【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.880「プロがどう打ってるではなく、大切なのは“自分だけのリズム”なのです」
岡本綾子「ゴルフの、ほんとう。」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
>>前回のお話はこちら
- 米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。 TEXT/M.Matsumoto >>前回のお話はこちら やらずに後悔するくらいならチャレンジしたほうがいい。分かっているのになかなかできません。失敗するくらいならやめると考える人も多い……
パッティングのスクールに通っていますが、そこで教えてもらっているストロークのテンポが私には速すぎてどうしても合いません。岡本さんはパットのリズムとテンポについてどうお考えですか?(匿名希望・女性・ベストスコア85)
パッティングは、打ち方は一見簡単そうに見えて繊細なタッチと正確な方向性を求められ、心理的な負担も大きいため、経験を積めば積むほど迷宮入りすることがありイップスになる人もいます。
ショットと同様、パッティングもリズム&テンポは重要です。
そこで少し調べてみましたが、現在一般的に行われているゴルフコーチングで基準となっているのは、メトロノームでいう90bpmというテンポ、つまり1分間に90回の拍子のリズム&テンポで打つことなのですね。
1分間に90回というと、心拍数で考えるとかなり速い鼓動ですね。
最近はプロのパッティングデータを解析して数字に置き換え、デジタル化して語ることで客観的に指導できるため、感覚的なレッスンは押され気味みたいですね。
選手のスタッツが何十種類もの細かい数字の羅列で表示されるかと思えば、先月ゴルフを始めたばかりというビギナーのスウィングデータもヘッドスピードから初速、打ち出し角、スピン量、最高到達点、キャリー&ランなど瞬時に弾き出してくれます。
こうしたデジタル化は、良いことではあると思いますが、教える側がデータと生身の人間を見てレッスンできなければ、誰が教えても同じような気がします。
プロのスウィングやストロークを解析して指標としてデータをレッスンに使うのは分かります。
しかしゴルファーは人間です。一人一人の個性があってクセがあります。
ですから、全員が同じテンポで打てと言っても少し無理があるのではないでしょうか。
カップに入れるためには、どんな状況でもすべて機械のように正確なテンポを刻んでパットすればよいというものではありません。
数字やデータは課題を見つけるための参考資料であって、それ自体を練習目的にするのは本末転倒ですよね。
生徒さんそれぞれの資質に寄り添った、もう少し血の通った指導を心がけてもらえるとわたしはうれしく思います。
逆にですが、あえてこの時代に徹底的にアナログで教えるコーチがいても面白いのではないかしら、なんてわたしは思ったりもします。
実際、カップまで1メートル弱、かなりキツい下りのスライスラインで、1分間に90回のテンポでパッティングできると思いますか?
ショットも同じですが心理状態や状況によってパッティングは変化しますし、あえて変えてもいます。
ストロークがままならないくらいしびれる難しい状況下でも、重圧に耐えるだけのいつもと変わらぬ同じテンポ&リズムで打ちたい。
それがわたしたちゴルファーにできる最大限の準備です。
プレーヤーの頭や体の中で、自分なりのメトロノームがカチ、カチ、カチとリズムを刻んでいるのですが、はた目にはどんなテンポかは分からない。
それは教わるものではなく自分で決めて守るものです。
このことは忘れないでください。
外から形だけ真似ても自分のものにはなりません。
大切なのは、あなただけのリズムなのですよ。

「自分の心地よいリズムがわかったときの快感、そのために練習をしませんか?」PHOTO by AYAKO OKAMOTO
週刊ゴルフダイジェスト2025年10月21日号より


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