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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.130「プロが求める“安定”とは?」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Hiroaki Arihara

前回のお話はこちら

前回、「多くの人は“安定”を求めて練習をするけれど、安定を求めると逆に不安定になるから、そういう練習はやらんほうがよい」という話をしましたが「だったらプロは練習しないんですか?」いう質問を受けました。

これは難しい問いですが、まず、プロは練習します。手嶋多一などは、試合のときに練習場で球を打って調子が悪かったりすると「不安」になるから練習はしないとは言っておりますが、彼はホテルの部屋でパター練習や鏡の前でフォームのチェックなどを常にやっておりますからね。


何で練習をするんかいうと、プロは心配性なんですわ。そして、常に安定させておきたいわけです。

なんや、「安定を求めて練習をすると逆に不安定になる」いうのと矛盾するやないかと思うでしょうが、この場合の安定はちょっと意味合いが違うんです。

アマチュアの皆さんが求める「安定」はショットが曲がらん安定性で、これを求めて練習しているとクラブが振れんようになるのでかえって不安定になるわけです。

一方、プロの場合は年齢や経験とかにもよりますが、僕らシニアの選手くらいになると「安定」いうんは調子の維持とか自己コントロール、ルーティンみたいな意味合いがあるわけです。

74歳の海老原清治さんは練習では60球以上打たないそうで、理由は、それ以上打つと背中や腰が痛くなるからだいうことです。それでコーヒー飲んで「行くでぇ」と言うて、スタートしていくスタイルをこの10年くらいずっと守ってはります。

一方で67歳の倉本昌弘さんは、この前の試合でも、プロアマの日の朝、雨なのに合羽を着て、「練習場で球を打ちに行く」言うんです。聞けば、「いきなりラウンドするとケガするからね」と言うてました。

試合でなくとも、プロアマのお客さんとコンディションのよい状態で回るために、体を動かして整えるということを自分なりにやってはるわけです。

そうやって人それぞれに、練習で安定を求めています。プロだからって、まったく練習もせんとバチバチ上手い奴なんて一人もいてません。あのベン・ホーガンかて練習しとったんやからね。

「人それぞれ、練習で求める“安定”があるんですわ」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2023年5月30日号より