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【さとうの目】Vol.267 松山英樹「基本を守りながら新たなアレンジに挑み続ける」

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は、最終戦のツアーチャンピオンシップに9年連続で出場を果たした松山英樹。

PHOTO/Blue Sky Photos

前回のお話はこちら

前回に続きPGAツアーの21-22シーズンの総括です。忘れてはならないのが、松山(英樹)選手の存在感でしょう。実は「最近の松山選手はどうしちゃったの?」という人々の言葉を耳にします。確かに昨年はマスターズ、そして日本で開催された10月のZOZOチャンピオンシップ、さらに年明けすぐのソニーオープンの優勝と、その印象が強烈に脳裏に刻まれているのはわかります。

しかし、そもそもZOZOチャンピオンシップとソニーオープンは21-22シーズンの大会であり、何より先日終わった最終戦ツアーチャンピオンシップに9年連続の出場は、現役選手最多です。LIVゴルフへの移籍で、D・ジョンソンの最終戦への13年連続記録が今年で途絶えました。J・トーマスが7年連続、J・ラーム、X・シャウフェレ、T・フィナウらが6年連続で追っている状況。これらのビッグネームを従えて9年連続で現役最長をいく松山くん。10年、11年とさらに伸ばしていくのは次から次へと若くて優秀な選手が入ってくるPGAツアーではとんでもなく大変なことだと思います。


もちろん優勝ほどインパクトのあるニュースはない。しかし1年を通して安定してずっと活躍し続けているひとりが松山くんです。その“すごさ”は別の角度からも見てとれます。LIVゴルフが提示した移籍金は、報道では数百億円とも言われています。ある意味それがゴルフ界での評価でもあるでしょう。

そんな提示を蹴って、「ボクにはまだPGAでやり残したことがある」との残留表明には、多くの選手やファンが共鳴したのではないでしょうか。今月20日から開催されるプレジデンツカップにも世界選抜チームの2番手で選出され出場予定。こちらも5回目。活躍が楽しみです。

それにしても、この5年間のメジャー優勝者は18人いますが、そのうちの8人がすでにLIVゴルフへと移籍。直近の全英オープン覇者であるキャメロン・スミスも、9月2日からの第4戦に出場しました。個々の選手の選択をとやかく言う資格はボクにはありません。ただ、松山くんにはぜひ、メジャー2勝目を挙げてほしいと思っています。キャリアグランドスラムだって夢ではないはず。

最近では45歳以上の元世界ドラコン王者のエディ・フェルナンデスとスピードトレーニングに取り組み、マン振りする松山くんの様子がSNSで紹介されました。その打球速度は実に時速191.4マイル(約85.6m/s)。またパッティングも、これまでいろいろなアドレスや打ち方を試してきました。しかしそれほど大きな変化を感じさせません。 

  • ドラコン界の第一人者“ファスト・エディ”(超速エディ)ことエディ・フェルナンデスがSNSにアップした松山英樹の動画が話題を呼んでいる。 (PHOTO/Blue Sky Photos) 真っ黒に日焼けした松山が練習場の打席に立つ。「100パーセントで振りちぎるんだ!」というエディの声に後押しされ、こん身のひと振りを繰り出したヒデキのショットに周囲から「ワオ」「ホー!」の声が飛び……

基本となる土台と骨組みがしっかりしており、その基本を守りつつ、新たなアレンジに挑む。バランス感覚があるからこそできることです。それは一流と呼ばれる料理屋の味が基本を大事にしながらも、常に少しずつ進化しているのと似ているのかもしれません。

「クロス気味だったトップがレイドオフ方向に変わったり、フェースを少しシャットに扱うようになったり、スウィングそのものもフラットになったり、トップでの間が少なくなったり、ショットやパットにおいてスタンス幅や腰の入れ方が変わったり、様々な変化を実際にしていますが、基本が大きく変わった印象は受けません」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2022年9月27日号より