【名手の名言】ボビー・ジョーンズ「これが、いま私が置かれている人生のライなのだ」

レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は“聖球”ことボビー・ジョーンズの含蓄のある言葉をご紹介!

人間は与えられた条件のなかで
どう生きるかが大事なのだ
これが、いま私が置かれている
人生のライなのだ
ボビー・ジョーンズ
この言葉には、ゴルフという競技を超えた深い哲学がある。ボビー・ジョーンズは単なるゴルフの天才ではなく、競技の奥にある精神性や人生観にまで目を向けた人物だった。その視点が端的に表れているのが、この「ライ」に関する一節である。
ゴルフにおいて「ライ」とは、ボールが止まった地面の状態を指す。フェアウェイの真ん中に打ったナイスショットでも、運悪くディボット跡にボールが入ることがある。そこに理不尽さがあっても、プレーヤーはそのライから次のショットを打たなければならない。それがゴルフの本質であり、プレーヤーに問われるのは、与えられた状況への対処力と覚悟である。
人生も同じだ。自分では選べない環境、予想もしなかった困難、不条理な出来事。誰もが自分の望む完璧なライで人生をスタートするわけではない。だが、どんな状況でもそこで何を選び、どう行動するかによって、その人の生き方が決まる。
ジョーンズの言葉は、決して現実逃避ではない。むしろ、逃げずに現状を受け入れ、そのなかでできる最善を尽くすことの大切さを語っている。「自分は不運だ」「他人と比べて条件が悪い」といった思考からは、何も生まれない。与えられたライを自分のものとして捉え、それをどう活かすか。その姿勢が人間としての強さをつくる。
ゴルフというスポーツは、極めて誠実な競技だ。自分で自分にペナルティを課し、状況を言い訳にせず、最後まで冷静に判断し続けなければならない。だからこそ、ゴルフはしばしば「人格が試される競技」と言われる。ジョーンズが残した言葉も、その精神性に根ざしている。
与えられた環境や条件に文句を言う前に、そこからどうやってベストを尽くすかを考える。失敗しても、自分の選択と行動に責任を持つ。それはゴルフにおいても、人生においても、極めて真っ当な態度だ。
ジョーンズは、その一言に重みがある。彼のこの言葉は、どんな環境にあっても希望を持って立ち上がるための指針となる。今、目の前のライが完璧でなくても、そこから最高の一打を目指すことができる。それこそが、ゴルフというゲームの魅力であり、人生の本質なのだ。
■ボビー・ジョーンズ(1902~71年)
米国ジョージア州アトランタ生まれ。父親がゴルファーで生家も庭がゴルフ場続きでもあり、5歳で自然にクラブを握る。14歳で全米アマ出場後、数々の選手権に優勝。1930年には世界の4大タイトル、全米、全英両オープン、両アマに優勝、年間グランドスラムを達成。この記録はいまだに破られていない。全英オープンに勝ち、祖国に凱旋した時は国民的英雄となった。これを契機にアマのまま引退。故郷アトランタに戻り弁護士活動の傍ら、オーガスタナショナルGCを設立、マスターズ・トーナメントを主宰した。
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