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「ぬるま湯につかるとぬるくなる」時代に逆行!? 日章学園ゴルフ部の強さを支える“みゆき先生”の根性論

2022年全国高等学校ゴルフ選手権、通称「緑の甲子園」で史上初の団体戦男女“アベック優勝”を成し遂げた宮崎の日章学園高等学校。強くなった秘密はどこにあるのか。新しい春を迎えるゴルフ部を訪ねた。

PHOTO/Shinjiro Matsumoto、Hiroaki Arihara 、Shinji Osawa THANKS/いけうちゴルフ

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ぬるま湯につかると人はぬるくなる

「私の教え、時代に合ってないとも言われるんです」と話すのはゴルフ部監督を務める菊池美幸。体育教諭でもある菊池は爽やかなスポーツウーマンに見える。

彼女に“昭和”な考え方があるのか、いや、そもそも“アベック優勝”という言葉自体が、昭和風なのではないかと思いながら話を聞いていると、「やっぱり、時代が変わっても変わってはいけないことはあると私は思います。頑固なのかもしれません」ときっぱり。

「うちは練習環境が本当にいい。本当にありがたいです。でも、ではなぜ今まで勝てなかったのかと。人間ってやっぱり、ぬるま湯につかるとぬるくなるんです」と宮崎弁を交えて話す菊池。

確かに日章学園の練習環境は抜群だ。月曜日は宮崎国際GC、水曜日はUMKCC、木曜日はハイビスカスCC、土曜日が青島GC、日曜日が座論梅GCで薄暮ラウンドを、授業が7限まである火曜日は練習場のいけうちゴルフで、すべて無料にしてもらっている(金曜日はオフの日)。コースもゴルフの大会も多い宮崎はジュニア育成にも協力的なのだ。

全国各地から入学する高校ゴルフ部は現在33名。今年のキャプテンは福田萌維さん、副キャプテンは丸尾怜央くんだ(写真上は朝練後、写真下はユニフォームを着て)

菊池は学生時代、ずっと剣道で心身を鍛えてきた。教師となり剣道部、バドミントン部、女子ボクシング部の顧問を経て、ゴルフ部の監督に“抜擢”された。学校がゴルフ部に力を入れようとしているときだった。

「私はゴルフがわからないし興味もない。止まっているボールを打つことの何が楽しいの、打って入ればいいんでしょうって(笑)。最初は書類を書くだけでいい、教えるプロもいる、という話でした。でも見ていると、やっぱり子どもたちが可愛い、となるんですよ」

菊池の“部活動魂”は、もっと部活動の真髄を知ってほしいと思うところからきている。

「最初の頃は、親御さんたちにも、何しに来たんですかという感じで見られたりしました。クレームも多いし、何という競技だろうかと、最初は病みましたよ。私自身にも迷いがありました。いろいろな部活を見てきましたけど、今までにない感じで。正直、親御さんたちに、“自分の子どもだけ”という雰囲気もあり、試合でクラブメーカーさんと生徒のやり取りを見て、やってもらって当たり前という感覚に違和感があった。でも、子どもが成長していく段階は何の部活でも競技でも変わらないと考えたとき、一番必要なのはその子の本質的なものだと。どこに行っても可愛がってもらえる人間になってほしい、子どもたちに自立してほしいんです。私は人間性を重視する環境で部活をしてきたんだから、と改めて思いました」

親や生徒ともケンカをたくさんしたという。

「プロ養成所ではなく部活なんです。だから生徒は皆平等です。私は夏場の体験入学で最初に『部活として動くから勝手なことはできない、思いやりを大事にしてください』と話をします。もしイメージが違っていれば、別の学校を考えていただいたほうがいいと考えているんです」

「いまだに根性論で物事を言います」

こうして少しずつ、菊池が思う部活になってはいったが、今度は「勝てない」ことを言われ始めたという。ここでは菊池のアスリート魂が発揮されていく。

「どうやったら勝てるのかなといろいろ考えました。私は結構、型にはめるんです。考え方やこうすべきだということを植え込みます。最近、そういう人はダメな指導者だと言われたりしますけど、私はいまだに『根性論』で物事を言います。ゴルフでも最終的にはそこだと思うからです」

本人が、どうしても勝ちたい、頑張らないと、という気持ちを持たないと勝てないと菊池は言う。

「もちろん、そこには人への思いやりなどが伴っていないといけません。でも競技には、やはり勝たないといけないのです」

挨拶と感謝の気持ちは徹底して伝える。サッカー場横にある鳥かご練習場もしっかり整理。「表裏があるのが一番ダメです。悪いんだったらずっと悪くしろと言うんですよ。でも結局悪いことは私に怒られるんですけれど」

菊池の思いが理解され始めたのは7、8年くらい前からだという。2016年、日章学園は初めて男女ともに全国大会に行けなかった。

「環境のよさは変わらないのに、やはりぬるま湯に慣れてしまっていたのかもしれません。その頃はラウンドしていても『私語をやめなさい』というレベルの話ばかり。この夏、『この暇な夏は何だ!』となり、急遽合宿を始めたんです。夏場にバッグを担いで36ホール回るようなこともしましたね」

そして、生徒たち自身に考えさせる機会を増やしていった。

「朝練も、私がメニューを考えていました。入学式などの行事を準備するときも、サッカー部や野球部の子たちはすぐにパパッと動くんですけど、ゴルフ部の子たちは、私に付いてくるカルガモ状態。下手すると親が手伝うといった感じまで(笑)。これはいけんなと思い、もっと自分たちでやらせようと。ミーティングも増やしました」

菊池は、生徒たちにトイレ掃除をしてもらうことも多い。

「私が寝ていると、寮生が『もう1度掃除の意味を、目土の意味を教えてください』と聞いてきました。少し理解をしようとしているなと感じ始めた頃でした」

香妻琴乃・陣一朗姉弟や柏原明日架、小浦和也、ルーキーの菅楓華など、13人のプロを輩出している

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週刊ゴルフダイジェスト2024年4月2日号より