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「ドローを打たなくていいよ」稲見萌寧を育んだ3つの“しなくていいよ”【奥嶋コーチの珠玉レッスン前編】

PHOTO/Yasuo Masuda、Shinji Osawa、Hiroyuki Okazawa、Hiroaki Arihara、KJR THANKS/北谷津ゴルフガーデン

今年前半だけで5勝を挙げ、東京五輪で銀メダルを獲得した稲見萌寧。6月に初優勝を果たすと次の試合でも優勝しブレイクした木下稜介。2人の急成長プロを指導するのが、プロコーチの奥嶋誠昭。稲見は2018年12月、木下は2019年11月から指導を受け始め、たちまち第一線で活躍するプレーヤーに成長した。果たして2人にどんな教えを施したのか。その一端を特別公開!

解説/奥嶋誠昭

おくしまともあき。1980年生まれ。神奈川県出身。ツアープロコーチとして、稲見萌寧、木下稜介、イ・ボミ、高橋彩華を指導。横浜のノビテックゴルフスタジオで、GEARSを使ったアマチュアレッスンも行っている

長所を生かす
3つの“しなくていいよ”

GD 稲見プロの指導は、2018年の12月からですね。

奥嶋 当時、稲見プロは、飛距離を伸ばすため、クラブをシャロー(鈍角)に下ろしてドローを打とうとしていました。でも、それが僕には無理しているように思えたんです。

GD というと?

奥嶋 稲見プロは、腕の使い方がバツグンにうまくて、本来はややスティープ(鋭角)に下ろすスウィングなんです。だから、ドローを打ちにいくと、どうしても引っかけや右プッシュが出やすい。

GD なるほど。

奥嶋 合わないものを無理に取り入れようとしないで、いま持っている財産を生かそうよ、と稲見プロに話しました。彼女はスティープにクラブを動かすセンスがバツグン。だったらそれを生かして、スティープな軌道に合うフェードでいこうよ、と。

GD その判断で、稲見プロのショットメーカーの才能が一気に開花したわけですね。

奥嶋 稲見プロに教えているのは、終始一貫、オンプレーン(アドレスで構えた位置にクラブを戻す軌道)に振ることだけです。バックスウィングで上げた軌道どおりに下ろしてくるイメージでいいよ、と言っています。

しなくていいよ1
「シャローに振らなくていいよ」

「シャローに振ろうと苦労していた稲見プロに、スティープ(やや上からの軌道)でいいと教えました。スティープな軌道のほうが、バツグンにうまい手の動かし方を生かせると判断したからです」(奥嶋)

しなくていいよ2
「ドローを打たなくていいよ」

「ドローボールを打とうとしていた稲見プロに、カット軌道でフェードを打つようにすすめました。クラブをスティープに動かす稲見プロには、ドローよりもフェードのほうがイメージしやすいはずだからです」

しなくていいよ3
「左に踏み込まなくていいよ」

「稲見プロは、腕や上半身をうまく使う反面、体重移動はやや苦手。切り返しから左に踏み込むとミート率が落ちるので、無理に踏み込まず、右サイドで振ればいいと教えました。これでショットが安定しました」

これぞショットメーカーの証
どちらがダウンスウィングか分かりますか?

稲見のスウィングを見ると、バックスウィングとダウンスウィングの軌道がほとんど変わらない。これこそが、ショットメーカーの証拠だと奥嶋コーチは言う。「稲見プロには、とにかくオンプレーンに振ることだけを教えています。その結果、ショットの精度が格段にアップしました」

稲見萌寧の1Wスウィング

左片手打ち
フェードを磨き抜いた

GD 稲見プロは、どんな練習を積んで、ツアー屈指のフェードヒッターになったんでしょうか?

奥嶋
 稲見プロはオンプレーンに振ることを練習テーマにしています。そのためにやっているのは、8Iを左手1本で打つドリルですね。

GD 左の片手打ちですか!

奥嶋 
そうです。稲見プロは、左腕の感覚で振ると出球が揃うタイプなんです。それと、精度の高いフェードには左のリードが絶対ですから、左手1本のドリルというわけです。

GD 稲見プロはどのくらい打つんでしょうか?

奥嶋 このドリルは、オンプレーンスウィングの確認作業で、インパクトゾーンを真っすぐ動かすための練習です。彼女は8Iを左手に持って、バックスウィングとダウンスウィングの軌道の確認作業を延々と続けていますよ。トップの位置を確認して、ゆっくりとインパクトまで下ろして、左手1本でボールを実際に打つ。稲見プロは何時間もその練習をやっていますが、アマチュアの方なら100球くらいから始めるといいですね。

Drill 1
左手1本でボールを打つ

「フェードを打つには、左腕のスウィング弧が大切。そのため、稲見プロは左手1本でボールを打つドリルをやっています。クラブ軌道を確認しながら素振りして、その軌道をなぞるようにボールを打ちます。低く長いインパクトゾーンを覚える練習なので、フルスウィングする必要はありません」(奥嶋)

Drill 2
クラブ軌道を確認してから打つ

「トップからハーフウェイダウンまでの動きを2~3回繰り返して、ダウンスウィングの軌道を体に覚え込ませます。そのイメージが消えないうちにボールを打ちます」(奥嶋)

パットの秘密は
限りなく真っすぐに近いインtoイン

GD 稲見プロは入れまくるパットも有名ですよね。

奥嶋 彼女はインパクトゾーンのヘッドの動かし方をずっと磨いてきて、これはドライバーからパッティングまで共通しているんです。

GD パッティングはまさにインパクトゾーンだけの動きですよね。

奥嶋 稲見プロのパッティングは、ヘッドをスクエアに真っすぐ動かす技術に長けているんです。彼女が練習でいつも愛用しているシートがあるんですが、わずかにイン・トゥ・インに描かれている線の上をスクエアに動かす練習を繰り返しやっています。ボールを数多く打つことより、インパクトゾーンのヘッド軌道の精度を上げるほうが、狙った方向に正確に打ち出せることを知っているからですね。

GD 稲見プロのバーディラッシュは、この練習のたまものなんですね。

インパクトゾーンの
正しいヘッドの動きを染み込ませる

「このシートには、わずかなイン・トゥ・インのヘッド軌道とフェースの向きが描かれています。この線に沿ってヘッドを正確に動かせるかどうか、稲見プロはそれだけに集中して練習しています」(奥嶋)

稲見の極上パット2つのポイント

【Point 1】
右ひじに余裕を持たせる

「稲見プロは、右ひじを体に付けてストロークするクセがあるので、右ひじを体から離したほうがスムーズにストロークできるよ、とアドバイスしています」

Point 2
両ひじを水平に動かす

「稲見プロは、手首の角度を保って、腕で作る五角形を崩さずにストロークしています。そのためには、ひじを水平に動かすイメージを持つことです」

稲見萌寧のパッティングストローク

7勝のうち6勝はこのパター

「稲見プロの勝ち星は、このパター(テーラーメイド「トラスTB1」)のチカラも大きいと思います。方向が出しやすくて、インパクトのフェースのブレが小さい特性がピッタリだったようです」

後編はこちら

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月14日号より

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