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【ネリー・コルダ 強さの秘密】<後編>「スウィングは常に完璧でなくていい。ミスしたらリカバリーすればいいのだから」

6月4日から行われた全米女子オープンを初制覇し、これで今季ここまで、優勝4回、2位3回と“超絶好調”のネリー・コルダ(27)。2025年シーズンは未勝利に終わったネリー躍進のキーはトレーニングなのか。前編に続き、彼女の強さの秘密を現地取材を交えてお届けしよう。

PHOTO/Shizuka Minami

【Nelly Korda】国籍:アメリカ。1998年生まれ。圧倒的な強さで世界ランキング1位に君臨し、2021年の東京五輪では金メダルを獲得。メジャー大会は、2021年全米女子プロ、2024、2026年シェブロン選手権、2026年全米女子オープンで優勝するなど現代の女子ゴルフ界を牽引する存在。父のペトルはテニスの元全豪王者、姉のジェシカもプロゴルファーというスポーツ名門一家

>>前編はこちら

ネリーのトレーニングは真似るな、危険!?

ネリーはたびたび自身のインスタグラムにトレーニングの様子をアップしているが、バーベルを持って行う臀部のトレーニング「ヒップスラスト」、バーベルを持ち上げ背筋などを鍛える「バーベルデッドリフト」など、強度も難易度も高いものばかり。そのなかでも、地面から跳び上がり高さのある箱や台の上に着地する「ボックスジャンプ」は“超高度”と話題になった。


瞬発力と爆発的なパワーを高めるのが目的とされる運動で、まるでネリーのゴルフの象徴的な部分を担っているような運動だが、そもそもそのボックスの高さが段違い。「今のところ36インチ(約91センチ)が自己ベストだけど、トレーナーは40インチ(約101センチ)も跳べるよう指導してくれています」(ネリー)。

ボックスジャンプは踏み込んでから飛ぶため、単純に垂直跳びとは比較できないが、NBA(米プロバスケットボール)の選手の垂直跳びの平均は72〜87センチ、PGAツアー選手は51〜56センチとされている。この数字と比べるだけでネリーのフィジカルの強さがうかがえるだろう。これは、努力で得たものでもあるが、持って生まれた強さでもある。

恒例のシェブロン選手権での“池飛び込み”。高飛び込みの選手のようなネリー。同選手権3日目は西郷真央と同組(左写真)。西郷いわく「ネリーは別次元のゴルフをしている」

前述の通り、姉はツアー6勝のプロゴルファー、弟はツアー4勝のプロテニスプレーヤー。そして、特に有名なのが父のペトルさんで、彼は元プロテニスプレーヤーで1996年の全豪オープンでステファン・エドベリとペアを組み優勝、1998年には同じく全豪オープンでシングルス優勝を果たしたトップ選手だった。ちなみに身長は190センチ。母のレジナも父と同様に元テニスプレーヤーだ。

つまりネリーはフィジカルエリート中のエリートで、しかも10代から体づくりをサポートする一流の専門家がサポートする環境にあった。そんな彼女が血のにじむようなトレーニングを欠かさないのだから鬼に金棒。ただ、このハードトレーニングがフィットするのは「ネリーだからこそ」と言うトレーナーは多い。生まれながらのフィジカルエリートが10年かけて作ってきた体に「私もなりたい」と思っても、なれないどころかケガのもと。つまり「真似るな危険!」。ネリーのフィジカルは今やそれほどのレベルだ。

トップアスリートのフィジカルと両輪を成すのはメンタルだ。ネリーの場合、家族やスタッフのほか、昨年婚約したケーシー・ガンダーソンさんの存在も大きい。彼はエンジニア会社のバイスプレジデントで、ネリーとは高校時代からの友人。自身もカレッジフットボールの選手だったこともあり、ネリーのアスリートとしてのキャリアを尊重し、サポートしてくれているという。「2人の関係で何が素晴らしいって、2人でいるとき私は“ただのネリー”としていられるということ。“プロゴルファーのネリー”じゃなくていいの。私は本当に運がいいと思う」。

もちろん、幼少期からずっと支えてくれた両親にも感謝しているという。ネリーが「ゴルフで『もうイヤ』という状況に陥ったとき、父は『ゴルフをすればいいんだよ。ボールを捜してまた打って、またボールを捜して打てばいい』とサラッと言うの。それで私も『世界の終わりってわけでもないし、なんとかなる』と思えるようになってきました」。

そして今季。選手として、人間としての“成熟度”について尋ねると、ネリーは「これまで、特に去年はあらゆることを過剰に分析し、考え過ぎで身動きがとれなくなっていました。ときに“手放す”ことがいかに大事か……。スウィングは常に完璧でなくていい。ミスをしてもリカバリーできることもわかっている。大事なのは精神的にフレッシュな状態をキープして、自由にプレーすることです」。

この境地に至ったネリーを今季止められる選手がいるだろうか。

アスリート一家だからこそ共有できる悩みや喜びがある

シェブロン選手権優勝時に勢ぞろいした“コルダファミリー”。中心でカップを持つネリーの右隣が婚約者のケーシーさん、その隣に父ペトル。ネリーの左隣は姉のジェシカとその息子のグレイソン、その隣は母のレジナ。

週刊ゴルフダイジェスト2026年6月30日号より