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【わかったなんて言えません】Vol.94 藤田寛之#5「仕事としてのゴルフ」

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。藤田寛之プロの最終回は、プロゴルファーという職業についてのお話。

TEXT/Yuzuru Hirayama

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん”

ご指名/藤田寛之

1969年生まれ、福岡県出身。92年プロ入り。ツアー18勝。43歳にして賞金王を獲得。ゴルフと自分に向き合うストイックな姿勢も皆の尊敬の対象

前回のお話はこちら

時松 夏真っ盛り、レギュラーツアーも後半戦がスタートしました。日本プロでは、藤田プロは3日目までトップテン入りされていましたね。

藤田 でも最終的な順位は、源ちゃんと同じ28位(笑)。後半戦は2人で上位争いしたいね。

時松 ほんとっす! 後半戦は特に、シード入りがかかるとしびれます。

藤田 残りあと何試合かって、焦りも出てくるものだしね。

時松 予選落ちが続くと、バーディを取っても喜べずに、まだ足りない、まだ足りないって思ってしまって。考えてみると、ゴルフが楽しかったのって、アマチュアの頃までで、仕事になってからは、苦しいほうが多いですね。

藤田 うん、わかる。僕は、苦しいばっかりかな(笑)。普段、友だちとプライベートで回るのは楽しいと思えるけど、トーナメントは全然楽しくない。だって、あの石川遼だって、笑わなくなったじゃない。デビューして最初のうちは笑っていられただろうけどさ。

時松 トーナメントには、必ず結果がついて回りますから。

藤田 その結果って、ギャラリーの方は、いい結果だったときに、「頑張りましたね!」と声をかけてくださる。でも本人からすると、よくない結果のときのほうが頑張っていたりするもの。僕たちにとっては仕事だから、よくない結果だからこそ、頑張らなきゃならないから。


時松 それ、わかります。僕がジーンとした話は、父が熊本へラウンドに行ったら、不動裕理プロがアプローチ練習場に朝8時前からいて練習されていたらしいんです。それで、ハーフを終えた昼食後も、見るとまだ練習されていて。さらに18ホール終えてもまだいらしたと。

藤田 すごいねえ。

時松 「何でそんなに同じ練習をずっとされているんですか?」と父が尋ねると一言、「仕事ですから」と答えられたと。その話、感動しました。考えてみれば、サラリーマンもそうですよね。朝8時から夕方5時までなんて、普通に仕事します。プロゴルファーだって、同じでいいんじゃないかって。だから僕も、不動プロの精神は素敵だなと。楽しいとか、苦しいとか関係なく、練習は仕事なんだと。

藤田 「好きなことを仕事にできていいですね」と言われる。確かに、ゴルフというゲームは好きだし、好きでなければ仕事にはできないけど、好きだけでやれるほど、甘い仕事でもない。たとえばシード権は、「イス取りゲーム」。もっと強い言い方をするなら、「弱肉強食」。シードを取れる絶対数は決まっていて、それを誰もが狙っているんだから。

時松 本当にその厳しさを思い知らされています。シード選手を長年続けてこられて、藤田プロのプレーもそうですけど、精神力の強さを尊敬しています。ところでそんな生活のなか、どうやって息抜きをされているんですか。

藤田 最近は、お酒かな。宮本(勝昌)さんのおかげで(笑)。源ちゃんくらいの年齢のときはビールをコップ半分飲んだら真っ赤になっていた。今は、ビールを飲んで、ハイボールや焼酎を飲んで、ワインがあったら宮本さんとそれも。量は少ないから、飲めるうちに入らないかもしれないけど。

時松 プロゴルファーにとって、夕食や晩酌は唯一の楽しみかもしれないです。全国を移動して、その土地のおいしい食べ物とお酒が。「いろいろなところ行けていいね」とよく言われますけど、観光をできるわけでもなく、毎日ゴルフですもん。

藤田 だけど、源ちゃんは若いから、夢があるでしょ。ゴルフも、まだまだ上手くなれる余地が十分あるし。夢は?

時松 やっぱり、海外メジャー、マスターズですかね。藤田プロ、もう一度行ってみたいのは?

藤田 行きたいだけなら、マスターズ。あそこはやっぱりなかなか行けない。だけど、源ちゃんや僕が活躍できるかもしれないメジャーとなると、全英オープンかな。ひたすらストレートに狙ったところに打って転がせれば、チャンスはある。とはいえ、そんな簡単なものじゃないけどね。

時松 歴戦の藤田プロがそうおっしゃるんですから。藤田プロの夢はなんですか?

藤田 もう、簡単に夢を語れる年齢じゃない(笑)。年寄りなのかな、毎朝5時には目が覚めて、鏡を見ると、「おいおい、誰だよ、このおっちゃんは」って愕然とすることもある。だけど年齢にどうにかあらがって、まだ頑張っていきたいな。源ちゃん、歌は? 

時松 歌います! 昭和の古い歌謡曲ばっかりです(笑)。

藤田 チャゲ&飛鳥とか?

時松 いえ、もっと古いっす。

藤田 もっと古い!? 今度、気分転換に歌いに行こう。

時松 ぜひ!

お酒や歌がリラックス法

「その土地のおいしいものを食べるのも息抜きですよね」(時松)「僕は幼い頃の合唱練習のときのトラウマがあるんだけど、今度歌いに行こう!」(藤田)

週刊ゴルフダイジェスト2022年9月6日号より