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【わかったなんて言えません】Vol.74 矢野東#2「足を使うスウィングのほうが飛んで曲がらない」

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。今週のゲストは前回に続き矢野東。“足を使う”スウィングに改造したことで飛んで曲がらなくなったという矢野。果たしてどういうことなのか。

TEXT/Chiharu Kubota PHOTO/Hiroaki Arihara

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん”

ご指名/矢野東

1977年生まれ、群馬県出身。00年プロ入り。ツアー3勝。14年に12年間守っていたシードを手放すも、昨年見事復帰

前回のお話はこちら

時松 あらためて、昨年の特別ファイナルQTトップ通過、すごいですね。

矢野 いや、あれはたまたま調子がよかっただけだったんだよ。

時松 でも会場はタフなことで有名なザ・ロイヤルGCですよ。

矢野 たまたま飛んで曲がらなかった。だいたい、その前のサードQTだって、受けようかどうか迷っていて、嫁にも「今年は(受けなくても)いいよね」なんて言っていて、申し込みもギリギリだったんだ。

時松 何で迷っていたんですか?

矢野 スウィング改造に取り組んでいて、2023年、2024年に向けて動き始めたばかりだったから、一昨年のファイナルQTは絶対に取ろうとは思っていなかったんだ、本当に。でも、やっていたら調子がいいなと。最後の3ホールぐらいかな、「1位を取りたいな」と思ってプレーしたのは。

時松 去年、関西オープンで一緒に練習ラウンドさせていただいたじゃないですか。あのとき、東さんのボールがすごく高くて、よく飛んでいて驚きました。それと、昔と比べてすごく足を使ったスウィングをしているのが印象的でした。


矢野 僕のなかで、足を使わないスウィングと使うスウィングと2つあって、全然使わないわけではないけど、僕は使わないほうでやってきていたんだ。だけどコーチとのやりとりなどで、足を使わないというのは間違いだと気がついた。

時松 去年のANAオープン、僕がホールアウトしたとき東さんは9番ホールでトップでした。スウィングはきれいだし、球筋がすごく伸びていました。いや、以前は伸びていなかったということじゃないですよ。

矢野 あのときは、最終日の前半で2つ伸ばして「完璧だな」って思っていた。そうしたら(スコット・)ビンセントがすごく伸ばしていて、リーダーボードを見てなかったから、ずっと自分がトップだと思っていた。

時松 ボードは見ない派ですか?

矢野 昔は見なかった。優勝している試合はほとんど見てない。でも今回は「やっぱりボードを見なきゃダメかな」と思ったりもした。ゲンちゃんはどっち?

時松 見ません。見るとダメです。キャディさんを見て、その雰囲気で感じることはありますが。

矢野 大事なのは自分のスタイルを崩さないことなので。でもあのときは「見ておけばよかったな」と思う。でも、「また優勝はできるんじゃないかな」って気にはなった。

時松 それで、足は使ったほうが飛んで曲がらないんですか?

矢野 そう思う。わかりやすく言うと、切り返しのタイミングの違い。僕も元々ゲンちゃんみたいな足を使わないほうのスウィングだった。足を使いすぎるとインパクトのタイミングが取りづらい。だけどスウィング改造に取り組んでいて、何か分離しちゃう感じが多くてね。それで、足を使うようにしたら、全部がどんどんよくなってきたんだ。

時松 大事なのは足とタイミングなんですか?

矢野 もう少し簡単に言うと、切り返しのタイミングを早くするの。足を使っている人って、切り返しのタイミングが早い。足が使えていない人は、トップまでいって切り返すでしょ。体の大きな動きのなかでしか切り返せないから。本当に足を使えてくると、トップってどんどん小さくなって、切り返しのタイミングってどんどん早くなるんだよ。テークバックでクラブが地面と平行になったぐらいから切り返しが始まるんだ。

時松 クラブが上がったらすぐに切り返すという感じですか?

矢野 ゲンちゃんも、できればもうちょっと捻転をしっかりしたいと思っているでしょう。

時松 はい。捻転はしたいです。

矢野 僕の場合、捻転とかタメとか、そういう概念がまったくなくなった。クラブが上がる方向と、下半身が切り返す方向が逆になって引っ張り合いが起きるから、結果的に捻転は起きるイメージ。でも、体を捻転させて、クラブと体の回転があまりズレないようにスウィングするというのがゲンちゃんだよね。稲森(佑貴)なんかもそうだけど。

時松 なるべくいっぱい捻転をして上げたほうが飛ぶというのがあります。

矢野 以前は僕も、トップをコンパクトにすると振れなくなってしまうと思っていた。結局は、時間の使い方が違うだけなんだ。いいとか悪いとかの問題じゃなくて、タイプが違うだけ。

時松 トニー・フィナウなんかものすごくコンパクトですね。

矢野 どっちにしても、自分が何をやっているかを理解していることが大事なんだと思うよ。

「本当に足を使えてくると、トップってどんどん小さくなって、切り返しのタイミングはどんどん早くなる。テークバックでクラブが地面と平行になったぐらいから切り返しが始まるイメージです」

週刊ゴルフダイジェスト2022年4月5日号より