Myゴルフダイジェスト

【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.80「60歳代前半はハナタレゴルファーです」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

前回のお話はこちら

僕らからするとレジェンドとは、たとえば日本オープン6勝の宮本留吉さん、公式戦17勝の戸田藤一郎さん、日本プロ、日本オープン両方の最年少優勝記録を持っていた浅見緑蔵さん、カナダカップ優勝の中村寅吉さんですが、ほかにも日本のプロゴルフに貢献したレジェンドはぎょうさんおります。

そういうレジェンドのみなさんが全盛期に、どんな業績を挙げておったのかは、調べればいくらでもわかります。僕が気になっておるのは、晩年、70歳を過ぎたぐらいのときに、どんなゴルフをしておったのか、です。

ちょっと前に、僕と秋葉真一、髙橋勝成さん、長谷川勝治さんという顔ぶれでまわりました。僕は62歳、勝成さんは71歳、秋葉は56歳、長谷川さんは75歳です。


秋葉が言うのです。「奥田さん、あの人、おかしいですよ」と。「あの人」とは長谷川さんのことです。「おかしい」とは変な意味やありません。4人のなかで長谷川さんが一番飛んでおったのです。

僕の周囲にも70歳を超えて、若い衆に負けないゴルフをしておられるプロゴルファーは、海老原清治さん、須貝昇さん、飯合肇さんなどなど枚挙にいとまがありません。そう考えると、レジェンドと呼ばれる人たちが、70歳を過ぎたころに、どんなゴルフをやっておられたのか気になるのです。

たとえば橘田規さん。僕の師匠筋やからわかりますけど、享年68歳やから70歳代のゴルフはなかったのです。

鬼才と称された戸田藤一郎さんも70歳まで生きられなかったから、僕らが考える晩年のゴルフはなかったわけです。

林由郎さんは89歳のご長寿やったし、弟子筋の海老原清治さんから晩年のゴルフのことも聞いております。林さんと同郷で、ひと世代下の佐藤精一さんは89歳。僕もゴルフをご一緒させていただき、どんなゴルフをするのかをつぶさに見させてもらえました。

日本に第一次ゴルフブームをもたらした中村寅吉さんは、74歳のときに日本ゴールドシニアで71をマークしたという記録があるので、晩年もそれなりのゴルフをやりはっていたのが想像できます。

最近よく「人生百年」という言葉を耳にします。僕なんかは、まだ60歳代前半のハナタレですけど、この先、5年10年のゴルフが気になるのです。

「中村寅吉さんは記録もある。僕はその頃どうしてるやろうか……」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2022年5月10・17日合併号より