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【イザワの法則】Vol.20「グリップ握る強さは最初から最後までず~っと“1”です」

世界も認めた美スウィンガー・伊澤利光が、ゴルフで大切にしていることを語る連載「イザワの法則」第20回。今回のテーマはグリップを握る強さについて。伊澤はどれぐらいの力感でグリップを握っているのだろうか。

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)

前回のお話はこちら

みなさんが思っているより
はるかに弱く握っている

グリップをどのくらいの強さで握ればいいのかというのを、アマチュアの方からよく聞かれます。昔から、「生卵がつぶれない強さ」とか、「ヒヨコを殺さない強さ」みたいなことが言われてきましたが、こういう「格言」的なものの意味は、要するに、一般のゴルファーが思っているより「ずっと弱く」握るほうがいいということでしょう。

ジャンボ(尾崎将司)さんが、ある日、しっくりくる握り方を見つけて、寝ている間にそれを忘れないように、ガムテープでぐるぐる巻きにして寝たという、本当かウソかわからない有名な逸話がありますが、そのジャンボさんが以前よく言っていたのは、「左手の小指、薬指、中指の3本はとにかくしっかり握る」でした。だから、その当時は自分も左手の3本をしっかり握っていたと思います。昔のクラブは重かったですし、シャフトをしならせるのにある程度、力が必要でしたから、これは理にかなっていたと言えるでしょう。


ただ、いつ頃からかははっきり覚えていないのですが、ドライバーのヘッドが300㏄を超えたくらいから、10本の指をすべて同じ強さで握るようになって、今もそうしています。「しっかり握る」という意識があると、どうしてもグリップ全体の力感が強くなりやすいですし、指だけじゃなくて、腕から肩にも力が入りがちです。それなら、全部の指で柔らかく握るイメージのほうが、無駄な力みが入りづらいと思っています。

スウィング中はずっと
グリップのテンションを変えずに打つ

それで結局、どれくらいの強さで握るのかというと、10段階でいうと「1」か、せいぜい「2」くらいじゃないでしょうか。別の言い方をすると、たとえば持っているクラブを誰かが引っ張ったら、あまり抵抗なく引き抜けるくらい。あるいは、ヘッドを地面にポンと置いて、そのヘッドを持ち上げることができる必要最小限の強さ、といった感じでしょうか。ドライバーからサンドウェッジまで、全部強さは同じです。とにかく、ほとんどのアマチュアの方が考えているよりは、かなり「弱い」というのは間違いないでしょう。

「アドレスが10段階の『1』でも、スウィングが始まったらもっと強くなるでしょ?」と思う人がいるかもしれません。確かに、インパクトでは結果的に「4」とか「5」くらいになるとは思いますが、自分自身の感覚でいうと、スタートからフィニッシュまでグリップのテンションを変えているつもりはなくて、ずっと「1」のままです。テークバックでも「1」、ダウンスウィングでも「1」です。インパクトも自分の中では「1」。実際は「4~5」くらいになっているといっても、「8」とか「9」には絶対になっていません。それと、ラフから打つときは「普段よりしっかり握る」というプロもいますが、私の場合はやっぱり「1」です。

グリップに無駄な力が入っていないと、ダウンスウィングで勝手に「タメ」ができるので、飛距離を出しやすいメリットがあります。ドライバーでもっと飛ばしたかったら、グリップをゆるめてみるといいかもしれません。デメリットといえば、アプローチでスピンを入れずに、フェースの上を滑らせる感じで打ちたいとき、たまに振り遅れて「あっ」となることくらいでしょうか(笑)。

グリップは必要最小限の力で握る

グリップの強さの目安は、地面に置いたヘッドを持ち上げるのに必要な最小限の力で握ること。また、スウィング中のグリップ圧は常に一定。アマチュアは始動時にグリップ圧が強くなりがちだが、伊澤プロの始動はグリップ圧が一定のまま

伊澤利光

1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2022年7月号より