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【浦ゼミナール】Vol.18 “タメを作る”なんてありえない!

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroaki Arihara
THANKS/√dゴルフアカデミー

身長171㎝で420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、飛ばしのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。第18回は、飛ばすうえで大事とされる「タメ」についての誤解を教えてくれた

前回のお話はこちら

タメるではなく
タマることが大事

――前回、シャフトのしならせ方についてお話を伺いました。「切り返しでシャフトに負荷をかける」ということでしたが、これっていわゆる切り返しで「タメ」を作るということですか?

浦 うーん、同じといえば同じですが、全然違うといえば違う。

切り返しの「タメ」とはまさにシャフトに負荷をかける動きなんですが、多分、みなさんがイメージしているものとは違うと思うんです。

―――どういう意味でしょう?

浦 切り返しやダウンスウィングで「タメを作る」ことを目的とした動きは実はタメの生じない動きで、本来は正しく「タマった」ときにシャフトがしっかりしなるんです。プロゴルファーの連続写真などを見ると、切り返しで腕とクラブの角度がギュッと深まりますよね。一般的にはあの状態を指して「タメができている」と言うわけですが、あれはシャフトにしっかり負荷をかける動作を行った結果、手首の柔軟性が高い人がああなるだけで、プレーヤーは意識的にあの形を作ろうとなんてしていません。自分で形を作ろうとすると、手首や腕をゆるめたりすることになるので、シャフトに負荷がかからないんです。

――意識的に作ってはいけない?

浦 はい。形を作ろうとすればするほど本質から遠ざかる動きなんです。セルヒオ・ガルシアなどはすごく深いタメを「作って」いますが、実はあれはエネルギーをタメて飛ばそうとしているのではなく、逆にシャフトにかかる負荷を減らして、曲げずに運ぶように打ちたいから、タマらないようにスウィングしているんです。アマチュアが真似をしたら、どんどん飛ばなくなりますよ。

――そうなんですか!?

浦 逆にフィル・ミケルソンなどはうまくシャフトに負荷をかけているなと思います。まあパッと見では違いがわかりにくいですよね。イメージの話ですが、切り返しでシャフトに負荷をかけてしならせ、ちゃんとタマっている動きというのは、弓を引き絞るような感じ。体を締めて道具をホールドし、道具に負荷をかけた結果、弦を持つ右手が後方に動いています。右手を大きく引けている人は、タメが大きい人。でも自分でタメを作ろうとする動きというのは、右手を大きく引こうとするあまり弓全体を後ろに引っぱっているようなものなんです。前者は弦を持った右手を動かすことよりも弓全体をホールドしたりテンションをかける意識の動き。弦を引っぱる右手を大きく動かす=形でタメを作ろうとすると、後者のような動きになってしまうんです。

タメようとするとシャフトはしならない

形の上で「タメ」を作ろうとするとシャフトに負荷がかからずエネルギーロス。弓全体を引いている動きに等しい。体を締めてクラブをホールドし、シャフトに負荷をかけることで弓を引き絞るようにエネルギーがタマる

腕や手首をしならせずにシャフトをしならせるのがタメる動きの本質。腕や手首をしならせてタメようとするとシャフトはしならない

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ガラスの壁を横から叩き割るイメージが必要です

――では、結果として「タマる」いいスウィングって、どんな動きなんでしょう?

浦 タメに関しては、前回お話ししたように、シャフトにちゃんと負荷をかけることが大事。これがきちんとできれば、切り返しで腕とクラブの角度が深くなり、必要十分なタメは生じます。外から見たときの角度の大小は、手首の柔軟性やスウィングのスピードなどの結果ですので、気にする必要はありません。あえて言うなら、バックスウィングのスピードを速くして、そのエネルギーを右手の親指と人差し指でしっかり押し返すこと。そしてシャフトがしなる瞬間に、強い腹直筋で体を止めることができれば、「間」ができてタメは大きくなるはずです。それより意識してほしいのはリリースですね。ダウンスウィングでちゃんとリリースできないとインパクトで大きな力は出せません。

――リリースですか?

浦 本当の意味でのリリース動作は、正しくスウィングできたうえで、そこにさらにエネルギーを乗っけるための「おまけ」なんですが、いわゆる「振り遅れ」的な動作の多いアマチュアは、インパクトまでにヘッドをちゃんと「戻す」ことのほうが大事。そのためには、ダウンスウィングのなるべく早い段階でリリースする意識があったほうがいいでしょう。

――アーリーリリースって悪い動作じゃないんですか?

浦 何をもってアーリーなのか。そりゃあ、ダウンスウィングでリリースをギリギリまで遅らせて一気に解放したほうがエネルギーは大きくなります。でも瞬間的なダウンスウィングのなかで「ギリギリまでタメて一気に解放」なんて、ゴリラ並みのパワーがなきゃ間に合いません。

――ゴリラですか(笑)。

浦 ええ。握力が500㎏くらいあって、目の前で撃たれた銃弾をよけられるくらいの瞬発力がなきゃ無理ですね(笑)。だから切り返してダウンスウィングに入ったら、すぐにヘッドを遠くに放り出して、大きな円弧でボールにぶつけていく感覚が大事。フルスウィングのなかでタメようなんて考えていたら絶対に間に合わないから、もう急いでヘッドを戻してくる必要があるんです。ゴルフのインパクトって、ボール位置に立ててあるガラスの板をトンカチで思い切り叩き割る動作と同じなんです。メッチャ硬い強化ガラスを叩き割ろうと思ったら、トンカチを思い切り強く握って大振りで横からガッツーンとやるでしょう? タメを作ってスナップでスパーンじゃない。もちろんスナップは使っていますが、なるべく大きな円弧でヘッドの助走をどれだけ取れるかのほうが大事なんです。

――たしかに、強化ガラスや鉄板を叩き割ろうと思ったら、すごい「衝撃」がある。だからグリップを強く握って、体も締めておかないといけない。いつも浦さんが言っていることですね。

浦 そうです。飛ばしを考えるときはこのイメージはとても大事です。ガラスの板をできるだけ強く叩くのに必要なことは何か。タメたら強く叩けるんですか? 左右どっちの手でトンカチを持ったほうが強く叩けますか? ゆるく握って硬いガラスは割れますか? そういうこと。

インサイド・アウトがいいとか、アウトサイド・インはダメだとか言う前に、真横から真っすぐぶっ叩くのがいちばん効率がいいのは誰でもわかります。そこを忘れちゃいけないんです。

切り返したらすぐにヘッドを遠回りさせる

切り返しでクラブを右上方向に押し返したら、ヘッドを遠回りさせるように、大きな円弧でボールを横からぶっ叩こう。手元やクラブをボールに直線的に動かすと振り遅れる

浦大輔
うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰

月刊ゴルフダイジェスト2021年7月号より