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【マスターズ】「あと“1ピース”何かが足りなかった」松山英樹の4日間をレポート

86回目のマスターズが終わり、ディフェンディングチャンピオンの松山英樹は14位タイでフィニッシュ。首のケガで出場すら危ぶまれた状態から2日目には2位タイにつけるなど最後まで粘りを見せたが、あと一歩及ばなかった。その4日間の戦いを振り返る。

PHOTO/Blue Sky Photos

3日目の試合後、松山は練習場でひとしきり球を打った。バックスウィングでクラブの上がる位置をチェックし、球を打っては「違う、こうじゃない」と、スウィング動画を見直す。結局、日が暮れるまで練習は続いた

「痛みなく72ホールできたのは良かった。
トレーナーに感謝したい」(松山)

松山英樹は予選ラウンドを終えた時点で、トップと5打差の2位タイといい位置にいた。だが、3日目に5オーバーと、思うようにスコアを伸ばすことができず失速。この時点で“連覇”の2文字は遠のいてしまった。その日のホールアウト後、松山は記者団の質問をひとしきり受けた後、足早に練習場に向かい、ひとり黙々と球を打った。

「あと何かがひとつ、ふたつ足りない」

マスターズウィークの一週間、松山はチームのスタッフにそう漏らしていたという。思えば昨年のマスターズは、その“スウィングの何か”を開幕直前につかんで、優勝を手繰り寄せた。今年はその足りないピースが見つからないまま、実戦を迎えることになってしまった。“見つからないまま”というよりは、首のケガによって“見つけるまで練習する時間がなかった”というのが、正しいところかもしれない。

2日目の13番でクリークに入れたシーンや、3日目の7番の2打目でカットボールを打ち切れなかったシーンなど、“松山らしくないプレー”がいくつもあった。あと一筋、あと1、2ヤード違っていれば、というシーンが幾度もあり、その精度の差が最終的な結果として表れたように思う。アプローチで何とかしのいでいたものの、“優勝争い”という状況まで持っていくことはできなかった。

「(スウィングが)いい状態ではないので、何かきっかけがあればなと思って4日間やったんですけど、見つからずに終わりました」  

最終日を終えたあと、そうコメントした松山。この大会に並々ならぬ思いで挑んだ松山にとっては、本調子で臨めなかったことが、非常に口惜しかったことだろう。

ただ、4週間も試合を休んだあとの久しぶりの試合、そして出場も危ぶまれたなかでの14位タイというのは、十分健闘したと思う。しかもケガがいつ再発するかもしれないという不安を抱えての戦いだった。

「痛みなく72ホールできたなと思いますし、そこはトレーナーに感謝したいと思います」と松山は語っていた。

それにしてもこの一週間、松山は昨年のチャンピオンとしてパトロンから温かい声援で迎え入れられていた。チャンピオンズディナーでも、そうそうたるメンバーをホストとしてもてなし、料理の内容も英語のスピーチも称賛を浴びていた。

なかでもパトロンを魅了したのはアプローチの技術だった。マウンドにワンクッションさせたり、グリーンの傾斜を読み切って転がしていったり、時に風さえも使ってピンチになりそうな場面を何度となくパーに収め、その都度、目の肥えたパトロンたちを沸かせていた。圧巻は3日目の17番のグリーン右奥からのアプローチ。アゲンストの風にぶつけるように球を浮かせて、落ちてからの傾斜の転がりも完璧に読み切り、見事にパーを拾った。まさにチャンピオンにふさわしい一打。

また来年、この舞台で松山がリベンジを果たしてくれることを期待したい。

3日目の17番、グリーン奥からのアプローチ。あわやカップインのスーパーショットで、パトロンを沸かせた

18番グリーンでは毎日パトロンたちから拍手を浴びていた

多くのパトロンが待ち受ける最終ホールでは、前年王者を称える惜しみない拍手で出迎えられていた

ケガなく戦えたが、ショットの調子は戻らなかった

4日間、痛みこそ感じなかったというが、「足りない」と感じていた「何か」を最後までつかめずに終わった

週刊ゴルフダイジェスト2022年4月26日号より

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