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【笑顔のレシピ】Vol.129 練習が「おふざけ」になってしまう原因は、教える側にあるのかも?

メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!

TEXT/SHOTANOW

前回のお話はこちら

僕がプレーヤー時代にドップリつかってきた“昭和的スポ魂精神”では、練習中に白い歯を見せるのはもってのほかでした。楽しむなんていう考えは毛頭なく、辛いことを積み重ねた選手こそが強くなると教わってきました。

きっと同年代かそれ以上の年齢でスポーツをやられていた方は、同じような感じだったのではないでしょうか。

僕は今、レッスンのスタートとして、まずゴルフを楽しんでもらいたいと思っています。楽しいと思わなければ、上手くなりたいと思わないし、練習の熱量も上がってこないからです。イヤイヤやらされているものは、どんなスポーツでも勉強でも上達が早まることはありません。


これを重視したときぶち当たるのが「おふざけの壁」です。レッスンを始めたての子や年齢が低い子は、1つの練習をずっと続けることができずふざけ始めてしまいます。本人は楽しそうにしているけれど、指導者や親御さんが求めるのは「真剣に取り組んだ先の達成感や満足感」という楽しみ。

ただ、その溝を埋めようとして「ふざけるのと楽しむのは別だ」と諭しても、子どもには伝わらないでしょう。短時間の練習に飽きてしまうような子に、その違いを分からせるのは無理があります。

僕は、ふざけていても別にいいと思います。もちろん、真剣に取り組みつつ本人が楽しんでいるというのがベストです。むしろおふざけからその状態に持っていくのが、コーチの腕の見せどころ。ふざけてしまうのは、やっている練習がつまらないということ。それは内容の問題かもしれないし、取り組む時間や量の問題かもしれません。

もし練習でふざけてしまう選手がいたら、一方的にあるべき姿を押し付けるのではなく、取り組んでいる練習内容はその子に合ったものか、もう一度考えてみてほしいと思います。楽しさの手前にある「おふざけの壁」を作っているのは、案外コーチの側かもしれませんから。

楽しいことこそ上達への近道。これは大人ゴルファーでも同じです(PHOTO/Hiroaki Arihara)

青木翔

あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている

週刊ゴルフダイジェスト2022年6月28日号より

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