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【笑顔のレシピ】Vol.128「できた」と「身についた」は似て非なるもの

メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!

TEXT/SHOTANOW

前回のお話はこちら

僕は考えや取り組む姿勢の大切さに重きをおいて選手と接していますが、今日は技術の話をしたいと思います。

ゴルフの上達というのは、いわば技術の積み重ね。10ヤードのアプローチが身についたら、次は30ヤード、次は50ヤードというようにステップアップをしていきます。ちょっと話を単純化しましたが、これはジュニアでもプロでも同じことです。

では、身についたとはどういう状態か。それは試合で、無意識的に打てるレベル。当然、練習より本番のほうが思い通りのパフォーマンスは出にくいので、練習では「選手が僕と何気ない会話をしながら打てる」くらいになっていないといけません。


そのレベルになると、なぜできるようになったかと聞いても、「毎日やってるんでフツーにできますよ」なんて答えが返ってきます。つまり、強く意識せずとも体やクラブが思い通りに動くという状態。皆さん、箸をなぜ上手に動かせるのか質問されても「そりゃフツーにできるでしょ」と答えますよね。これが、技術が身についている状態です。

この「できない」と「身につく」の間には、「できた」という状態があります。こいつが厄介。今まで10回打って10回できなかったことが、6回くらい成功するようになると、人はその技術が身についたと勘違いしてしまいます。でも、それはまだ本番では使いものになりません。

コーチとして大切なのは、できてはいるけどまだ身についてはいないと伝えてあげること。具体的には6回の成功を9回、10回に引き上げる練習だったり、あえてプレッシャーをかけて同じことができるのかチャレンジさせたりします。

アマチュアの方からも「練習場でできたのに、コースでできない」とよく相談を受けますが、それはまだ練習場での成功率が低いから。1つのことができたと思ったら次に移るのではなく、箸を動かすくらい自然にできるまで成功率を上げるように練習すると、スコアに直結するような技術が身についてきます。

無意識にできるレベルまでいってはじめて「身についた」といえるのです(PHOTO/Hiroyuki Okazawa)

青木翔

あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている

週刊ゴルフダイジェスト2022年6月21日号より

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