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【世界基準を追いかけろ!】Vol.77「アマの契約事情が激変。青田買いが加速する!?」

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回のテーマは、今年から認められたアマチュアゴルファーのスポンサー契約について。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

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GD 2022年1月から、アマチュアゴルファーの資格規定が改定されました。最も大きな変更が「アマチュアがどのように自分の名前、画像または肖像から利益を得るかに関していかなる制限も規定していません」という部分。つまり、肖像権やパブリシティ権を認めているわけです。これによってどのような事態が起こってくると予想されますか。

X もう起こっていますよね。アルペングループが須藤弥勒ちゃんと1000万円超(※1)で契約を結んだと発表したじゃないですか。今後はこの弥勒ちゃんのケースにならう形で、有望ジュニアやアマチュアとの契約が増えるんじゃないですか。

GD 先日は中島啓太選手が世界的なマネジメント会社(※2)と契約するというニュースもありました。今後はさらに大きな契約が予想されますが、ジュニア選手にもそれが波及するでしょうか。


X 名古屋の天才ジュニアゴルファーと言われる福井誠之助くん(※3)は、SNSのフォロワーが1万5000人くらいいるらしいです。

黒宮 そういう可能性がある子はいっぱいいますよ。ただ、そうなると今度は、親が子供のマーケティングにからんでくるようになるわけですよね。

X 子役のステージパパ・ママ的な感じですね。それは弥勒ちゃんの例があるので、ジュニアの家庭は、「うちの子も」となりますからね。

黒宮 10歳以下のジュニアと契約するケースが出てきてもおかしくないです。

X スノーボードのハーフパイプで金メダルを取った平野歩夢選手は、10歳でアメリカのボードメーカーとプロ契約を結んでいますからね。ゴルフ界でもそういうことは、今後あり得るんじゃないですか。

GD では、この先どういったことが起こり得るでしょう。

X ナショナルブランドのような大きな企業は世界で戦えるトッププロのサポートをし、有望なジュニアやアマチュアに対しては、選手の地元の企業や個人的なスポンサーが増えるんじゃないですか。

目澤 アメリカなどは契約文化だから、実力や才能があれば子供にでも相応の対価を支払う契約に抵抗感はないと思いますが、日本ではどうなんですかね。

X 去年までのアマチュア規定内では、全米のアマチュアランクトップ10の中にいる選手で、年間に経費として企業から受けるサポートは100〜150万円ですからね。改定後で値は上がるとはいえ、10歳に1000万円の契約は、やはり破格です。

黒宮 でも、去年のゴルフ5レディスの会場で弥勒ちゃんがプロ選手にインタビューしていたんですよ。それが、なんとも言えず新鮮でした。

X 確かに、あの弥勒ちゃんのキャラクターは、通常のインタビュアー以上に面白いものになりますよね。

GD そこに企業は、単なるサポート以上の価値を、弥勒ちゃんに感じているのでしょうね。

(※1)世界ジュニア4勝の須藤弥勒(10)は「ゴルフ5」を運営するアルペングループと年間推定1000万円を超える所属契約並びにマネジメント契約を締結。その他、菓子・食品製造販売の「UHA(ユーハ)味覚糖」、そろばん教室のイシドとスポンサー契約。(※2)世界アマチュアランキング1位の中島啓太は1月11日にタイガー・ウッズらが所属する米国のマネジメント会社「エクセルスポーツマネジメント」と契約。(※3)2021年7月13~15日開催の世界ジュニア選手権の7~8歳男子の部で13アンダーで優勝

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2022年3月8日号より