【山を動かす】渋野・古江の米挑戦、若手の台頭、放映権問題…2022年「女子ツアー」に期待することとは?
ゴルフにまつわるさまざまな問題に関し、読者や識者に率直な意見をぶつけてもらう連載「山を動かす」。今回のテーマは来季の女子ツアーについて。2021年も女子ツアーは大盛況。最後までドキドキハラハラの賞金女王争い、東京五輪での稲見萌寧の銀メダル、米女子ツアーでも畑岡が2勝、古江彩佳と渋野日向子がQTを突破するなど、話題に事欠かない。2022年、あなたの考える“見どころ”とは?
●JLPGAは約5年かけて勝ち取ったネット配信の放映権を地上波にも広げてほしい。幸い有力なスポンサーであるアース・モンダミン、ニトリが後押ししてくれているのはありがたいことでしょう。スポンサー企業はCM料をテレビ局に払い、テレビ局は放映権料をLPGAに払い、LPGAは大会を充実させ、サービスし、スポンサーに喜んでもらう。これこそ地上波を放映するための健全な姿。これを確立するための努力を期待します。あとは苦言。なぜプロテスト合格選手を20位までと限定したのでしょう。企業では人材を幅広く求めるのが常道です。プロスポーツで人材をリミットしてどうするの! 来年から古江としぶこが抜けるというのに、下から突き上げてくる層を薄くしたら将来が危うい。一方、米女子ツアーはまだ繁栄します。試合数もふくらみ、賞金増がすごい。5大メジャーの合計賞金額90億円ですよ。一時期、韓国籍の選手ばかりで人気が落ち込んだこともありましたが、現在はワールドツアーの様相。参戦する古江は現地では“宮里藍的な存在”と見られています。QTに出た全選手でセカンドオナー(一番飛ばない)なのに、グリーンでは一番最後に打つ(笑)。驚異の目で見られています。ですから、私は古江に注目、メジャーでは爆発力のあるしぶこに期待します。(タケ小山/テレビ解説者)
●これから世界のゴルフツアーはジェンダー問題の解決に向かうのではないでしょうか。具体的にはミックスダブルスなどの試合を公式ツアーに組み入れることです。これまでも男女混合の試合はありましたが、やはり“お遊び”の感がありました。これを賞金ランクに加算するなど、公式の試合にする方向へ進んでいくと思います。これまでは男・女は実力、人気共に隔たりがあり、同じ土俵では戦えないというのが常識でしたが、差はだいぶ縮まっていると感じます。先日、米国のコンビによる対抗戦「QBEシュートアウト」でバッバ・ワトソンと女子のレキシー・トンプソンのコンビや日本の「3ツアーズ」での西郷真央、稲見萌寧コンビなどを見てそう思いました。女性に特化した用品用具の進歩、コーチング、筋トレなどの成果ではないでしょうか。私は、公式の男女混合試合を期待します。(佐渡充高/テレビ解説者)
●リコーカップで女子ツアーが終わったとき「ああ、終わっちゃった」と寂しく思った。開幕戦が今から楽しみ。もうプロ野球でもこんなふうに思わなくなったのに、女子ツアーはすごい!(40代男性・神奈川県)
●国内女子ツアーは大好きですが、配信のみになったら見るかどうかはわかりません。米女子も渋野や古江の活躍が楽しみですが、じゃあWOWWOWに加入するかといえば微妙です。いかんせん有料チャンネルになじみのない世代なので……。(60代男性・千葉県)
●これまでは、女子の海外メジャーといえば韓国人選手が勝つのが当たり前でしたが、今は日本人選手が勝っても驚きません。これからの海外女子は、日・米・韓にタイと欧州という争いになってくるでしょう。日本選手だけではありませんが、女子プロはみんなスウィングがいい。パワーだけじゃなくて、男子よりスウィングがシンプルで効率的。パワーはクラブ選択で補えるようになるので、そういう意味で特別に飛ばなくても勝てる。実際、稲見も古江も飛ぶほうではないですよね。スター選手がたくさんいるなかで、1つ自信が持てるようになれば、海外でも活躍できるはず。渋野日向子はスウィングがどうのというより“ゴルフ力”が高い選手だと思います。笹生優花のスウィングは本当に別格という感じで、またメジャーで勝つ可能性は十分。英語ができるという強みもありますからね。これからも日本人選手の世界での快進撃は続くと思います。(江連忠/プロゴルファー)
●日本の女子ツアーは高レベルなうえシードが賞金50位と厳しい世界。気が抜けないことで意識レベルも上がるという好循環が起きています。稲見は男子プロのようなフェードボールを打っていますが、これはシャフトの進化など用具の恩恵を受けているから。もちろんよく練習するからその恩恵が受けられるんですけどね。女子ツアーのセッティングは基本的にさほどシビアでないので、安定したボールを打てる者と、そうではない者との差がよりはっきり出ます。そういう選手のプレーを見ていれば、トレーニングも練習も頑張るから、またレベルが上がる。米ツアーでいうと、畑岡奈紗のスウィング、いいですね。男子と同じで、下半身がしっかりしている。下半身を抑えて、上体をうまく使うスウィングなので、クラブを100%で振らないですむというのがいい点。古江や渋野も日本のシビアな競技で結果を出してアメリカに挑むのですから、環境に慣れれば期待できます。男子の場合、周りに誰かいないとダメみたいなところがありますが、女性はすぐに慣れるんじゃないでしょうか。畑岡が引っ張ってくれれば古江も小さい体で頑張ってくれると思います(水巻善典/プロゴルファー)
●五輪で銀メダルの稲見、全米オープン優勝の笹生、全英女子オープン優勝の渋野。みんな世界で戦える選手。そういうなかで勝負師として自覚を持っている選手が勝てると思います。若手を見ても変なスウィングをしている選手はほとんどいません。底が上がっているだけに、ちょっと調子が悪いだけで優勝争いから脱落してしまうシビアな状況ですから、日本から米ツアーに参戦する選手たちは技術レベルは十分。問題はゴルフ以外の部分、例えばオフの過ごし方などがどうなのかな、というのはあります。それがうまくいけば、日本と同じような成績が残せるでしょう。あとは芝です。アメリカは土地によって、コースによって芝の種類が違います。聞くところによれば、タイガーは会場の芝の種類によってウェッジを微妙に替えているそうです。最初の1年はそうした芝質に慣れるようにするといいのでは。(冨永浩/テレビ解説者)
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