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【ゴルフ野性塾】Vol.1794「練習は体・技・心の自覚を生む」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

台風去りて、
一時の平穏か。

天災、大型化して来た様な気はする。
でも、人災、大型化しなければ腹は立たぬ。
今日8月16日、水曜日。
窓の外は薄晴れ。
福岡けやき通り15階から眺める東の空、薄い青空と横へ広がる灰色の雲の形、2時間前から変ってはいない。
地も空も風なしの夏の一日。
こんな日って1年に一度あるのだろうか。
ひょっとして2年に一度の無風の地と空だったりして。
また来るでしょう、台風が。
これより編集部へファックス送稿。
そして、ひと眠りの後、練習場へ行きます。
体調良好です。

練習が足りない。6Iをジャイロで打て。

いつも大事なところでドライバーの引っかけが出ます。いわゆるチーピンです。これが出ると、その後のアイアンショットも左右に散り出してしまいます。自分ではどこがおかしくてチーピンが出るのかよくわかりません。体の動きが止まって手が返ってしまうからだとゴルフ仲間に言われますが、自分ではそういう自覚はありません。塾長、突然のチーピンを防ぐ方法はありませんか。(愛知県・佐久間雅也・51歳・ゴルフ歴25年・HC14)


練習とは自覚を生む行為である。
自覚なければ目標定めるは難しい。
地上の生き物、最も進化為したのは人間と思うが、人類の進化も夢在りての産物だった様に思えて仕方ない。
ただ、人類も進化の途中の生き物だ。
いつも地上のどこかで戦争している様じゃ自覚の本質に達するは遠い距離と思う。

結論を申す。
貴兄は練習不足だ。
練習すれば自覚は生じる。
その自覚、ないのは練習足りていないと思う。

練習は体・技・心の自覚を生む。
ゴルフを始めたばかりの左利きの方が右構え、右打ちのクラブで打った時、出るはトップ球かハーフシャンクか、コスリ球である。
ダフリは出ない。
逆に右利きの方が左構え、左打ちのクラブで打てばトップ球かハーフシャンクか、コスリ球が出る。
この事、ジュニア塾生指導の中で確認出来た。
そして右利き右構えで打った時、左腕の筋力、極端に弱いとダフリ生じた。
要するに右腕と左腕の筋力と器用さのバランス悪いとダフリ生じていた。
貴兄の友人の指摘は間違っていないと思う。
貴兄は体の動き少なき手打ちスウィングをしておられると推察する。体の回転、肩の動き、膝の動き、その総てが充分ではないのだ。
中途半端な体の動きで球打たれる方は多い。
中途半端は自覚に達し難い行為と思う。

貴兄には自覚が要る。
両の踵をくっ付け、両の爪先の開き30度にしたジャイロ構えでアドレスに入り、左腕地面に平行のショートスウィングのトップ、右腕地面に平行のショートスウィングフィニッシュで球を打って貰いたい。
ジャイロのアドレスとショートスウィングは究極のシンプルなる球打ちである。
スタンスを広げる程にスウィングは複雑さと癖を生み、大きく振り上げる程に球叩く時の力加減、難しくなって行くのが球技と思う。
スウィングのどっかに単純は要ります。
その単純さ生むが為の練習と理論なれど、知恵知識では分っていてもその通りに出来ないのもゴルフじゃある。
ゴルフの難しさはそこに在りだ。
貴兄は単純に向え。

今迄、単純に向う練習されていなかったと推察する。
意識もなかったであろう。
51歳は若い。
稽古事は49歳迄は若僧。
50歳で白帯から黒帯に変り、60歳で師範代。
70歳で師範。
80歳で白と赤の紅白帯締める人になるのではと考える。
貴兄はこれからの方である。
練習しなされ。
球数、少ないと思う。
毎日300球打ってます、と言うのならば350球打て。
己の今を評価するな。
今を高く評価して成功した人、いない様な気はする。
評価は周りがしてくれるものだ。
自己満足はいけない。
自己否定もいけない。
今を生きればいい。単純を目指し、最善を求めて。

私は人様の評価、聞く事はなかった。
文筆業、ゴルフ理論、指導力、ジュニア塾等、どこかであったとは思うが、利害関係、好き嫌いの混じりし評価、素直な気持ちで聞く気にはなれないものだ。
だから世の評価、坂田評は無視した。
理論は世の先を進まねばならない。
理論、理屈の後付けは理論じゃない。理論は新たな領域を生まねば理論じゃないと思う。
人は理解出来ぬものには耳を塞ぐ。
塞ぐのと無視は力が違う。
無視の力の方が何倍も強い。
「無視はするな。無視すれば相手を傷付けるし、敵をも作る。その敵、生涯の敵となる。相手はお前に必死全力で向って来る。優しい顔、納得している顔、同調している振りの顔を作れ。大事な事だ」
私に教えてくれた人。
その方は引退間際の衆議院議員だった。
私を政界に誘った人だった。

私は本家、彼は分家の人であり、その方の地盤を引き継げば90%の確率で選挙に勝つと言われていた。
東京から出版関係5人の男が私の許にやって来た。
「止めて下さい。通るのは確定です。しかし、一週間後、辞職ですよ」
「この話、受けてまだ10日間なのに、もう私が出るとの噂流れているのか? 理由は?」
「女性関係です。テレビも週刊誌も新聞も待ち構えています」
それ迄、反対していたのは女房一人。
他の人は賛成していた。
そりゃ相手のいない勝ち戦だ。賛成するのは当然だろう。
ただ、引退間際の叔父は誠実なる方であり、私は下半身に問題多き人間じゃあった。
その180度異なる反動は大きい。
私は5人の前で即断した。
「分った。断りに行く。皆、叱るだろうけど仕方ない。私の不徳と女好きのせいだ」
一週間、頭の下げっ放しだった。
政治の心得迄、貰ったのにドタキャンだから、当たり前じゃありました。
叔父の跡は秘書の方が受け継いだ。

振り返れば、50歳過ぎてからの日々、楽しかった。
多くの方と出会い、教えも受けて来た。そりゃ迷惑掛けもしたが、人の世の寛大さに救われて来ました。
悪い世じゃない。
悪い者もいるが、善い人、悪い者の10倍いるのが日本と思う。
自覚あれば生き行く方向、大きく間違う事はあるまい。
練習が大事だ。
この事、今年2月から打ち始めた練習場の球数が教えてくれた事であります。
私は新たな自覚を生みたい。
己の自覚だ。
己を知るには自覚が要る。
チーピンはイヤな球だ。
6アイアンでジャイロとショートスウィングで球を打て。
コースラウンドは今迄のスウィングで打てばいい。
根気、執着、愚鈍、頑固、へこたれん気あれば何とかなるのが人の世と思う。
頑張れ、ハンディ14の51歳。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2023年9月5日号より

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