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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.102 ヘッドが“スコーン” 40年追い求めている感覚です

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

前回のお話はこちら

僕が日本オープンで優勝したんは1993年、33歳のときです。若い頃に勝ったことで、その後のゴルフ人生にどのような影響があったかをよう聞かれます。“燃え尽き”とかモチベーションを聞きたいんやと思いますが、お門違いの質問です。

プロゴルファーって、もちろん成績を出すことが大事ですけど、それ以外にも大事にしていることがある。それは、何かを「突き止めたい」いう気持ちや衝動です。

もちろん日本オープンに勝ったことは嬉しかったですよ。でも満足はしとりません。翌週からはまた試合があって、もう一つのプロとして大事な、何かを「突き止める」いうことに頭は向かっているわけです。


その頃の僕が突き止めようとしていたこと、これは今も続いておるんですが、ヘッドが「スコーン」と抜ける感触です。それを追い求めて、これまで40年近くやってきたと言っても過言ではない。

しかしね、なかなかスコーンときいへんのですわ。練習場でくることはありますよ。でも試合になると18ホール回って3回スコーンがあったら、もう5アンダーくらい出ます。それくらい少ない。試合になると力加減が強うなるから、スコーンと抜けんのです。つまり、“力み”いうんが最大の敵ですね。

今までのゴルフ人生で、試合でそういった納得のいくショットを打てたんは2試合だけ。一つは1993年の日本オープンです。2位に5打差での優勝ですから、そらショットの調子はよかった。もう一つは1995年のカシオワールドオープンの、最終18番ホールの左手前の深いバンカーからのショットです。スコーンと抜けたショットがカップの50センチにつき、次のバーディパットを沈めて1993年の日本オープン以来、2年ぶりで優勝できました。

あのときの「スコーン」と抜けた感覚は今でも手に残っとります。1993年の日本オープンも、1995年のカシオワールドも、2位はジャンボさん。全盛期のジャンボさんと競り合って、大事な「優勝」と「何かを突き止める」いう2つのことが同時に達成できた。そんな経験は滅多にできんからこそ、記憶に残っております。

今週の日本オープン、楽しみです。

「力みが最大の敵。抜けた感覚は今も手に残っとります」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2022年11月1日号より