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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.129「安定を求めるから安定しない」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Takanori Miki

前回のお話はこちら

いったん90台を出したものの調子が悪いと100以上叩くこともあって、「100の壁」を行ったり来たりしとる人は多いようです。

最初の頃は「じきに100は打たんようになるやろ」と思っていたものの、いつまで経っても90台で安定しないでいると、この人らはゴルフをするのが「苦しく」なるそうです。スコアが100前後の人が、でっせ。

でも実は、こういう人はけっこういてます。じゃあ何で苦しくなるんかというと…


その人らは「自分はこんなもんじゃない」と思っていて、でもそれを証明できないでいる自分が許せないから苦しくなるわけです。だから解決策は、今の状況を受け入れて自分を許すこと、これが一番です。

たとえば、僕が今年のオフに“腰痛明け”のラウンドをしたとき、午前のスコアが46やったんです。そのとき僕は、「こんなもんや」と思いました。

昔やったら自分が許せんかったけど、今は許せます。

腰痛でクラブも振らずにいきなりやったら、こんなんなんねんなあと、それを受け入れてプレーしとったら、次のハーフは34です。そこで、やっぱ僕はプロやなあ思うてちょっと安心するわけです(笑)。

もう一つ大事なことは、安定を求めないことです。もう100には戻りたくない、90台で安定したいと思って練習をするんやろうけど、安定を求めるが故に不安定になるということに気づかなあかん。

絶対に大丈夫やというスウィングを求めて自分を壊してしまっていることを、わからんとダメ、いうことです。

禅問答のようになりますけど、安定が欲しかったら自分を不安定にしたらええんです。自分が不安定ならバランスを取ろうとするからそこに自然に安定が生まれます。それを意識して安定させようと思ってやるから不安定になっているわけです。

スウィングでいうたら、軸も軌道もショットの精度も安定させようとして思い切り振れず、すべてが不安定になっておるいうことです。100前後の人なら、もっと自由にバァーンと振ったら逆に安定するはずです。

「怖いときほど思い切り振れ」と昔から言いますやんか。そんなに苦しまんでもいいんでっせ。

バァーンと振ったれ! スウィングを安定させようとするから、不安定になるんです」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2023年5月23日号より