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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.48 “もつれ”のないストローク

PHOTO/Hiroaki Arihara

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

前回のお話はこちら

15年ぶりに手嶋(多一)とまわりました。相変わらずのフック打ちやったけど、クラブのことをよう研究しておるからか、レギュラーのときとスウィングは変わっておらんのに、むかしより飛距離は出ておりました。

一昨年、開幕戦の金秀シニアでシニアデビューしていきなり優勝はさすがです。今回一緒にまわったときも、パターの決め打ちは鬼のように健在やったですね。

ストロークに“もつれ”がないんです。思っていることに、“もつれ”がないからストロークにもそれが表れるんです。スキッとしておる。気持ちがもつれておったら、手も動かんから、ストロークにも絶対それが出てしまいます。

手嶋というと「練習せえへんプロ」で有名ですけど、その代わりに素振りはようやっています。ホテルの部屋で鏡を見ながら、ひたすら素振りをやっておるという話はよう聞きます。

これは想像ですけど、鏡を見て、「この構えやったら、クラブが上がりそうや」とか「いや、この構えは当たる気がせん」とか、ものすごくいろいろやっておると思うんです。

素振りのええところは、インパクトをせんでもええので、球に気がいかんことです。

練習場でボールを打っておる場面を思い出してください。飛んでいく方向は、ものすごく気になるはずです。距離のある練習場なら飛距離も気になります。

アマチュアの人やったら、1発目でダフッたら、「次はダフらんようにしよう」と当てにいくので、ほぼ次の2打目はトップです。1打1打を脳にフィードバックしてしまうんやね。

もし考えておるよりも右に飛んだら、次は右にいかんように打って、左に引っかけます。前のショットの反省を次にやってしまうわけです。それを、ずーっとやって、100発打った最後の1発が曲がってしまったら、次のラウンドは心配満載でスタートせなあかんことになってしまいます。

素振りはそういう“当たり”というものがないわけですから、ものすごく楽になれます。スキッとした気持ちで練習が終われるわけやね。

手嶋プロはそういうフィーリングでずっと勝負してきたんやないかと、これも僕の想像ですけど、そう思うんです。だからスキッとしたストロークができるんでしょう。

素振り練習には“当たり” がないのがイイ

「素振りには方向もないし、当たりもないから、もつれる要素がない。だから手嶋プロもホテルで素振りをやるんでしょうな」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月21日号より