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【イザワの法則】Vol.19「パッティングで重要なのは形よりもリズム」

世界も認めた美スウィンガー・伊澤利光が、ゴルフで大切にしていることを語る連載「イザワの法則」第19回。昨シーズン、シニアツアーの平均パット数部門で1位となった伊澤プロ。そのおかげで、ほとんどの試合でトップ10入りし、シーズンを通して好調を維持した。パットが入る秘訣とは、何なのだろうか?

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)

前回のお話はこちら

「上げて、下ろす」のリズムを一定にして
パットがよくなった

昨シーズンは、優勝こそなかったものの、出場した11試合のうち8試合でトップ10以内だったので、調子はよかったと思っています。その原動力になったのが、やっぱりパットではないでしょうか。(※伊澤の平均パット数は2020年が1.8008=17位T、2021年は1.7128=1位)

パットの調子がよくなったのは、20年のシーズンオフに、少しリズムを変えてみたのがきっかけでした。それまでは、ショットと同じようにインパクトで少しパンチが入る感じだったのを、上げるスピードと下ろすスピードを同じにしてみたら、これがよかったんですね。メトロノームの「カチッ、カチッ」という音に合わせて、「上げて、下ろす」というイメージです。人によっては、「1、2、3」で、「止まって、上げて、下ろす」というリズムの人もいますが、自分にはそれだと「少し長い」と感じるので、2拍子の「1、2」で打っています。「スッ、スッ」とか、心の中で唱えながら、たまに口に出したりして、一定のリズムをキープするようにしています。


パットで重要なのは、ダウンスウィングのスピードを速くしたり、遅くしたりしないということです。この部分が打つたびに変わってしまうと、距離感にばらつきが出るからです。速くなってパンチが入ると「飛びすぎて」しまいますし、ゆるんで当たると、十中八九、ショートします。

パットが上手い人は
必ず加速しながらインパクトしている

アマチュアの場合は、テークバックが大きすぎて、そこからゆるんで当たるという人が多いです。プロであれば、「このくらいの距離なら、テークバックはこのくらい」という想像がつきますので、プロアマなどで、アマチュアの方がものすごく大きくテークバックをすると、一瞬、「ドキッ」とするんですが、そのあとフワッとスピードをゆるめて打って、結局、ショートという場面がよくあります(笑)。

パットが上手い人に共通しているのは、「減速インパクト」はしないということです。「パットに形無し」というくらいで、個性的なパッティングスタイルの名手はたくさんいますが、インパクトでゆるまない(減速してヒットしていない)という点では共通しています。青木(功)さんなんかがいい例ですね。あのパッティングスタイルは、どう見てもオーソドックスではないですが、青木さんを「パットが下手だ」という人は誰もいないでしょうから。

パッティングの距離感の出し方がわからないという人が時々いますが、結局のところ、距離感は振り幅によって決まります。たとえば、右足の内側までテークバックしたときに2メートル転がるグリーンなら、その倍の、右足の外側くらいまでテークバックすると、転がる距離も倍になって、大体4メートルくらいになります。ここで大事なのは、テークバックが小さくても、大きくても、「同じリズム」で打つということです。小さいテークバックで、「1、2」と打つ場合と、少し大きめのテークバックで、同じく「1、2」と打つ場合だと、大きいテークバックのほうが、ストローク全体のスピードは速くなります。これも、振り幅で距離感が決まる理由のひとつということです。

「心地いいリズムは人によって違う。
自分にいちばん合ったリズムを探すことが何より大事」

リズムを変えずにストロークしよう

伊澤のリズムは「2拍子」。最初の「1」で始動からトップまで、次の「2」でダウンスウィングからインパクト。距離が長くなって、振り幅が大きくなっても、このリズムはほとんど変わらない。また、インパクトは必ずヘッドが加速した状態で迎えるのが鉄則

伊澤利光

1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2022年6月号より