Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • 週刊GD
  • 「人の嫌がることをする」「自分に厳しく」日章学園ゴルフ部の強さを支える“みゆき先生”の根性論<後編>

「人の嫌がることをする」「自分に厳しく」日章学園ゴルフ部の強さを支える“みゆき先生”の根性論<後編>

2022年全国高等学校ゴルフ選手権、通称「緑の甲子園」で史上初の団体戦男女“アベック優勝”を成し遂げた宮崎の日章学園高等学校。強くなった秘密はどこにあるのか。新しい春を迎えるゴルフ部を訪ねた。

PHOTO/Shinjiro Matsumoto、Hiroaki Arihara 、Shinji Osawa THANKS/いけうちゴルフ

>>前編はこちら

人の嫌がることをしなさい

自分たちで考え始めると、生徒たちは確かに変わるのだという。「そのためにも、物事に対して、なぜそうなのかをきちんと細かく説明します。これは今の子たちには必要です」

たとえば、トイレ掃除の意味はこうだ。

「人の嫌がることをしなさい、ということから伝えます。だからトイレ、そのなかでも人の嫌がる場所を選ぶことで意味があると。やらないと今後嫌なことから逃げるようになるし、人にやらせようという感覚も生まれる。こうして全部つながっていくのだと話をします。嫌なことをするのは、人への思いやりにもつながる。たとえば目土も、地面は生き物だから自分たちが掘ったままだと戻るのに1カ月もかかってしまう。無料でプレーさせてもらって、荒らすだけ荒らして、そんな失礼な話はないと。一般の方が掘った場所も目土する。それこそ感謝につながると」

一つ一つ理解していった生徒たちが、ゴルフも上手くなるという。「レギュラーに入る子はやはり、考え方がしっかりしてきます。これ以上ない環境で、やり残すことはないくらい練習をするように言っています。それでも、欲が出たり、変なプライドがあったり、ぬるま湯につかってしまうと、なかなか伸びません」

これを、型にはめるというのだろうか。現に生徒たちは明るく、楽しそうだ。

「型のなかで楽しさを生み出しているんです。楽しむ度合いが過ぎるときは言いますけど、それでひねくれたりはしませんよ」

今の時代、根性論、いや精神論もやはり必要なのか。もちろん理解しない親たちもいるという。


「すると逆に、子どもが浮いていったりする。うちの部活は仲間なんです。誰かが落ちていったら、皆で引き上げようとする。人間は最終的には自分で生きていかないといけない。親御さんがかばって大事に育てても、順番からいけば親は先に亡くなる。自分で生きていける何かがあるかどうかが大事です。そのなかで仲間というものも必要なんです」

朝練でも練習場でも、常に皆で真剣に声を出し合う。「男女関係なく皆仲がいいのが特徴です。ゴルフでも教え合います。こんな素敵なチームでキャプテンをさせてもらえるのはいい経験です」(福田キャプテン)

自分で考え、自分に厳しく、自分と向き合う

自主性や自由と規律は両立できるのだろうか。

「言ったもの勝ち、がよしとされる風潮もありますが、それは本当に自分が確立されていないとムリです。個性をすごく主張してくる子もいますけど、当たり前のことができてからの個性だと思っています。常識的なことができて、プラスアルファの個性。だから私は型にはめようとするんですね」

菊池の根底には常に剣道の精神がある。

「剣道ではやはり“自分に克つ”が必要。ゴルフにも通じます。克己心ですね。これはうちの学校のモットーでもあるんです。ゴルフも結局は自分の弱い気持ちに打ち克てるか、自分を信じられるかです。その気持ちをどうやって養うか。そのために自分に厳しくできているか、人に嘘をついていないか。自分さえよければ、という気持ちがある人は絶対に勝てない。強いことを勘違いしている人も多いですからね」

リベンジノートを付けて、自己反省と自分を見つめるツールにしている。強制ではないが、ミーティングをメモすることもほとんどの部員が行っている

また、ゴルフは個人競技であり、ジュニア時代から個別のコーチに付く選手も多くいる。部活動としての考え方とズレは生じがちだ。しかし、学生時代の話を聞くと「団体戦が面白かった」「なかなかない経験でした」というプロゴルファーは少なくない。

今、卒業生2人を含む4人のプロが交代でコーチをしている。

「それなのに、自分から聞こうとしないんです。聞けばいくらでも引き出しを持っている。私なら離さないくらいですよ(笑)。でも、親がステータスを見るのか別のアカデミーでレッスンを受けさせたりもします。そういう子はあまり伸びません。答えはわかってるんです。今ある環境で試行錯誤してやることから始まる。自分で考える力を育む要素はいくらでもある。でも、いくらいい環境があっても、雨や風のなかでは止めてしまおう、という考えでは伸びないんです」

キツいなかで楽しいことが出てくる

日章学園で教師となり30年が過ぎた。

「ゴルフ部は今年18年目、あっという間でした。好き勝手にやってきました」というが、四六時中、生徒のことを考えているのだろう。

「部活というものは楽しむものではないんです。キツいなかで楽しいことが出てくる。だから、笑え! とは言いますけど、ワイワイ楽しくはさせません」

つなげてきた信念と作り上げてきた空気感が、結果を導く。

「常勝の埼玉栄の橋本先生が、僕もアベック優勝したかったけどできなかったと言ってくださいました。『1度勝ったら不思議なもので、また勝てるんだよ』とも言われて。1度勝った私が腰抜けになった感じもあり、いかん、奮い立たせないと思って昨年は2年連続アベック優勝を目標にし、女子は2連覇できましたし、男子は1打差で2位。今年ももちろんアベック優勝を目指して、女子には3連覇を、男子には優勝を取り戻して来いと言っています」

こうして日章学園という「型」は、より強固になっていく。

「みゆき先生は一番の恩師。神様です。先生に付いていけたから優勝できた。厳しいときもありますけど、それは自分たちのためですし。まったく怖くはなくて、やさしいですよ」(福田キャプテン)

週刊ゴルフダイジェスト2024年4月2日号より