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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.142「スランプのとき“形”を考え始めると余計に悪化します」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO / Masaaki Nishimoto

前回のお話はこちら

なかなか結果が出なかったりスランプが続いたときに、「なんでや」とスウィングの形に悩み出すことが状況を悪化させることはよくあります。逆に、悪かったら悪いなりに開き直って、「思い切り振ったれ!」みたいな感じでやるとスウィングはそれなりによい方向に向かったり、切れ味のようなもんが出てくることがあります。つまり、意識の持っていき方が大事やということですわ。

前にも話したことがありますが、日本では春先の風の強いころに試合が多く、スウィングを壊すという理由で試合をスキップする選手もいてますが、僕はそれは逆やと思います。

たとえば英国のリンクスでのプレー中にビンビンに風が吹いてきたら、「低い球はこうやって打つ」なんていう理屈やスウィングの形なんかは通用しないので、とにかく「あそこにボールを打っていく」いう意識だけで振っていくしかない。


狙った場所にボールを打ついうのはショットの原点ですから、その意識を研ぎ澄ませる球を打っているうちにスウィングがよい状態になるいうことがあるんです。

ドライバーがイップスになって難儀な思いをしていた昨年の話ですが、エビ(海老原清治)さんとプロアマで一緒に回ったことがあって、そのときに、ティーショットでエビさんに20ヤードも置いていかれるもんだから、「奥ちゃん、どうしたの?」と驚かれました。

「バックスウィングの途中あたりから、ウワァ~ッとなるんですよ。エビさんはそんなことないですよね」と聞くと、「いや僕にもあるよ。トップに上げたら左手の親指がとんでもない方向を向くんだよ。でも何でそうなるのかわかんねえんだよ」と言うんです。

どうやって直したのかを聞くと、「ボールをすごく悪いライに沈めて置いて、それをアイアンで思いっ切り“しばく”練習をしていたら直ったよ」言うていました。

冒頭に言ったように、意識がスウィングの形に向き出したら状況は悪化の道をたどり始めます。グリップなんかいちばん形が気になる部分なんで、意識が向きがちなのが厄介なところですが、エビさんは意識をとんでもなく悪いライに向けることでそれを解決したと。さすがですわ。

「エビさん、今もマン振りですわ(笑)。いつもなにかヒントをくれます」

奥田靖己

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2023年8月22・29日合併号より