「ふところが広くなり手の調整が不要に」渋野日向子の最新スウィング
米女子メジャー初戦「シェブロン選手権」で4位に入ると、ハワイで行われた「ロッテ選手権」で2位に入るなど、調子を上げてきた渋野日向子。進化したニュースウィングをプロコーチの吉田直樹が解説!
PHOTO/Blue Sky Photos、Tadashi Anezaki、Takahiro Masuda
シェブロン選手権4位タイ、ロッテ選手権2位と渋野日向子のエンジンが快調に回り始めてきた。渋野自身も「しっくりくるようになってきた」と語るニュースウィングについて、谷原秀人、小祝さくらなどを指導する吉田直樹コーチに聞いた。
「誰の目にも明らかなように、渋野選手のスウィングで大きく変わったのはトップです。まるでジョン・ラームのような、女子選手としては極めて浅いトップになりました」
吉田コーチはこう続ける。
「アドレスの重心位置をかかとからつま先寄りに変えて、ふところが広くなっています。これにより、インパクトで伸び上がらなくても手の通り道が確保されています。また、シャフトクロス気味(シャフトが目標より右を向く)だったトップをレイドオフ(シャフトが目標より左を向く)にすることで、手で調整しなくても下ろしたいヘッド軌道に乗せられるようになっています。おそらく渋野選手の感覚では、スウィングのことを考えずに、ただ振るだけで狙った方向に打ち出せるようになってきたのではないかと思います。右に飛び出す球をつかまえにいったり、左に引っかかる球を逃がしたりといった微調整を必要としないぶん、コース攻略に集中できますね」
もうひとつ、重要なポイントがあると吉田は言う。
「アメリカのコースは、日本と比較してフェアウェイの幅が広い傾向があります。フェアウェイに置きにいくショットが要求される日本よりも、渋野選手の飛距離を生かせる環境なんです」
新しいスウィングを手に入れたニューしぶこの快進撃はこれから。2019年の全英女子オープン以来の米女子ツアー2勝目に期待がかかる。
2022年の1Wスウィング
【アドレス】ふところが広い
重心がつま先寄りになり、ふところが広くなった。腰の回転でスウィングしやすく、手の浮きも抑えられる
【トップ】レイドオフで、浅い
シャフトがターゲットより左を向いた浅いトップ。フェースローテーションも小さく、プレーンに乗せやすい
【インパクト】腰を回して、ライ角どおりに打つ
手元の浮きが抑えられると、ライ角どおりにインパクトできるため、出球の方向が揃う。腰の回転も大きくなった
2020年の1Wスウィング
【アドレス】ふところは狭め
腰を低く沈めて、重心はかかと寄り。ふところが狭く、手の通り道がないため、伸び上がってインパクトしやすい
【トップ】ややシャフトクロス
シャフトがターゲットよりも右を向くため、切り返しから手で調整しなければスクエアにヒットしにくい
【インパクト】腰が伸びて、手元が浮いていた
手元が浮くと、フェースが右を向いて、球は右にすっぽ抜ける。それを嫌って手を返すと左にも飛んでしまう
直ドラも多用
ニュースウィングによって、インからのあおり打ちが軽減されたため、直ドラも使えるようになった
飛距離は10ヤードアップ! パーオン率はツアー7位
2022年 | 2020年 | |
ドライバー飛距離 | 266.70Y(44位) | 256.18Y(47位相当) |
フェアウェイキープ率 | 76.32%(39位) | 71.56%(89位相当) |
パーオン率 | 75.73%(7位) | 63.29%(105位相当) |
スウィング解説/吉田直樹
幼少期からアメリカで有名コーチの指導を受けた。谷原秀人、上井邦裕、小祝さくら、脇元華、石川明日香、高木萌衣のスウィングコーチを務める
週刊ゴルフダイジェスト2022年5月10・17日合併号より
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