【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.879「日々の小さな挑戦を積み上げていくことで大きな挑戦ができる人間になると思います」
岡本綾子「ゴルフの、ほんとう。」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
>>前回のお話はこちら
- 米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。 TEXT/M.Matsumoto >>前回のお話はこちら プロはアイアンを1ヤード刻みで打ち分けると言われます。測定器では距離が1ヤード刻みで表示されますが、その距離感をどうやって出すの……
やらずに後悔するくらいならチャレンジしたほうがいい。分かっているのになかなかできません。失敗するくらいならやめると考える人も多いと思います。ゴルフにおいても多々遭遇する“やるかやらないか”ということについてどうお考えになりますか。(匿名希望・45歳)
未踏のチャレンジに挑むべきかどうか、やらなきゃ良かったとは思いたくないとためらっている自分にとって、まず欲しいものは情報だと思います。
成功率はどれくらいか、失敗の先にどんな結果が待っているのか。
そうした情報を先人の例から少しでも学び取りたいと思う気持ちがあるからです。
わたしも現役時代には、ゴルフ界の伝説的名選手のみならず、ほかのスポーツや各界の英雄物語を読んできました。
アスリートは基本的に孤独ですし、迷いや悩みは尽きないものです。
重圧のなかでどうすればいいのか先人たちの知恵を借りたかったのだと思います。
ただ、そうした物語の主人公は「こうがんばったから上手くいった」「こんなアイデアを思い付いたから勝ち残った」のですが、読んでいる側はどうすれば今の自分のピンチを切り抜けられるかの答えは書いてありません。
成功を収め人生の勝者になった偉人の人生を知り得たとしても、それが挑戦を後押ししたり成功を保証してくれるものではないのです。
先人たちの悔しいいきさつを知ることで、無謀なチャレンジに慎重になることはあります。
わたしが読んださまざまなスポーツ界レジェンズのストーリーのなかから、何らかのヒントを得たとしたら、それは苦い経験を強いられたときの過ごし方についてだったように思うのです。
誰も足を踏み入れたことのない領域に初めて挑んで成功した人や企業などのことを「ファーストペンギン」と呼ぶのだそうです。
ペンギンは普段、陸上に集団でとどまって動こうとしませんが、危険を察知したり、エサを求めて最初の一羽が先陣を切って海へ飛び込めば、次々に大挙してその後を追って飛び込むと言います。
この最初に飛び込む勇気ある一羽のことを指すそうです。
先駆者が成功例を示してくれれば、あとは続々と追随者が現れる。
メジャーリーグや世界のゴルフ界で活躍している現在の日本の選手たちを見れば、それも納得できます。
ですがファーストペンギンと違うのは、みんなのためにやるのではなく、自分の夢を追求するためです。
挑戦するかしないか。
やるかやらないかの境界線がどこにあるかといえば、熱い思いを持続し、強い期待を自分にかけられるかどうかという部分にあると思います。
ゴルフをしていれば、選択の場面に多く遭遇します。
成功・失敗の確率が五分と五分ならどうしますか?
わたしなら、五分五分はもちろん成功・失敗が四分六分でも行きます。
一回限りの人生、いつだって踏み出す先は行ってみなければ分からないという性分でしょうか。
失敗したらどうするって?
その時はそのとき、命まで取られはしないし失敗の経験も肥やしになります(笑)。
成功率を見積もるには、自分の持てる能力を冷静に判断できることが前提になります。
自分の可能性をどれだけ信じるかは、もう科学や統計学ではなく性格もありますが、失敗すると思いながら行くのは勇ましいとは言いません。
チャレンジというのは、イチかバチかのギャンブルではありません。
今日できなかったことを明日はできるようになりたい、やり抜きたい――そういう向上心を持続する姿勢も立派なチャレンジだということを忘れないでほしいです。
毎日コツコツと積み上げるようにして持続してきた練習の成果として、今日初めて思い通りの球が打てた!
わたしはそっちのほうが尊いチャレンジだと考えています。

「伝記など先人たちの本を読むと意外な発見があってとても興味深いですよ!」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2025年10月14日号より


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