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【注目女子インタビュー】遅咲きプロ・岸部桃子「憧れの“桃子さん”と優勝争い。足りないものが見えてきた」

2022年も開幕から話題が尽きない女子ゴルフ界のなかで今季好調の選手2人に注目。好調を維持する理由、優勝へのカギなど、本人を直撃した。

INTERVIEWR/Yuji Yanagawa PHOTO/Tadashi Anezaki、Shinji Osawa、Hiroyuki Okazawa THANKS/ダイキンオーキッドレディス、富士フイルム・スタジオアリス、KKT杯バンテリンレディス

「リランキングを気にするよりシード獲得の覚悟が生まれた」

――開幕からおよそ2カ月が経過し、好調を維持しているのがプロ10年目の岸部桃子だ。ステップ・アップ・ツアーでは2016年と昨年に1勝ずつ挙げているとはいえ、レギュラーツアーでの実績は皆無に等しかった。ところが今季は「富士フイルム・スタジオアリス」で優勝争いを演じ、7試合を終えた時点ですでに年間獲得賞金は自身の最高額を更新。百花繚乱の女子ゴルフ界にあって、遅咲きの岸部は、初優勝も見据えてシーズンを戦っている。

GD 好調を持続していますね。

岸部 目の前の一試合一試合、一打一打に必死に集中しているだけですね。ただゴルフは落ち着いています。昨年まではひたすら予選通過を目指すだけで、予選通過できたら燃え尽きちゃうというか、停滞してしまっていた。最近は上位の成績を残すことを意識してやれています。

GD それはシード権獲得のレギュレーションが、メルセデス・ランキング上位50名という方式に変更になったことが大きいのでしょうか。現時点でメルセデス・ランキングは28位です。

岸部 予選通過するだけではポイントがなかなか増やせません。だからこそ、最終日もしっかり伸ばすことが大事です。それと3日間競技に比べ、4日間競技はポイントが1.5倍になります。休養を挟みながらスケジュールを組むうえでも必然的にメジャーを含む4日間競技を重要視することになりますよね。リランキングでカットされる心配もほぼなくなったので、今は来季のシード権を手にすることを目標にしています。

GD 2012年にプロテストに一発合格し、10年目の今季は初めてフルでシーズンを戦うことになります。やはり昨年5月のステップ・アップ・ツアー「ツインフィールズレディース」で優勝できたことが、この快進撃につながっているのでしょうか。

岸部 ステップで通算2勝目を挙げられたことがシンプルに自信になりました。継続して取り組んできたことがようやく実を結び、吹っ切れたようにゴルフがよくなっています。ファイナルQTを22位で通過して、開幕戦の「ダイキンオーキッド」にも初めて出場できましたし、18位タイだったことで「いけるかな」と思えた。ここまで時間はかかっちゃったんですけど、少しずつ自信を持てるようになってきました。

GD 今季開幕を前に取り組んだことはありますか。

岸部 オフの前に、コーチの横田英治プロと話し合ったんですけど、ドライバーの飛距離を求めつつ、精度は落としたくはなかった。スウィング改造はせず、トレーニングや素振りでヘッドスピードを上げて、結果、飛距離が伸びてくれたらいいなぐらいの取り組みをしてきました。私は飛ばし屋ではないので、どうしてもセカンドでショートUTを使うことが多くなります。6UTや5UTの精度を高めて武器にすることと、ウェッジの精度を高めることは意図的に取り組みました。

ショートUTの精度アップ

「セカンドはUTが多いんです。だから5UT、6UTの精度アップに取り組みました。今ではグリーンで止められるようになり、積極的にピンを狙っていけます」(岸部)

GD 今季はフェアウェイキープ率が4位です。パーセーブ率も22位ですが、一方でパーオン率が40位。セカンドの課題がスタッツでも浮き彫りとなっています。

岸部 私、昨季までグリーンを狙うショットがすごく下手だったんですよ。勝負できていなかった。そこは今季、これでも改善できていると思っています。もともとドローボールが持ち球だったんですけど、レギュラーツアーに出られた18年はグリーンにボールを止められなかった。それでフェードボールに変えて、今年に入ってようやくピンを攻めていけるようになりましたね。一番、私が成長した部分だと思います。

球筋をフェードに変えてピンが狙えるようになった

岸部はフェアウェイキープ率が高い(78.11%/4位)。そのおかげでUTでもイメージ通りに球筋をコントロールできているのだ。ドローからフェードに変えたことでグリーンでもしっかり止められるようになった

GD ほかに気になるスタッツはありますか。

岸部 パー5の平均スコアですね(4.86/56位)。今年はパー5でバーディを取れていません。レギュラーツアーだと、確実に伸ばせるところで伸ばさないと上位では戦えません。もともとパターは得意なので、100Y以内の3打目の精度を高めたいです。

GD 「スタジオアリス」ではイーグルも取っていますよね。

岸部 初日の1番でした。私の飛距離だと2オンすることはなかなかないので「えっ、乗ったの?」みたいな(笑)。あのイーグルで波に乗れたと思います。

GD 初めてインタビューしたのは福島県立富岡高校(現在は休校)の3年生だった2011年でした。東日本大震災による原発事故の影響で、富岡高校には通えなくなり、ゴルフを続けることもままならない状況でした。あの日、憧れのプロとして上田桃子プロの名前を挙げていましたが、11年後の「スタジオアリス」で、優勝を争った相手が上田プロでしたね。

岸部 感慨深かったですね。実は高校3年生のときに、NEC軽井沢72に推薦してもらって、予選ラウンドを同じ組にしてもらった。そのときの私はショットがチーピンしか出なくて(笑)。ラウンド後、「アプローチとパターはすごくいいから、とりあえずご飯を食べなさい」と励まされたことを覚えています。当時はひょろひょろでしたから……。今年、上田プロと同じ上位で戦えたことで、当時を思い出しました。

妹との初タッグで上田桃子さんと優勝争いができた

富士フイルム・スタジオアリス2日目。スコアボードには3位で並ぶ上田桃子、岸部桃子の名があった。「妹(華子)と今季初タッグで桃子さんと優勝争い。一緒に戦えてうれしかった」

GD 確かに高校生の頃はかなり細身でしたが、今もプロの中では……。

岸部 これでもプロテストから12kgぐらい増えているんです(笑)。体重を増やすのは、めっちゃしんどかったです。ひたすら食べて、寝る前には体重を増やすプロテインを飲んで。

GD 長いシーズンを戦ううえで、終盤に入ると体重減に悩むプロも多いです。その点は注意が必要ですね。

岸部 ゴルフというスポーツは時間が変則的ですから、ラウンド中の軽食はもちろん、食べられるときに食べることを徹底しています。

GD 高校卒業のタイミングでプロテストに合格し、1年目から活躍・勝利を重ねていく女子プロが多いなかで、苦しい時期を経て28歳の今、ようやくレギュラーツアーを戦えています。後輩のゴルファーが続々と世界にも飛躍していくなかで、焦りはありませんでしたか。

岸部 それは意外になかったですね。人それぞれ、人生を歩むペースは違うし、私は私で、コツコツやっていくしかないな、と。

GD 好調を持続してきて、初優勝も視界に入ってきたのでは。

岸部 「スタジオアリス」で最終日最終組を経験して、優勝するには足りないものがあることがわかった。レギュラーツアーで、しかも最終日となると、ピンポジションは難しくなります。それに対するショット力は、まだまだ必要だと思います。私はどちらかというと、ガンガン攻めるタイプというより、慎重派でセーフティに攻めていくタイプ。だけど、もう少しリスクを顧みずピンを狙うショットが勝負所では大事になってくると思いました。今のペースを崩さず、チャンスが巡ってきたら流れをつかみたいです。プロテストに合格した直後から、試合で結果を残せていない時期も応援してくださっている方々に早く恩返ししたいですから。

週刊ゴルフダイジェスト2022年5月24日号より

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