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【世界基準を追いかけろ!】Vol.104「トップレベルで活躍するには生まれ持った身体能力の高さも必要」

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。先日のAbemaTVツアーでアマ優勝を果たした髙宮千聖くんは黒宮の教え子。今回は彼がプロの試合で勝てた理由について2人に話してもらった。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD 前回は、ここのところの学生ゴルフのレベルが確実に上がっているという話題でしたが。

目澤 最近は、大学生がアマチュアの大きな試合で勝ったり、プロの試合で優勝したりということに驚かなくなっていますよね。幹人が教えている福井工大の髙宮君(※1)がAbemaTVツアーで優勝しましたけど、そういう子が増えていますよね。

GD 黒宮コーチから見て、髙宮君の強さはどういうところにあると思いますか。

黒宮 髙宮はものすごく真面目で、練習も手を抜かずしっかりやりますよね。自分はコーチとして大学に行っていますが、大学生の髙宮を教えるのは2カ月に1度です。彼はそこに関係なく必ず毎月レッスンを受けに来ます。それだけモチベーションも高い。高校までは特筆するような成績を残してこなかったからこそ、うちの大学に来たんだと思うんですが、それが今の大学の良い環境に入って突然、覚醒した感じでしょうね。

GD 髙宮君のように、突然、覚醒をする子が持っている資質みたいなものはあるんですか。


黒宮 それが分かったらレッスンは簡単ですよね(笑)。でも、真面目で、身体能力が高くて、ある程度の危機感を持っている。この3つが大事ですよね。そこに信用できるコーチや、周りの環境がプラスアルファされた時に「覚醒」が促されるのではと思います。

GD 今、そういう資質を持った子は増えているわけですか。

黒宮 資質の問題でいうと、まず大事なのは身体能力ですね。これはかなり生まれ持ったものが大きく左右します。生まれ持った資質がない子の場合は、幼少期にいろんなスポーツをやっていて、早い段階でゴルフに来た子じゃないと難しいですね。

GD どうしてですか。

黒宮 身体能力が乏しい子が頑張ってトレーニングをしたとしても、その後、トップレベルに達するかといえば、それはかなり難しいと思います。

GD 今のゴルフ界には身体能力の高い子が入ってきているのですか。

黒宮 どうでしょう。でも女子の黄金世代などを見ていると、全般的に身体能力は高いですよね。黄金世代がツアーで活躍するようになって、平均飛距離も伸びていると思います。もちろんギアの進化などもあると思いますが。

GD 畑岡奈紗もオリンピック選手の中でも身体能力が高いほうだと聞きました。

黒宮 元々身体能力が高いうえに、小・中と陸上をやっていてその後、ゴルフに転向したという話はしていましたね。

GD 先日優勝した、河本力などはどうだったんですか。

目澤 力も運動神経は良いですし、小さい頃からいろんなスポーツをやっていましたね。

黒宮 石川遼も元々、陸上をやっていましたよね。

GD 生まれつき身体能力が高い子が、いろいろなスポーツ経験を経た後にゴルフに行き着いてくれるという流れを作れるかが、今後の課題になりそうですね。

(※1)2003年、熊本県生まれ。7歳で父の影響でゴルフを始める。アマチュア時代は北陸オープンでプロに混ざって2位という成績も。今年の7月22~23日のAbemaTVツアー『JAPAN PLAYERSCHAMPIONSHIP CHALLENGE in FUKUI』で、トータル14アンダーをマークし、2位のプロの嘉数光倫を1打差で退けて優勝。初日から首位の座を守り切り、ツアー史上6人目のアマチュアVを完全優勝で飾った

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに。2022年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。淺井咲希、宮田成華、岩崎亜久竜らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2022年9月27日号より