【クラブ駆け込み寺】Vol.13「ドライバーのシャフト選びは飛距離より“打ちたい弾道”を重視しよう」
“頑固オヤジ”が勇退し、あとを継いだのが練習場で小さな工房を営む通称“アニキ”。今回は「ドライバーに合うシャフトの選び方がわからない」という相談が寄せられた。
ILLUST/Kochi Hajime
Q. ドライバーに合うシャフトの判断基準は?
ドライバーに合うシャフトをどう選べばいいか、よくわかりません。新しいモデルを試すのに、重量やフレックスの判断基準をどこに置けばいいのか、悩んでいます。
体力だけでは決められない
約1年続いたこの連載、今回が最終回になります。“頑固オヤジ”さんから引き継いで、クラブチューンのあれこれを述べてきましたが、何かしら改善のヒントになりましたでしょうか。
担当さんから最後のテーマとして、シャフト選びのコツを教えてほしいとのこと。以前“頑固オヤジ”さんにも尋ねたそうですが、相談者の振り方を見ないと答えられないということで断られたそう。
個別対応しかできないのは事実ですが、相談者にはまずクラブの性能を選ぶ基本のスタンス、姿勢について考えてほしいと思っています。
「一般的にはヘッドスピードに応じたフレックス、振り切れる範囲で重めのもの、方向性重視ならトルクの小さいもの、と言われていますが、実際メーカーごとにフレックスも重量の基準もバラバラ。自分で選ぶどころか、専門のチューナーにもどう相談していいかわからない、というのが本音なんですよ」
担当さん、最後だからか、ぶっちゃけていますね(笑)。
「シャフトは、カタログ記載の機能やスペックを眺めても選べません。ヘッドと組んでの挙動が大事ですが、その挙動も個人の振り方で変わります。だから、ヘッドスピードが速くてもフレックスXよりS、筋骨隆々でも50g台より軽いほうがピッタリとマッチングしたりします」
「そうなんですよ。だから迷いが尽きないというか……」
「それは、スペック探しのスタート地点が間違っているんですよ。まず、自分がどんな球筋を打ちたいか。それにはどんな打ち方、振り方をしたいのか。その要望に“付いてこられるスペック”を見つける、という姿勢が絶対に必要なんです」
シャフト選びをドライバーから考えると難しいのは、飛距離アップ最優先でスタートしてしまうから。“こう打ちたい”が抜けるんです。
“しなり戻り”とどう付き合うか
飛距離アップを考えず、純粋に打ちたい弾道イメージから入ると、判断のポイントは“つかまり具合”に集中するはずです。
“つかまり具合”は弾道の高さ、左右の曲がり幅が目安になります。打ち出し方向はクラブのスペックよりも、振り方で決まる要素が大きいと思います。
「つかまったフェードとか、すっぽ抜けないドローとか、プロや上級者がよく言うニュアンスのことですか?」
「そうです。飛球線の外側に逸れる弾道なのに、つかまる要素が入るのは、振り方よりもヘッドの挙動による要素が大きいと思います。ヘッド自体の重心や慣性モーメントの設計と、シャフトの挙動の組み合わせが大切になります」
「すると、ヘッドが替わればシャフトも替えるべき?」
「そうです。お気に入りのシャフトに固執する上級者もいますが、その成功体験から新しいヘッドを吟味しても、以前のヘッド以上のパフォーマンスは得られないでしょう。ちなみに、アイアンはヘッドスペックに大きな違いが生じにくいので、プロでも同じシャフトを使い続けるパターンが多くなりがちです」
逆に言えば、アイアンのほうがシャフトの違いがわかりやすいとも言えます。
「同じヘッドで高さが出やすくなる、つかまり具合が変わるというのをより実感しやすいはずです」
「ちなみに、シャフトの違いを感じ取るポイントはどこにありますか。自分のスウィングとの相性を判断する、という点で」
「“しなり戻り”をどう感じるか、ですね。切り返し以降でどう“しなり戻り”を感じて、それが実際にどう“つかまり具合”とつながって感じられるか。このイメージが湧かないようなら、トルクなりフレックスなりが硬すぎる、または調子が合っていない。振り心地の良さを探すのがシャフト選びの正解です」
月刊ゴルフダイジェスト2024年12月号より