Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • プロ・トーナメント
  • 【わかったなんて言えません】Vol.53 今平周吾#5「練習場ではいいのにコースでは……これ、プロも同じなんです」

【わかったなんて言えません】Vol.53 今平周吾#5「練習場ではいいのにコースでは……これ、プロも同じなんです」

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。ゲストは前回に続き、2年連続賞金王の今平周吾。今回は男子ゴルフ界への熱い気持ちを話してもらいました。

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん

ご指名/今平周吾

埼玉生まれ。ツアー5勝。2年間の米国武者修行を経て2011年プロ入り。27歳67日での複数回賞金王はジャンボ尾崎を抜いて最年少記録

前回のお話はこちら

時松 男子ツアー、もっと盛り上げたいですよね。よく聞くのは、男子プロの真似はできないけど、女子プロなら近いものがあるから見たいと……。

今平 それはよく聞きます。ただ、真似できない、というところを楽しんでいただけたらいいんだけどね。

時松 真横から見ていたら、男子のショットは球が消えてしまうとか。その迫力をもっと伝えなければならないですよね。

今平 迫力なら海外の試合を見るという人も多いだろうけど、同じ日本人がここまでやれるという部分も感じてほしいです。それに、飛ばしだけじゃなく技術も見てほしいです。

時松 そう、僕が見ても惚れ惚れする今平プロの技術を!

今平 いやあ、僕からすれば、みんなのほうが上手に見える。源ちゃんにしても、僕には真似できないところがたくさんあるよ。まずスウィングテンポ。どんな状況でも自分のテンポを変えず、絶対に打ち急ぐミスなんてしないでしょ。しかもドライバーもアプローチもテンポが一定で、あれはすごい技術だと思う。

時松 いや~、2年連続賞金王に褒めていただくと嬉しいっす。

今平 テンポが保てているのは、あのゆっくりと上げていく独特のテークバックがあってこそだよね。どうしてあんなにゆっくりにしてるの?

時松 もっと早く打ってしまいたいって思うこともあるんですけどね。もっと滑らかなテークバックにしたいなと。ゆっくりすぎて、カッコ悪いでしょ?

今平 そんなことないよ。

時松 昔はもっと遅かったんです(笑)。テークバックも含めて自分のテンポを保つというのは、緊張した場面でも同じようにスウィングできることにつながります。師匠の篠塚武久先生からも、それは言われてきたので。

今平 なるほどね。僕はコーチがいないから、自分で動画を撮って気づいて自分で直す。振っていて何となく気持ちが悪い、タイミングよく打てないというときがある。切り返しのときにできていたタメがなくなって、打ち急ぐとどうしてもテンポが速くなってしまうんだよね。

時松 その打ち急ぎ、どうやって修正するんですか?

今平 無駄な力を抜くこと。それを意識してプライベートでまわると、いい感じに振れるんだけど、試合では感覚が変わってきちゃうことがある。ただ、僕らは試合でいいスウィングができないと意味ないから。


時松 アマチュアの方も、練習場では上手く打てているのにコースでは、ってよく言いますよね。それはプロでも同じで、やっぱり試合だと緊張して力が入ったり、逆にどんどん怖くなって振りが弱くなったり。練習場は、緊張感も恐怖心もないから。

今平 そうだね。アマチュアの方がコンペではミスしてしまうっていうのと、僕らも似ているかもしれないよね。だからその緊張感や恐怖心が、ゴルフの難しさだとも言えるんだろうね。

時松 プロアマでアマチュアの方に、「左に池がありますから右に打ちましょう」なんて言葉で伝えても、やっぱり池に入れてしまう人、いますよね。それはプロの試合でも同じで、テレビ中継の解説をさせていただいているとき、「このグリーンは奥につけると難しいんですよね」なんて喋っても、奥につけてしまうプロはいますから。なぜ奥につけてしまったんだって、プロ自身が一番悔やんでいますよね。

今平 それ、パッティングに多い。めちゃめちゃフックするってわかっているのに、膨らましきれないとか。特に下りのフックって、それがあって嫌です。

「パッティングで、めちゃめちゃフックするってわかっているのに、膨らましきれない。特に下りのフックです」(今平)

時松 やっぱり、膨らませすぎて抜けちゃったらどうしようっていう恐怖心がどこかで働くんでしょうね。どんな場面でも、そうした恐怖心はつきまといます。たとえばティーイングエリアに立って、左にOB杭が迫っているのが見えたら、いくら右が広くても、左を見て「狭っ!」って思ってしまうとか。

今平 僕も同じ。いつも最悪の状況を考えちゃう。ただ、最悪を考えていると楽になれる、というのもある。ミスしてラフに外しても、OBじゃなかったんだからまあいいやって。

時松 そうそう! 昨日ここでバーディだったよなって思うより、昨日ここでダボだったよなって思うほうが、結果がいいこと多いです。3年前のイーグルは忘れても、3年前のダボは憶えていますしね(笑)。

今平 同じかな。僕もイーグルなんてあまり憶えてない。悪かったことは忘れないよね。それがあるから怖くなるし、緊張もする。そうした心理的な闘いなんだろうね、ゴルフは。

時松 だけど今平プロでさえ、そういう緊張感や恐怖心と闘っていると聞けて、安心するゴルファーも多いんじゃないでしょうか。皆さん、僕らのプレーはもちろん、心のなかものぞくつもりで見てみてくださいね!

週刊ゴルフダイジェスト2021年10月26日号より