャフト交換とかすれば使えるかな?」
本来なら、こんな相談をしてきた90切りレベルの方に恩恵がありそうですが、つかまりが悪くなるのも大MOIモデルの“あるある”なんです。各メーカーも、その辺は重心設計とかシャフトスペックで解消しようとしているはずなんですけどね。
「スイートエリアが広いモデルは打点のブレを気にせず、しっかり振れるのがメリット。そのうえでインパクトエリアでの打面の向き、つまりつかまり具合がどう整うかが大事なんです。シャフトの入り方や鉛貼りでの微調整が有効だと思います」
促したいのはヘッドのタテ回転
大MOIのヘッドは、当たり負けないぶん、動かしにくい。ただ、動き始めると、その動きが安定して持続する性質があります。
「フェースターンが以前使用していたものよりゆっくりになる、だからつかまりにくくなる。そのギャップの埋め合わせをすればいいんです」
「具体的には、どういう?」
「たとえばフェース角をクローズにする。ホーゼルのカチャカチャ機能で、シャフトの挿し方を変えてみるのが簡単ですね。または、0.5グラムぐらいの鉛をヘッドの側面に貼ってみて、ヘッドの回転軸を変えてみるんです」
「ヘッドの回転軸を変える……とは?」
スウィング中、ヘッドは左右に水平に回ったり、上下に垂直に回ったりするわけではありません。ヘッド重心を中心に、トウ上とヒール下が入れ替わるように回る。ヘッドを吊り下げて、グリップを回した時に見られる回り方です。
「この回転をスムーズにするのに、0.5グラムぐらいの鉛が効くんです。自動車のホイールバランスを整えたり、コマの芯出しをしたりするのと同じ理屈なんですけどね」
「ヒール寄りに貼って、重心アングルを大きくするのとは違うんですか?」
「それには2グラムくらい貼らないと。でも、それだとヘッドが重くなって、逆に振り遅れてしまうかも。だから、まず今挙げた2つを試すんです」
もうひとつヒントをプラスすると、ヘッドをタテ回転させるつもりで振ること。つかまりが悪いとトウを走らせるようなヨコ回転イメージを持ちがちですが、これではタイミングが合わないと開きすぎたり閉じすぎたり。でも、ソールをクラウンが追い越すタテ回転イメージなら、つかまりやすいのにかぶらない感覚で、リリースを促せるはずです。
そのイメージでフェースターンした時に、どのくらいヘッドが回ればいいか。ヘッドを回さず、野球のバントみたいに当てにいっても、真っすぐは飛びませんよ。
月刊ゴルフダイジェスト2024年4月号より