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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.49 “一歩引く”ゴルフで二歩前へ

PHOTO/Norimoto Asada

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

前回のお話はこちら

いまシニアツアーでは、距離計測器が使えるようになっておって、僕もコースの端のほうに打ってしまったときは、確認のために計測することがあります。

たとえば機械で測って145ヤードと出て、それに上りとか下りを入れて考えるのはええとして、145ヤードという数字に縛られてゴルフをやってしまうことだけはせんようにしたいと思っておるんです。

機械が出した数字に頼って番手を選んでゴルフやっておったら、ただ打つだけのゴルフになってしまいます。それやったら、ゴルフコースでプレーする意味がありません。

番手は機械の数字を見て選んだとしても、やっぱり打つときには「こんな感じの球やろうな」という感覚でいきたいですよ。せやないと、ゴルフの感覚が薄れてしまうと思うんです。


数字に支配されると力みが出ます

「コースの見た目で力んでしまうのはええですけど、数字にやられてしまうゴルフは面白おもろないです」

パー5のセカンドで、グリーンまで235ヤードでちょっと上っておるから245ヤードと考えたとします。それでスプーンを持ってキャリーで240ヤードいかなあかんと考えたら、それはやっぱり、ちょっと力みが入ります。これは、コースの見た目、つまり視覚ではのうて、数字にやられて力んでまうわけです。

スプーンで240ヤードを打とうとすると、インパクトで相当強く打たなあかんのですけど、そう思った途端に、テークバックからグワーッと力が入りまくります。そんな力みが入ったテークバックをしておったら、そら打点も狂います。

僕らプロでもそうなるわけですから、アマチュアの人なら、僕らの10倍はそうなっとるのと違いますか。繊細にクラブを上げるから、アドレスと同じところに戻ってくるわけです。

「こんな球をあそこに打ったら、あそこから、こう転がっていくだろうな」と数字ではなく、コースのことを考えて、打つほうがええですよ。できたらインパクトのことは忘れて、軽くポーンといきたいですね。

そうやって一歩引くゴルフを覚えられたら、逆に二歩前にいけるはずです。試しに「今日は、ドライバーの飛距離を10ヤードぐらい落としてティーショットを打とう」と考えてプレーしてみてください。もしかすると、いつもと一味違うゴルフができるかもしれません。

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月28日号より