Myゴルフダイジェスト

2021年のゴルフシーンを振り返る【松山英樹・マスターズ優勝編】

日本ゴルフの歴史を動かした松山英樹のマスターズ制覇。大快挙の裏にあったエピソードやコーチをつけた理由、オーガスタを制したクラブセッティングなど、松山英樹の2021マスターズを振り返る!

PHOTO/Taku Miyamoto
  • 50歳を超えた今もレギュラーツアーで奮闘するベテランプロ・藤田寛之。その珠玉の言葉に耳を傾けよう。 https://my-golfdigest.jp/book/p29691/ 前回のお話はこちら 週刊ゴルフダイジェスト2021年8月3日号より
  • PHOTO/Taku Miyamoto、Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara、Hiroyuki Okazawa、Takanori Miki ゴルフは個人競技である。だが、ツアーの最前線では様相が変わってきている。選手を中心としたコーチ、トレーナーなど「チーム」でツアーを戦っているのだ。海外&国内ツアーをよく知る解説者、プロコーチに話を聞くと「個」から「チーム」への流れは当然の結果だという。 マスターズ制覇の快挙を「チーム松山」でつかんだ 松山英樹のマスターズ制覇は、日本ゴルフ界にとって歴史的な快挙だ。マスターズに出場して10年目の栄冠となったが、この勝利の一因といえるのが、目澤秀憲コーチの加入だろう。人生で初めてコーチを付けた松山は、「新しいことを試すのは勇気がいりますが、目澤さんのアドバイスが背中を押してくれました。スウィングを変えるきっかけを目澤さんが与えてくれたんです」小誌連載『世界基準を追いかけろ!』でお馴染み、女子プロの河本結や有村智恵を指導する目澤コーチとのタッグは今年1月からスタート。飯田光輝トレーナー、早藤将太キャディ、通訳のボブ・ターナー氏、そしてギア担当の宮野敏一氏を加えた新たな「チーム松山」が誕生したのだ。トーナメントは個人競技である。選手の実力のみで勝敗が決まる世界だが、実は選手を支えるチームの存在が不可欠なのだ。マスターズ優勝後のリモート記者会見で松山はこう語っている。「目澤コーチと出会えたことで新たな発見とか、こうしたらいいんじゃないかなど、いろいろ意見を出してくれて、そういうコミュニケーションが取れたことで、今までとは違うプレーができました。前週のバレロテキサスオープンでは、よくない3日間が続いて、なんでこんなに怒っているのかと自分にあきれていましたが、マスターズの週になるとスウィングもフィーリングもよくなってきて、『怒らずにここまでやってきたことを信じよう』と。状態が上がってきたことでミスも許せる気持ちになれました。キャディやトレーナーなど、チームのみんながいるからこそ、“怒らないプレー”を心がけられたことが、今回の優勝につながったんだと思います」記憶にある人は多いだろうが、今年のマスターズでの松山は、とにかく笑顔が多かった。それは単に状態のよさだけではなかったのかもしれない。マスターズという晴れ舞台で戦っていたのは、松山ひとりではなかったのだ。目澤コーチが新加入した「チーム松山」は、メンバー全員の力で偉業を成し遂げたのだ。 「コーチ、キャディ、トレーナーと話をして徐々によくなった」(松山) 弾道測定器を使い、毎打データを確認。目澤コーチのアドバイスのもとクラブ軌道、出球の方向性などをチェック。松山の感覚を補完する目澤の客観的な“目”が大きな変化を生んだのだ。マスターズの練習後に松山は「今週はいけるかもしれない」と新たな手ごたえを感じ取っていた スウィング、アプローチ、パットコーチの役割は細分化している 解説/佐藤信人 ツアー通算9勝。JGTO広報理事。海外経験が豊富でテレビなどの解説者としても活躍。小誌で「うの目、たかの目、さとうの目」を連載中 まずは米ツアーの「チーム」事情を知るため、海外経験が豊富な佐藤信人プロに聞いてみた。「米ツアーだけでなく、欧州ツアーも含め、トップ選手のほとんどは、コーチを付けています。当然、専属トレーナーや専属キャディなどは当たり前ですし、個人ではなく、チームで戦うのが普通という状態です。そういう意味では、日本ツアーはまだまだチームが少ないかもしれません」なぜ日本ではチームで戦うスタイルが根付かないのだろうか?「資金力の差が大きな理由です。コーチ、トレーナー、キャディなどを雇ってチームを作るには、お金が必要ですから。日本ツアーと比べ、米ツアーは賞金額やスポンサー契約料などが大きいです。日本の選手たちも本当はチームを作りたい、そう思っていてもお金がなければできません。ただ、女子ツアーに関しては試合数も多く、チームが増えてきています」米ツアーの選手たちは、どんなチームを組んでいるのか?「まずはコーチです。世界ランクの上位選手は、ほとんどが有名コーチを雇っています。飛距離革命を起こしたB・デシャンボーは、19年のマスターズで復活優勝したタイガーを支えたクリス・コモがコーチです。1年半ぶりに優勝したR・マキロイはピート・コーウェンを新コーチに迎えました。コーウェンは、H・ステンソンやB・ケプカも教えています」そして最近は、より「細分化」が進んでいると佐藤プロ。「コーチでいえば、フルショットはAコーチ、アプローチはBコーチ、パットはCコーチと、より専門的なコーチを付けているのです。コーチだけでなく、メンタル的なアドバイスを得意とするパフォーマンスコーチや、トレーナーでも腰痛を専門にした人を加えるなどもあります。これは資金力の差ともいえますが、自身のパフォーマンスを最大限発揮するためのチーム作りといえるでしょう」チームメンバーでもあるコーチやトレーナーの存在は、選手にどんな影響や効果をもたらすのか?「私自身、ツアーに参戦していたときは、井上透コーチに見てもらっていましたし、月曜日は地元に戻り、トレーナーのケアを受けていました。コーチやトレーナーは選手にとって“医者”なんです。ツアーを戦ううえで、欠かせないパートナーなんです」 あのプロは誰に教わっている? B・デシャンボーのコーチ クリス・コモ 19年のマスターズで復活優勝を果たしたタイガーを支えたクリス・コモは、バイオメカニクス(生体力学)をゴルフに取り入れている。B・デシャンボーは、18年の夏からコーチングを受けている R・マキロイのコーチ ピート・コーウェン R・マキロイは今年からピート・コーウェンをコーチに迎えた。不調のマキロイを1年半ぶりに優勝させたコーウェンはメジャーハンターのB・ケプカのショートゲームコーチでもあり、欧州選手を多く見ている P・リードのコーチ デビッド・レッドベター 世界ナンバー1コーチと言われるデビッド・レッドベターの指導でスウィング改造に取り組むP・リード。スウィングの安定感が増した J・ローズのコーチ ショーン・フォーリー タイガーの元コーチ、ショーン・フォーリーとタッグを組んでいるのがJ・ローズ。フォーリーは飛ばし屋のC・チャンプも教えている L・ウエストハイゼンはなんと4人! ●スウィング:ジャスティン・パーソンズ●アプローチ:ピート・コーウェン●パット:フィル・ケニオン●フィジオセラピスト:デーブ・マーシャル スウィングコーチのジャスティン・パーソンズはトラベラーズ選手権で優勝したH・イングリッシュのコーチも務める。腰痛専門のフィジオセラピスト(理学療法士)も付けている 国内女子は「チーム」の戦いが加速 解説/黒宮幹仁 ジュニア時代は松山英樹、石川遼らとプレー。日大ゴルフ部を経てツアープロコーチに。現在、松田鈴英や吉野茜を指導している。小誌で「世界基準を追いかけろ!」を連載中 米ツアーと同様、チームでの戦いが加速している国内女子ツアー。シード選手、松田鈴英を指導する黒宮幹仁コーチによると、「現在の女子ツアーはチーム戦になりつつあります。コーチやトレーナーを付けていない選手のほうが少ないくらいです。これは弾道測定器の登場も大きく影響しています。弾道が可視化されたことで、より効率のいい練習、目指すべき弾道が明確になりました。男子選手はギアの構造や弾道データの見方を勉強しているので、自身のパフォーマンスに生かすことができますが、女子選手はそうはいかないことが多い。そういう意味で女子選手には、コーチの分析力や指導力が生かされやすいといえます。トレーニングについても選手やコーチが目指す方向性に合わせた体作りが行えますから、理想とするスウィングや弾道に近づきやすくなります。コーチ、トレーナーが一体となって選手のパフォーマンスを引き上げていく。そういったチーム力の差が優勝のカギを握るのです」ただチームワークという面では、米ツアーにはまだまだ追いつけていないと黒宮コーチ。「JGAナショナルチームのヘッドコーチを務めるガレス・ジョーンズに教えてもらった世代(畑岡奈紗や金谷拓実など)は、技術面、精神面ともに強い選手ばかりです。海外のメソッドや指導法、ツアーのシステムなどは、これからもっともっと必要になってくると思います」個からチームの戦いに変わっていくことで、ツアー全体のレベルも大きく飛躍していくはずだ。 松田鈴英が19歳のときから指導している黒宮コーチ。現在は淺井咲希、吉野茜、福山恵梨、梅山知宏を指導している。松田のトレーナーとパットコーチは黒宮コーチが見つけてきたという。チーム作りが重要なのだ 国内女子ツアーはシード選手の7割以上がコーチを付けている ●最強軍団「チーム辻村」 コーチ:辻村明志コーチ教え子:上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、永井花奈、小祝さくら、吉田優利 ツアー通算16勝の上田桃子を筆頭に今季絶好調の小祝さくら、永井花奈、松森彩夏ら6人が揃った「チーム辻村」。辻村コーチは、王貞治を育てた故・荒川博氏の最後の弟子でもあり、次世代のスター候補であるジュニアも多数指導している ●松山英樹のマスターズ制覇をサポート コーチ:目澤秀憲教え子:有村智恵、永峰咲希、河本結 今年の1月から松山英樹のコーチとなった目澤秀憲は日大ゴルフ部出身。現在は松山の米ツアーに同行中だが、女子ツアーの河本結、有村智恵、永峰咲希のコーチングも担当している。いま最も注目されるプロコーチのひとり ●教え子が男女とも絶好調 コーチ:奥嶋誠昭教え子:稲見萌寧、高橋彩華 今年のツアーですでに5勝を挙げてブレーク中の稲見萌寧を指導する奥嶋誠昭コーチは、高橋彩華も指導している。男子のツアー選手権と福島OPで2連勝した木下稜介のコーチも務めており、これからの活躍が期待されている ●ジュニアの育成にも尽力 コーチ:青木翔教え子:三ヶ島かな、野澤真央、上野菜々子、梶谷翼(アマ) 渋野日向子を育てたメジャーチャンプコーチ青木翔は、オーガスタ女子アマで優勝した梶谷翼や20年度のプロテストに合格した上野菜々子を指導している。女子ツアーでは三ヶ島かな、野澤真央のコーチも務め、ジュニアの育成にも力を注いでいる ●プロだけでなく大学生も指導 コーチ:佐伯三貴教え子:木戸愛、沖せいら、田辺ひかり 19年に現役を引退した佐伯三貴は現在、東北福祉大ゴルフ部のコーチを務めている。また女子ツアーの木戸愛、沖せいら、田辺ひかりのコーチも担当。今年の開幕戦、ダイキンオーキッドでは木戸のキャディも務めた ●プロコーチの先駆け コーチ:井上透教え子:穴井詩、成田美寿々、武尾咲希 ●パッティングの指導に定評 コーチ:大本研太郎教え子:東浩子、臼井麗香 ●香川を拠点に熱血指導 コーチ:南秀樹教え子:岡山絵里 コーチは父親というケースも少なくない 19歳で全米女子OPに優勝した笹生優花は8歳からゴルフを始め、父親がずっとコーチを務めている。ほかにも柏原明日架や古江彩佳など、父親がコーチという選手は少なくない。米ツアーにも父親がコーチを務める選手は多い 勝みなみはメンタルコーチも ツアー通算5勝、黄金世代のリーダー勝みなみはメンタルコーチ(スポーツドクター辻秀一氏)を付けている。心を整えること、集中力を高めることで、パフォーマンスアップを実現しているのだ 週刊ゴルフダイジェスト2021年7月20日号より
  • TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi MatsumotoPHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ 日本ゴルフ界のレジェンド、陳清波さんが自身のゴルフ観を語る当連載。今回のお話は、松山英樹のマスターズ制覇について。 やっぱりプロのゴルフで大切なのはパットなんです ――いやあ陳さん、松山英樹がマスターズに優勝しましたね。陳さん そうだねえ。やりましたねえ。マスターズで、日本の選手が優勝するなんてねえ。朝早くからテレビで見ていて、うれしくて感動して、涙が出そうになりましたよ。マスターズはメジャーの中でいちばん華やかで美しくてエキサイティングで、招待されて栄誉を感じる大会ですよ。プロならぜったいに袖を通したいグリーンジャケットを、東洋の、日本の、松山が着ちゃったものな。凄いことよ。――マスターズの前の2試合で予選落ちしていたし、パットの調子がいまいちでしたから、まさか勝つとは思っていませんでした。陳さん ほんと、そうだ。1メートルぐらいの距離を外してバーディがとれなかったりボギーにしたりね。ところがマスターズでは別人のように入っていたものね。パットが入れば勝つんだ。プロはパットなんですよ。パターを替えたって聞きましたよ。――陳さんは1963年から6年連続でマスターズに招待されて、すべて決勝ラウンドに進みましたが、パットが良ければもっと上位に入れたと残念がっていましたね。陳さん そうなんだ。昔と今では比較になりませんがね、当時、日本のグリーンはコーライでしょ。それに慣れている私がオーガスタのベント芝を攻略できるわけがないんだ(笑)。それでもわりあい成績が良かったのはターフをしっかりとって打っていくダウンブローショットが身についていたからですよ。ボールを薄く打つショットをやっていたら芝に沈んだボールを打てないでミスが出て、たぶん予選落ちを続けたはず。――松山は29歳。陳さんが初めてマスターズに出たのは31歳でした。陳さん そう。技術的に脂がのっているころですよ。ただ、脂がのっているだけでは勝てないからな。松山はアメリカに腰を据えて戦っていたから勝てたんだ。マスターズに出るためにだけオーガスタに乗り込んで、勝てるほど甘くはないよ。時差の影響があるし、疲れもあるし、本調子でない状態で戦ってもオーガスタは攻略できません。――松山は今回、ショットもキレキレでした。陳さん あの立派な体格は欧米の選手に少しも見劣りしないものね。からだ中に体力や気力が充満しているというかな、ショットに迷いが見られなかった。スウィングに思い切りの良さが出ていましたよ。いいときの感覚が甦ってきたのかもしれないね。300ヤード近く飛ばす人がフェアウェイをキープするのは大変な技術。250ヤードの人がそれをやるのと大きな違いですよ。至難だ。――これをきっかけに松山は他のメジャーも獲れますかね。陳さん 獲れますよ。(ジャック)ニクラスにしてもタイガー(ウッズ)にしても、強い選手は年に2回3回とメジャーを獲るものなんだ。松山もその力があることを今回の優勝で証明したね。アイアンの距離感と方向の正確さは豊富な練習量と間違いのない練習法に裏打ちされていたと思いますからね。ただし、全米プロと全米オープンは無名のとんでもない選手が飛び出すことが多いですから、勝つには運と相当の頑張りが必要ですよ。しかし全英オープン(今年はロイヤルセントジョージズ)にはそのような選手は出てこないんだ。だから松山の実力があれば簡単に勝てるのよ。 陳清波ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた 月刊ゴルフダイジェスト2021年7月号より
  • TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe 松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、最先端のゴルフを語る当連載。今回は、松山がマスターズ優勝という快挙を成し遂げられた理由について、改めて考えてみた。 GD 松山英樹のマスターズ優勝の瞬間、多くの方が涙しましたが、黒宮さんはいかがでしたか?黒宮 僕は涙は出なかったです。GD どうしてですか?黒宮 マスターズに勝つことは快挙ですけど、でも彼は長年PGAのメンバーとしてやってきて、過去5勝(※1)を挙げています。このクラスの選手なら誰が勝ってもおかしくないというトップの中でずっとやってきたわけですから、英樹が勝つのは不思議ではないと思って見ていました。彼がマスターズに優勝できたことも凄いですが、29歳の時点で10回もマスターズに出ていることに驚きますよね。目澤 それは間違いないですね。黒宮 どの試合もそうですが、特にマスターズなどは、いかにその週に自分の体調とかフィーリングのピークをもってこられるかが大事なポイントになりますから、この経験は大きいですよね。GD そういうコンディショニングを含めたピークの持っていき方を、10年間の蓄積として身につけていたということですか。目澤さんは、一緒にいてそれを感じましたか。目澤 4月のマスターズに向けて、技術的なことを含めて調整をしていこうという流れは、年明けの1月から始まっていたと思いますね。GD そんな長期的なスパンで取り組むわけですか。目澤 僕が見ていて凄いと思ったのは、マスターズが近づくに連れて彼が一貫してドロー(※2)にこだわって打ち続けた姿勢です。3月のアーノルド・パーマー招待のときもプレーヤーズ選手権のときも、とにかくドローを打ち続けていましたから。彼の目指すモノに対して何かを継続する力は、本当に凄いですね。黒宮 中学から英樹を知っていますが、そこは昔からずっと変わらないですね。自分が掲げる目標を達成するために、自らにテンションを与え続けることってなかなかできないことですが、英樹はそれができる。そこが彼の凄さだと思いますね。GD ほかに調整段階で凄いなと思ったことはありますか。目澤 マスターズ2週前のマッチプレーでは初日、2日目と負けましたが3日目はパトリック・カントレーに対して6バーディくらい取ってボロ勝ちしたんです。もうチャンスはなかったので入れ込まなくてもいいのに、彼は朝からいつもと同じルーティンでウォーミングアップをこなし、練習場でも周りを寄せ付けない集中力で球を打っていました。あれは驚きでしたね。GD 勝っても決勝ラウンドに行けなかったんですよね。目澤 そうなんです。でも彼の中では、2週間後のマスターズを見据えて、プレッシャーが掛かった場面でこの時期にどういう球が出てどういうミスが出るかということを、直前の試合の中で確認していたように思います。黒宮 マスターズ優勝という日本人にとって分厚かった壁を、英樹は中学生時代から変わらぬ情熱で、その一点を叩き続けてきた。そして、決して開かないと思われた穴が開いた。日本人にもできるということを、そのひたむきさで証明してくれたと思います。 (※1)2010年アジアアマの優勝で招待され翌11年マスターズで27位、日本人初のローアマチュアに。14年からPGAツアーに参戦し、これまで「メモリアルトーナメント」など5勝を挙げ、今年のマスターズ制覇でツアー6勝目を達成。(※2)2番、5番、8番、9番、10番、13番ホールと難しい左ドッグレッグのホールが多いオーガスタナショナルでは、ドローヒッター有利と言われる。昔、リートレビノがマスターズを勝てないのは彼が天然のフェードヒッターだからと言われた。最終18番は唯一の右ドッグレッグホールだが、松山英樹は「18番のティーショットをフェアウェイに打てたことが優勝のキーポイントだった」とコメントした 目澤秀憲めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任 黒宮幹仁くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導 週刊ゴルフダイジェスト2021年6月15日号より
  • 腕と体が完全に同調! 松山英樹の世界一アイアンを青木翔が解説
    PHOTO/Taku Miyamoto、KJRTHANKS/マスターズ・トーナメント、ザ・プレーヤーズ選手権 松山英樹の代名詞といえば、切れ味鋭いアイアンショット。松山のコーチ・目澤秀憲氏と公私ともに親しい仲の青木翔コーチが、多忙を極める目澤コーチに代わってそのスウィングの凄さを解説してくれた。 青木翔あおきしょう。1983年生まれ。全英女子オープンで渋野日向子をメジャー優勝へ導き、今年のオーガスタ女子アマで優勝した梶谷翼を指導するカリスマコーチ。2020レッスン・オブ・ザイヤー受賞 トップが低くなったのは「腹筋」で上げている証拠 GD 今回のマスターズで、テレビを見ていた多くの人が、松山選手のトップの位置が明らかに以前と変わったと感じていたと思います。この点について、教えてもらえますか。青木 たしかにそうですね。結論からいうと、トップを変えたのではなく、テークバックでの体の使い方を変えた結果、あのトップの位置に収まっている、と考えるべきだと思っています。要するに、手や腕の余計な動きを排除して、腹筋を使った捻転によって作られたトップということ。以前は、テークバックでクラブを手と腕で持ち上げる動作がありましたが、それが解消されました。これにより、正確無比なショットを手にすることができたと僕は考えます。 以前は、腕をやや上へ持ち上げる動作が入っていたため、現在と比べてトップの位置がやや高い。一方現在は、トップの位置で左腕と右肩が重なっている。これは手と腕が勝手な動きをせず、腹筋でしっかり捻転している証拠。決して手先でトップを低くしているのではない 「体で打つ」を体に染み込ませてきた GD 手と腕で持ち上げる動作がなくなったことで、トップの位置が変わったということですが、3月の試合会場で、松山選手が腕に結束バンドをつけて練習している姿を目撃しました。この練習と関係があるのでしょうか? 青木 まさにこの写真の練習こそが、腹筋を中心とした体幹でクラブを振るためのドリルですね。松山選手は、基本的にヘッドをやや上から入れてフェードを打つのが得意。もちろんドローも打ちますが、ドローを打つ時はやや手元でクラブを操作して打っていた印象があります。でも、この練習をすることで、手先が余計な動きをせず、体のターンで振るスウィングが身につきます。結果として、ヘッドの入射角が緩やかになり、体の回転で自然と球がつかまるスウィングになります。最終的に、ドローもフェードも手先ではなく、体の回転を主としたスウィングによって実現できるようになったことで、ショットの安定感がさらに増してきたのだと思います。 手先を使わず体のターンだけで打つ 手でクラブを操作してボールを操るのではなく、体のターンでボールをつかまえるスウィングへ改造するため、練習用の結束バンドを使う松山。感性を重視する松山選手がこうした練習器具を使うのは珍しく、それだけ覚悟を持って取り組んでいたといえる 体幹を使うことで再現性が高まる 手でクラブを上げてしまうと、インパクトの再現性が低下し、距離や方向性のバラつきが生じてしまう。手を使わず体幹(腹筋)を使って振ることができれば、インパクトで操作する動きが不要になり、出球やスピン量が安定。常に狙った弾道を実現できるようになる 世界一のアイアンスウィングをじっくり鑑賞 腹筋を使ってテークバックしているため、ハーフウェイバックからトップにかけて腕でクラブを持ち上げる動作が消え、クラブと体が一体となったコンパクトなトップになった。さらに、フェース面がスウィング軌道に対して常にスクエアを保っているので、ムダなフェースターンが起こらず、スピン量や出球の管理がしやすい トップで右足の裏全体で体重を受け止められているので、ダウンスウィングからインパクトにかけて、右足が浮かずに粘りつつ、左足で地面を蹴ることができる。そのためインパクトで上体が起き上がらず、ボールを力強く押し込むことができ、方向性に加えて飛距離もしっかり出すことができる 注目は3日目圧巻の「ライン出し」3選 GD 今回のマスターズで印象に残ったアイアンショットを教えてもらえますか。青木 3日目はすごかったですね。特に15番のセカンドショット、解説の中嶋プロもおっしゃっていましたが、まさに圧巻でした。1ヤードでもショートすれば池。さらに、あの硬いグリーンに対して、出球の高さ、初速、そしてバックスピン量までコントロールして、グリーンの止めたいところへ落とすショット力。小手先で合わせたショットでは、絶対に不可能ですよ。GD そこまで計算して打っているんですね。青木 自信を持って振り切れていますし、スウィング改造が上手くいったことを証明したショットだと思います。 12番・155Y・パー3ティーショット 雷雨のため一時中断となった11番でバーディを奪い、迎えた12番パー3。ショートアイアンのライン出しでピン右横3メートルにナイスオン。これを沈め7アンダーで首位に並んだ 15番・530Y・パー5セカンドショット ティーショットでフェアウェイセンターをキープ。残り205ヤード、グリーン左端のピンに対して、5番アイアンでカット気味に打ってピン右横2メートルにナイスオン。このイーグルパットを沈め、9アンダーとして単独首位に立った 16番・170Y・パー3ティーショット 右手前のピンに対し、8番アイアンでカット気味に打ち、ピン右横1メートルにビタッと着ける。これを難なく沈めて連続バーディーとし、トータル10アンダーで2位に2打差とした 週刊ゴルフダイジェスト2021年5月11・18日号より こちらもチェック!マスターズ制覇までの軌跡を追った完全保存版蔵出し写真も満載です https://my-golfdigest.jp/bpcontents/mgd202106sp/
  • マスターズ優勝を手繰り寄せた松山英樹のクラブセッティングを公開!
    プロの14本のクラブセッティングと、それらのクラブを選んだプロのこだわりを紹介する連載「プロスペック」。今回は、マスターズ優勝の3週間前に撮り下ろした松山英樹のクラブ写真を公開。 松山英樹まつやまひでき。1992年生まれ、愛媛県出身。アマチュア時代の11年に国内男子ツアーで優勝し、翌年プロ転向。ルーキーイヤーで賞金王となり渡米。今年、日本人で初めてマスターズを制覇 スウィングをいじるのと同じぐらい松山はクラブもいじる。同じドライバーを使っているように見えても、ヘッドが違っていたり、ヘッドの中に入れるジェルの位置が違っていたりする。マスターズの週になってもギリギリまで調整を重ねていたほどだ。ただ、マスターズの週は松山の要求が微妙に変わっていたと、ダンロップの松山担当・宮野敏一氏は言う。「あの週はクラブへの注文がはっきりしていたんです。なぜそうしたいのかが明確で、ピンポイントな提案でした。そこからも、松山プロの調子の良さが感じられました」(宮野)14本の中で唯一大きく変わったのはパター。松山といえば大のキャメロン党だが、オーガスタではソールの重りを替えられる新しいニューポート2に替わっていた。さらにグリップも、ラムキンのコード入りに。「目澤コーチと話したうえで、右手が太くなるようなグリップを試そうとなりました。最初はラバータイプのグリップで、その後コード入りに替えました。コードにしたのは角が立っている感じが良かったのだと思います」(宮野) 実に100個近くのヘッドを試したという松山。ジェル位置やヘッドの塗装など細部にまでこだわった。宮野氏によるとプロでは珍しくつかまり顔を選ぶとか マッスルバックながら顔が少し大きめなのが特徴で、この大きさが松山好み。市販モデルはスリクソン特有のV字型ソールだが、松山はフラットなソールにチューニングしている 56度と60度はアプローチで多様。フェースを開いたときにソールの当たり方が変わらないよう、ヒール側を削りすぎないようにしている マスターズ直前にスコッティキャメロンの新しい「ニューポート2」に変更。グリップはラムキンの「ディープエッチ パドル コード」というモデルを使用 松山英樹の14本1W スリクソン ZX5(9.5度)/ツアーAD DI-8・TX3W テーラーメイド SIM2(15度)/ツアーAD DI-9・TX3UT テーラーメイド SIM UDI(19度)/エレベート ツアー・X1004I スリクソン Zフォージド(23度)/ダイナミックゴールド・S4005I スリクソン Zフォージド(26度)/ダイナミックゴールド・S4006I スリクソン Zフォージド(29度)/ダイナミックゴールド・S4007I スリクソン Zフォージド(33度)/ダイナミックゴールド・S4008I スリクソン Zフォージド(37度)/ダイナミックゴールド・S4009I スリクソン Zフォージド(41度)/ダイナミックゴールド・S400PW スリクソン Zフォージド(46度)/ダイナミックゴールド・S400AW クリーブランド RTX4 プロトタイプ(52度)/ダイナミックゴールド・S400SW クリーブランド RTX4 プロトタイプ(56度)/ダイナミックゴールド・X100LW クリーブランド RTX4 プロトタイプ(60度)/ダイナミックゴールド・X100PT スコッティキャメロン セレクト ニューポート2 プロトタイプBALL スリクソン Zスター XV※クラブの写真は3月17日に撮影。パターはマスターズ直前に変更 週刊ゴルフダイジェスト2021年5月11・18日号より 完全保存版! マスターズを制した松山英樹のクラブへのこだわりをさらに詳しく知りたい方はコチラ https://my-golfdigest.jp/bpcontents/mgd202106sp/
  • TEXT/Kenjiro Hattori(週刊GD) PHOTO/Taku Miyamoto マスターズで歴史的な優勝を遂げた松山英樹。4日間を通して安定したドライバーショットをみせ、アイアンショットは何度もピンに絡みパトロンたちから称賛の声を浴びていた。長らく優勝から遠ざかっていた松山英樹がなぜこのタイミングで覚醒し優勝をたぐり寄せられたのか? マスターズからさかのぼること1カ月、3月のアメリカで彼を現場で見てきた番記者がその勝因を技術面から探った。 クラブがシャフト1、2本分下から下りるようになった 松山英樹がオーガスタのグリーン上でグリーンジャケットを羽織る約1カ月前のこと。私は、アーノルド・パーマー招待、プレーヤーズ選手権の2試合の取材で、久しぶりに松山のもとを訪れた。そこで見た松山英樹は明らかに別人だった。トップは以前よりフラットになり、トップでのフェース向きも今まで完全にオープンだったものが、スクエアフェースに近づいていた。また、今までドライバーを打った後、フィニッシュでピタッと止まっていたのが、自然にリバウンドするようなスウィングに変わっていた。松山がスウィングをいじるのは何も珍しいことではない。たとえ「60 台」を出した日でも納得のいかないショットがその日に出ていれば、ホールアウト後に練習場へ向かって日没まで球を打つ、そんな姿は日常のことだ。ただ、いつものスウィングチェンジは見た目には分からないほどの“マイナーチェンジ”が多かったが、今回の改造は明らかな“ビッグチェンジ”だった。スウィングがそれだけ変われば、弾道も明らかに変わる。フェードの印象が強かった松山だったが、ストレートからややドロー気味の球が増え、試合が始まるとここ数年は見たことのないような左へのミスが出ていた。松山がドライバーでミスショットをしたときはたいてい右のラフか林だが、私が見た2週間の試合、ドライバーの着弾点はフェアウェイか左のラフということが多かった。ただし、その「左」を嫌がっているというよりは、以前より明らかに「球がつかまっている事実」に本人は満足している様子だった。 以前でトップでフェースがオープン(正面側を向く)だったが、現在はスクエア(フェースが斜め上を向く)に変わった。手元の位置は以前より低く(フラットに)なっている 新しいスウィングを2年前のスウィングと見比べてみると、トップの形の違いもあるが、それ以上に目を見張るのはダウンスウィングでのクラブの下りる位置の違いだ。 2年前の写真を見ると、切り返しで右の肩口の中心よりやや上から、スティープ気味に(上から)クラブが下りていた。出球も、左に出るような、ときにカットに近い球だった。それが今は右の肩口の中心よりシャフト1、2本分下からシャロー気味に下りて、出球も真っすぐからやや右へ出るように変化していた。切り返しでクラブを下ろす位置をシャフト1、2本分ずらすというのは、並大抵の努力ではできない。まして試合を戦いながらそれをやるのは至難のワザ。 以前は右の肩口の中心よりやや上から下りていたが、現在は右の肩口より下から下りてきている それでも、年が明けてから2カ月ほどの短いスパンのなかで、松山はその難しい課題に取り組み始めていた。「球がつかまっている」その事実は、世界ランキング上位の選手であっても、アマチュアと同様に嬉しいのかもしれない。いつになく楽しそうにチームのみなで会話しながら練習する姿を見て、そう思わずにはいられなかった。 目澤コーチとタッグを組み流れをつかんだ もちろん、そのスウィングの変化には、新コーチの存在が大きい。今年の頭から、松山英樹がゴルフ人生で初めてコーチをつけた。今までは、それこそスウィングを自分で作ってきたわけで、上手くいかないときも自分で解決法を探してきた。練習場で球を打ってはうなだれる姿は、見慣れた光景だった。自分の感覚のなかで答え合わせをしてきた男が、ついに第三者による”変化“を求めたのだ。新コーチの目澤秀憲は、松山の要求に対し、始めこそ手探りで対応していたが、徐々に自身のエキスを注入していった。3月頭の頃は、目澤がアメリカに渡ってからちょうど1カ月が経った時期。目澤が得意とするスウィングの分析力・コーチング力が、松山のスウィングの悩みを徐々に減らしていっていた。 プレーヤーズ選手権の会場、TPCソーグラスの練習場。松山のやりたいことに対して目澤がアドバイスを送る 松山の“感覚”をコーチが補完 実際に練習場の松山と目澤のやりとりを見ていると、去年までの練習と明らかに違うことがあった。ひとつはフライトスコープでデータを必ずチェックすること。これまでも弾道測定器を横に置いて数値を見ることはあったが、ここまで毎回データを見ることはなかった。目澤のアドバイスのもと、クラブ軌道や出球の数値をチェックして、どのようなスウィングをしたら再現性が高い、いい軌道、いい出球が出せるかを探っていたのだ。 また、目澤は1打ごとにスウィングを動画で撮り、松山に動画を見せ、その都度、2人でディスカッションを行っていた。今まで感覚的にやってきた男のもとに、デジタルでの客観的な分析が入り、松山が持つアナログ的な部分を補完する。そんな印象を受けた。そんなデジタルとアナログの融合をとくに感じたのが、あるひとつの練習だった。 プレーヤーズ選手権が行われたTPCソーグラスの練習場で、松山はボールの先に1本の棒を刺し、その棒に当てないように球を打つ練習をやっていた。まさに「出球を管理する練習」であり、松山はその棒の右に球を出すように打っていた。 棒の右に打ち出す練習を繰り返す ターゲットラインの延長線上に棒を立てて、その右側にボールを通す練習を繰り返していた 推測するに、「クラブが上から入って出球が左に出る」という癖を直すために、この練習で出球を右に矯正し、「つかまった球を打つ」方向へシフトしていたのだ。ただ、短いクラブではできても、長いクラブになると球を棒に当ててしまう。当たらないよう打つにはどんなスウィングをすればいいのか? 撮った動画をチェックして、目澤と話し合う。そのやり取りを繰り返していた。基本的に目澤は、「こういった動きをしたらどうか」というアドバイスはするが、それを押し付けたりはしない。具体的な体の動かし方は、最終的には松山本人が答えを探さなければいけない。本人が納得する動きでないと、たとえ練習場でできてもそれを試合でやるのが難しいからだ。取り組んでいることを、実際に緊張感のあるロケーションでなかなかやり切れるものではない。ましてやそれをPGAツアーという難コースだらけの舞台でやるのだから……。 追い求めてきたスウィングを最後までやり切った アーノルド・パーマー招待はギリギリの予選通過で、決勝ラウンドで追い上げたものの18位タイ、翌週のプレーヤーズ選手権は初日に76を叩き、2日目巻き返したものの1打足りずに予選落ちを喫していた。やりたい理想のスウィングはあるが、まだその理想には到達していない。正直、新しいスウィングをものにするには、まだまだ時間がかかると思っていた。しかし、マスターズの4日間で見た松山英樹は、取り組んできたスウィングを完全にものにしているように思えた。 自分なりの答えを松山は見つけ出したのではないか。フィニッシュで手を離すことなく、自信をもって打球を見守る松山の姿を見ると、そう思わずにいられなかった。実際、松山の言葉にも変化があった。マスターズの試合前のコメントで、「いい状態、今週は楽しみです」と話していた。「いい状態」という言葉が松山の口から出たことが、今まで松山の取材をしていて過去にあっただろうか。しかもその言葉を、松山本人が一番優勝を欲しているであろうマスターズを前にして発したということは、スウィングに“相当な手ごたえ”を持っていたに違いない。そのわずか数週間前には、「マスターズのことなど今はまったく考えられない」と言っていたのに、だ。 マスターズの週についに感覚をつかんだ では、いったい何をつかんだのか? きっかけはどんなタイミングで生まれたのか?優勝から3日後に行われた帰国後の会見で、松山にその質問をぶつけてみた。「プレーヤーズ選手権で予選落ちしましたが、そのときは自分のなかでは悪い状態とは思っていなかったんです。でもその後の2試合で、自分が良かったと思うときから真逆な感じがあって。本当になんでこうなったんだろう、1月からやっていることがムダになってしまった感じがして……。でもそれから少しずつコーチ、キャディ、トレーナーと話をして、徐々に徐々に良くなってきて、前の週(バレロテキサスオープン)には良くなっていました。マスターズの週に入って、『あとここがうまくいけばな』というところまできていました。でも水曜日の練習が終わってから、『今週はいけるかもしれない』っていうのは自分のなかで何かがあったんです」その松山がつかんだ新しいスウィングは72ホールを戦い切るのに十分だった。3日目の「65」も圧巻だったが、優勝をほぼ決定づけた、18番のドライバーでのティーショットは、苦しんでもがいて試行錯誤してつかんだ、まさに「スウィング改造の成功の果実」だった。チーム松山に目澤というコーチが加わり、松山がもうひとつの“目”を持ったのも大きかったが、最終的にはやはりアナログな感覚の部分で松山が答えを見つけ、彼はそれを大舞台でやり切ったのだ。 左から飯田光輝トレーナー、早藤翔太キャディ、ボブ・ターナー通訳、松山英樹、目澤秀憲コーチ その答えが何なのか、何に気づいたのかは、おそらく松山のことだから聞いてもはぐらかすだろうが、いつか時間が経ったら、その答えを聞いてみたいと思う。この調子なら、松山英樹はまだまだ勝ち続けそうな気がする。日本人初のメジャーチャンプという称号をひっさげ、さらに強くなった松山英樹をこれからも追いかけていきたい。 週刊ゴルフダイジェスト2021年5月4日号より 緊急発売!マスターズ制覇までの軌跡を追った完全保存版蔵出し写真も満載です https://my-golfdigest.jp/bpcontents/mgd202106sp/
  • アジア人初のマスターズチャンピオンとなった松山英樹。ここ2年、もっとも近くで彼を支えてきた早藤将太キャディのある行動が現地で大きな話題を呼んでいる。 優勝者にはグリーンジャケット、キャディには18番のピンフラッグが戦利品となる。早藤キャディも黄色のフラッグを旗竿から外す感激を味わった。松山はこれまで5勝だが、早藤キャディとコンビを組んでからの初勝利が夢舞台マスターズでの1勝となった。「初めてなのでピンを戻せばいいのかその場に置くのかわからなかった」という初々しさ。考えた末、戻すことを決め18番グリーンのカップに向かい、まずピンを戻すと、帽子を取りコースに向かって一礼した。このシーンがスポーツ専門チャンネルESPNにアップされるとツイッター動画が瞬く間に170万回再生され、中継局のCBSやPGAツアーのサイトでも紹介されることに。「戦ったコースに敬意を表すもっともシンプルで有効な表現」「歴史的勝利をキャディが一礼で締めくくった」などウェブサイトに多くの記事が掲載された。日本ではプロやジュニアでもコースに一礼する選手は少なくない。その場に立てることに感謝を表す姿は見慣れているが、海外の受け止めは異なり、称賛の的となったのだ。何気ない出来事が注目され世界を駆け巡る時代に早藤キャディの行動が期せずして日本の良さを世界にアピールする形となった。表彰式で誇らしげにグリーンジャケットに袖を通した松山。「(早藤キャディとの)優勝は初めてだったのでうれしい」と相棒の労をねぎらい、一緒に記念写真に収まった。ちなみにアメリカでは早藤キャディの一礼姿のイラスト入りのTシャツが「BARSTOOL STORE」というサイトで28ドルで発売中だ。 早藤キャディの初優勝は、なんとマスターズ!(PHOTO/Taku Miyamoto) 週刊ゴルフダイジェスト2021年5月4日号より
  • PHOTO/Taku Miyamoto、Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa 日本時間4月12日午前8時3分。日本のゴルフの歴史が変わった。初出場から数えて10回、松山のマスターズをプレイバック! 松山が初めてマスターズに出場したのは2011年。大会直前に東日本大震災が起き、「出場していいのかわからなかったが、周りの方の後押しで出ることを決めました」と、複雑な思いの中出場したにもかかわらず、ローアマを獲得。結果で被災地を勇気づけた。その後、松山はプロになり、2013年には日本で賞金王に。その後活躍の場をアメリカへ移すと、2017年までに5勝を挙げ、マスターズでも優勝候補の一人として名前が挙がるまでになった。 成長とともに、発言も変わった。マスターズ初出場だったときは「上位で戦えるようになりたい」と、優勝は“夢”だったが、15年には「優勝しに来てますから、悔しさしか残っていません」と“目標”へ。そして2021年、10度目の挑戦で、ついにグリーンジャケットに袖を通したのだった。 松山英樹のマスターズ10年史 2011年(アマチュア時代)27位タイ 東日本大震災の年周囲の後押しを受け出場ローアマを獲得し「まだすべてが足りないけど、パットは少し通用したかも。早く上位で戦えるように頑張りたい」と話した 2012年(アマチュア時代)54位タイ 最終日に崩れてローアマを逃す「パットには自信があったから情けない。またここに来られるように、反省して今日からまたしっかりやっていきたい」と悔し涙 2014年(世界ランク26位)予選落ち 左手首のケガの影響もあり予選落ちプロになって初めてのオーガスタは予選落ち。「悔しいという感情以外ありません」 2015年(世界ランク17位)5位 自信を深めた大会自己最高の5 位でフィニッシュ。「嬉しい気持ちはありますけど、優勝を目指して来ているので、やっぱ悔しいですね」 2016年(世界ランク14位)7位タイ 2年連続トップ10も満足せず「緊張はなかった。でも技術の不安がそのまま結果に出てしまった。それを克服して勝てるように頑張りたい」 2017年(世界ランク4位)11位タイ パッティングに課題を残す「いくらショットが良くてもパットのレベルが高くないと上では戦えない。パットの調子が戻ってくればもっと上で戦えると思っている」 2018年(世界ランク6位)19位 結果には不満もやり切ったこの年の2月に左手を痛めた。「ケガした時点でここまでのスケジュールは考えた。よく頑張ったという感じです」 2019年(世界ランク26位)32位タイ 本来の実力を発揮できず肩を落とす調子が上がらないままオーガスタへ。「感覚的なズレがここまで大きくなることは今までなかった」 2020年(世界ランク18位)13位タイ 初の秋開催にも上手く対応秋開催&無観客のマスターズ。「上手くいったところもある。来年は必ず勝てるようにしたい」。その言葉は現実となった(Photo by Jamie Squire/Getty Images) 2021年(世界ランク25位)優勝 10年分の想いが爆発したような最高の笑顔で高々と両手を上げた 戦友たちもSNSで“HIDEKI”を祝福 ●バッバ・ワトソン「何という偉業。世界中の若い人にゴルフの魅力を伝えています。驚いた!」●ジャスティン・ローズ「ヒデキ優勝おめでとう。ヒデキと日本にとって素晴らしいことだ」●リー・ウエストウッド「ヒデキとキャディは私がこれまで見た選手の中で最も敬意を表する2人かもしれない」●パトリック・リード「素晴らしいプレーでした。初のグリーンジャケット、おめでとう!」 マスターズチャンプの使用ボール「ZスターXV」を3名様にプレゼント! 松山が使用している「スリクソンZスターXV」ボール1ダースを3名様にプレゼントします! 応募はこちらから 月刊ゴルフダイジェスト2021年6月号より
  • 「男の顔は履歴書」と言ったのは大宅壮一だったが、松山英樹が10年前に出場したマスターズのときの顔と比べてみると、彼の“進化”が見えてくる。 顔面評論家の池袋絵意知氏は「鼻から下側の、顔の下3分の1の肉付きがよくなったことによって安定感が増しましたね」と10年間の変化を語る。さらに「目は細く切れ上がっていて精神的にも強い。10年前と比較すると、目の焦点がしっかり定まって、以前にも増して気力が充実しているように見えますし、鋭さが増し集中力も高くなっているのが分かります。スタミナを示す鼻も以前より肉付きが良くなり、やはり向上しているようです。人中(鼻と口の間)のミゾが薄れてきたぶん、荒々しさは減り安定期に入ってきました。口は締まりがあって気持ちも引き締まっていますが、同時に口角が上がり気味になっています」 (左)2011年:ガッシリとエラが張った四角い顔にほど良く肉がのった輪郭(PHOTO/Tadashi Anezaki)(右)2021年:顔の下3分の1の肉付きが良くなり、目の焦点が定まっている(PHOTO/Taku Miyamoto) そして要注目なのが歯だという。「矯正をしたのか、前歯の隙間が目立たなくなっています。歯並びが良くなり歯の噛み合わせも良くなったことで、体全体のバランスも良くなったのではないでしょうか。見た目にも10年前は下の歯が少し見える子どもっぽい笑顔でしたが、今回の写真の笑顔を見ると下の歯は見えず、上の歯だけが見える理想的な笑顔になりました。以前よりもあご先がグイッと前に出てきて、自信の表れが見てとれます」また、松山の顔を見るうち、メジャーリーグで前代未聞の活躍をしている大谷翔平との共通点も発見。「顔の下3分の1の肉付きがよく、安定感のある輪郭や、アゴ先の出方、目の焦点の定まり具合などがよく似ています。両者とも努力と経験に裏打ちされた信念を感じる目です。眉が濃く太く一文字なところも共通していて、実行力と忍耐力があり肝が据わった相をしています」という。スターになるべくしてなった顔ということか!? 週刊ゴルフダイジェスト2021年5月4日号より
  • PHOTO/Tadashi Anezaki 今年のマスターズでメジャー初優勝を飾った松山英樹。そのちょうど3年前に務めたプロ野球の始球式で、メジャー級(?)の剛腕を披露していた。 「ナイスピッチング!」 始球式後の会見で記者からそう声をかけられた松山。 「全然ダメ。ワンバンしちゃいました」 いかにも自分に厳しい松山らしいコメントだ。 2018年4月14日の楽天-西武戦でまっさらなマウンドに上がった松山には、いろんな思いがあった。 「(震災のあった)7年前に始球式をさせてもらってから、何回かお話させていただいたことがある。ニュースを見て本当に驚いた」と言うのは、その年の1月に亡くなった星野仙一さんのこと。 震災の年、マスターズでローアマに輝いた松山は東北楽天の本拠地での開幕戦で始球式を務めた。星野さんとはそれ以来親交があり、何度も始球式に誘われていたというが、米ツアーの多忙なシーズン中、なかなか時間を作ることができなかった。 「もっと早く実現できていれば……」と悔しさをにじませながらも、「あの震災のあと、マスターズに出場できたのは、東北の方々のおかげ。みなさんの応援がなければ今の自分はなかった」と感謝を口にする。 2018年4月14日、東北楽天の本拠地「楽天生命パーク宮城」に登場した松山を大声援が迎えた。背番号は親交のあった故・星野仙一氏の「77」 「がんばろう東北デー」として開催されたこの日の試合には多くのファンが詰めかけ、“世界のマツヤマ”を大声援が包み込んだ。 投球後のインタビューで「真ん中に投げたかったけど……残念です」と語った松山。背負わせてもらった「77番」に恥じぬよう、最高の投球で感謝を伝えたかったのではないか。 3年後、メジャー、しかもマスターズという最高峰の舞台でウイニングパットを沈めた松山。天国の闘将も「よくやった!」と褒め称えていることだろう。 室内練習場で松山の投球を見た則本昂大投手は、未経験とは思えないきれいなフォームに「教えることなんてないですよ」と太鼓判。実は前日と前々日に50球ずつ練習して、ひじがパンパンだったという。ボールはキャッチャーの手前でワンバウンドし、球速は115km/h。「始球式でこの球速はなかなか見ない」と球団関係者は驚いたが、当の松山は「120km/hは出したかった」と納得いかない様子 「オーガスタの1番ティーより全然緊張しました(笑)」 野球は遊び程度でほとんど経験がないという松山だが、この見事な投球フォーム。しっかりと軸足に体重が乗り、左足への体重移動もスムーズ。強靭な下半身があるからこそなせるわざだ こちらもチェック!
  • 日本人として初めてマスターズを制した松山英樹が使用するドライバーが、スリクソン「ZX5」。2021年GDアワード、クラブ・オブ・ザ・イヤーのドライバー部門を受賞した、この「ZX」シリーズとは、どんなクラブなのか。松山英樹が4年ぶりにスリクソンのドライバーをバッグに入れた理由とともに見ていこう。 PHOTO/Takahiro Masuda 「ZX」はPGAツアー選手をターゲットにして作られた 毎年恒例のゴルフダイジェストアワード、今年度のクラブ・オブ・ザ・イヤーのドライバー部門を受賞したのは、スリクソンの「ZXシリーズ」だ。ZXが大きな注目を集めたのは昨年8月。PGAツアーの「BMW選手権」で、松山英樹が4年ぶりにスリクソンのドライバー(ZX5 プロタイプ)を実戦で使用したことが大きな話題となったからだが、まずはこの「ZXシリーズ」がどんなモデルなのかを見ていくことにしよう。「ZXシリーズ」のコンセプトを一言でいうと、「PGAツアーの選手をターゲットに開発されたモデル」だ。つまり、スリクソンが世界最高レベルの舞台で戦うトッププロたちを満足させるために、“世界基準”で作り上げたクラブということだ。世界のトッププロを満足させるには、まずは「顔のよさ」が必要だが、ZXでは反発性能的に有利なカップフェースではなく、あえて開口型フェースを採用することですっきりしたトップラインを実現している。もちろん顔のよさだけでトッププロが使用してくれるほど現在のドライバー競争は甘くない。昨今のツアーでは飛ばし屋が上位に並び、ドライバーの飛距離性能はアマチュアと同様にプロたちにとっても絶対的に必要なものだ。この点については、剛性をエリアによって変えた画期的な4層構造の「リバウンドフレーム」を採用することで、ルール上限の高初速を安定的に生み出すことに成功した。 顔の良さと飛距離性能を両立 Point1 開口型フェース採用ですっきりとした顔つきに反発性能を考えると「カップフェース」のほうが有利だが、あえて開口型フェースを採用することでネックからトウにかけてのラインをすっきりと見せることに成功 Point2 剛性の高いエリアと低いエリアを交互に配置した4層構造フェースは剛性を低めに、フェース周辺部は高め、折り返し部は低め、クラウンとソールは高めと剛性の高いエリアと低いエリアを交互に配置した「リバウンドフレーム」で反発性能をアップ Point3 深重心&高慣性モーメントでやさしく飛ばせる前モデルよりも重心深度を深くし、慣性モーメントを高めることで、ミスヒットに対する許容性を大幅に向上。トッププロたちにとっても、やさしく飛ばせることは大事な要素なのだ Point4 寛容性重視の「ZX5」操作性重視の「ZX7」2モデルを用意高い飛距離性能はそのままに、より重心深度が深く許容性を重視した「ZX5」と、やや浅めの重心深度でコントロール性を重視した「ZX7」の2タイプをラインナップ こうしたブレークスルーは、仮説と検証というプロセスを地道に繰り返すことで生まれる。ZXの開発にあたっても、ヘッドに網目状の大量のセンサーを張り付けてインパクト時のヘッド挙動を徹底的に分析するなかで、「ここを少し硬くしてみよう」「今度はこっちを軟らかくしよう」といったことをひたすらに繰り返したことによってたどり着いた成果なのだ。昨今の海外ブランド人気のなかで、スリクソンが日本の技術力により世界のトップブランドとしてのスタートラインに立ったモデルがZXシリーズなのだ。 松山がZXをバッグに入れるまで「初速とスピン量が決め手になった」 ZXはPGAツアーの選手をターゲットにしていたが、そこには当然ながら松山英樹も含まれていた。ご存じのようにここ数年、松山はスリクソンのドライバーを使用していなかった。これはスリクソンブランドを愛する松山からの無言のメッセージともいえる。開発陣もそのメッセージを痛いほどに感じ、開発の原動力にもなっていた。実は開発陣たちは少しずつ手ごたえを感じていた。ZXシリーズの前モデル「Z585/Z785」では飛距離性能に著しい進歩が見られ、メジャーで勝ち星も挙げていた。そうした実績も積み上げたなかで満を持して開発したZXシリーズ。松山が実戦投入した経緯をスリクソンのプロ担当・宮野敏一さんに振り返ってもらった。「松山選手は、昨年8月のBMW選手権から『ZX5 プロトタイプ』を使い始めたのですが、それまでもずっとテストはしていました。でも、実戦でも使えそうだなと思ったのは、BMW選手権の週ですね。ずっと使ってもらいたいという思いはありましたが、無理に使ってもらいたいとは思っていなくて。松山選手がいいプレーをすることがいちばんですから。それを、スリクソンのクラブでできたらいいなと思っていました。ZX5ならそれができるんじゃないかなという期待はありましたが、自信があったかというと、それは……。クラブを替えるって選手にとっては簡単なことではないですから」 4日間の平均飛距離が22Yも伸びた では松山がZX5の使用を決断する理由はどこにあったのか。「決め手になったのは、松山選手が納得できるボールスピードとスピン量のデータが出たということです。スピン量は2600回転くらい。それまでは2400回転ぐらいでした。2400だと、ちょっと油断してかぶったりすると2000回転くらいになってしまう。ZX5はスピンは入るけど飛びそうな気配があった。ボール初速が3m/sくらい伸びましたから」 そして大会前日の水曜日。宮野さんは実戦投入を“確信”することになる。「火曜日の練習場で手ごたえがあり、松山選手が『水曜日の練習ラウンドに持っていきます』と。練ランは(コロナの影響で)コースに入れず見送るしかなかったんです。松山選手はドチーピンを打って出ていきましたが、ZX5しか持っていかなかった。そのときに、このクラブをものにしようとしているのを松山選手から感じました。試合で戦うクラブの条件を満たしていましたし、これをものにすれば今よりよくなるというのを松山選手もわかっていました」4年ぶりにスリクソンのドライバーを使用した松山の4日間の平均飛距離は、それまでのシーズン平均を22Yも上回っていた。 プロ担当の宮野敏一さん(右) 「そこから11月のヒューストンOPまでは、毎日夜の12時くらいまでシャフトやヘッドのジェルの位置の調整など、いろいろやりました。ヘッドだけで30個は調整した。やれることって天文学的にあるので(笑)」PGAツアーの選手をターゲットにしたZXシリーズは、開発陣と現場のプロ担当による絶え間ない努力によって、最大のターゲットの獲得に成功したのだ。 「ZX」シリーズの開発を担当した住友ゴム工業・スポーツ事業本部商品開発部の平野智哉課長(左)と中村崇主査(右)に松山英樹のドライバーのこだわりについて聞くと、まずは顔の好みとして「トップブレードが真っすぐなこと」、さらに「重心位置が“遠い”こと」だという。「ZX7」ではなく「ZX5」を選んだ理由もそこにあると分析している 週刊ゴルフダイジェスト2021年4月13日号より 関連記事 https://my-golfdigest.jp/information/p14097/
  • 2021年のマスターズで松山英樹が優勝。悲願のメジャー初制覇を最高峰の舞台・オーガスタで達成。日本ゴルフの歴史上、初めてグリーンジャケットに袖を通した。 日本人として初めてグリーンジャケットに袖を通した松山(Photo by Kevin C. Cox/Getty Images) 最終日最終組、いやがうえにもプレッシャーがかかる1番ホールのティショットを右に曲げ、ボギースタート。日本人のグリーンジャケットはまたお預けとなるのか。そんな思いが頭をもたげるが、2番ティーに向かう松山の顔には笑顔が浮かんでいた。 2番パー5ですぐさまバーディを獲り返し、バウンスバック。他の選手が伸び悩むなか、ナイスパーを重ね、8番パー5で2つめのバーディ。奥からの難しいアプローチを、ワンクッションを使ってこともなげに寄せてみせた。 9番パー4では、350Yドライブを放ちセカンドをウェッジでピタリ。スコアを落とすどころか、2つ伸ばしトータル13アンダー、2位に6打差をつけて前半を折り返す。 同伴者にも恵まれた。 優勝争いをする相手がナイスプレーをすれば、素直に讃える。序盤で3番からボギー、ボギー、ダブルボギーとスコアを大きく崩したザンダー・シャウフェレ。そんな状況にもかかわらず、決して投げ出すことなく自分のできるベストのプレーを続け、同伴者の松山が良いプレーをすれば気持ちよく声をかける。 6番パー3ではナイスショットを放った松山のボールのすぐ内側につけるショットで応戦。先にグリーンに着いた松山は自分のボールマークを直すと、自然にシャウフェレのマークも直す。ザンダーがお礼を言ったように見え、松山もそれに応じる。実に気持ちのいい光景だ。 渋野日向子が全英女子オープンを制したとき、同伴者のリゼット・サラスが渋野のプレーを素直に讃えていたシーンが印象的だったが、こうした最高峰の舞台でそうした振る舞いができるのは、ゴルファーとしてだけでなく、人間としても一流と呼ぶにふさわしい。 ときおり笑顔をのぞかせる松山(Photo by Jared C. Tilton/Getty Images) ピンチは15番ホールで訪れた。 難しい10番、11番をパーで切り抜け、12番パー3をボギーとするも、13番パー5でまたしても見事なアプローチを披露し、バウンスバック。 バーディが欲しいパー5ですべてバーディを奪い、王者にふさわしいゴルフを展開する。 ところが4つ目のパー5、15番ホールのセカンドで、松山のセカンドはグリーン奥の池へ。アドレナリンで飛距離が出すぎてしまったのか。このホールをボギーとし、通算12アンダー。 一方、12番からの3連続バーディで9アンダーまでスコアを伸ばしていたシャウフェレがこのホールもバーディとし、最大7打差まで開いていた松山との差を2打につめる。途端に空気がピリリと張り詰める。 しかしその直後、今度はシャウフェレを悲劇が襲う。16番パー3、8番アイアンで狙ったシャウフェレのボールは無情にも池へ。このホールをトリプルボギーとしてしまう。 松山もここで1つスコアを落とし、トータル11アンダー。この時点で、2位のウィル・ザラトリスとは2打差。残り2ホール、まだまだ油断はできない。 本来であれば、置きにいこうとしてスウィングが縮こまってしまいそうなものだが、思い切りのいいスウィングは最後まで変わらない。18番のティショットも、315Y先のフェアウェイへ。西日に笑顔が輝く。 2mのパーパットは惜しくもカップをかすめるも、30cmのウイニングパットを沈め、1打差で逃げきった松山。 トータル10アンダーで日本人初のマスターズ優勝を果たした。
  • TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Takanori Miki、Tadashi Anezaki、Takahiro Masuda 2020年11月、「ヒューストンオープン」で久しぶりに優勝争いを演じた松山英樹。その陰には、意外な人物の存在があったという。コロナ禍でのツアー、2021年の展望など、一時帰国中の松山がすべてを語ってくれた。 4日間のうち必ずどこかで“やらかして”しまっていた ――米PGAツアーの2019-2020シーズンは、新型コロナウイルス蔓延の影響により、3月中旬の「プレーヤーズ選手権」から、5月上旬の「AT&Tバイロンネルソン」までの試合がキャンセルされ、その後もスケジュールの変更や無観客での開催を余儀なくされた。 GD 調子を保つのが難しいシーズンだったかと思いますが。 松山 「ジェネシス招待」(2月13~16日)のときは、スウィングに関してなんとなく「こんな感じかな」という手ごたえがあったんです。「アーノルドパーマー招待」(3月5~8日)で、初日にすごくいいスタートが切れて、「残りの3日間が楽しみ」と思ったんですが、結局、逆にぐちゃぐちゃになってしまって……。それで「プレーヤーズ」から試合がキャンセルになったので、どうしようかと迷いましたが、日本に帰ってくることにしました。最初は仙台で、途中からは宮崎で練習していましたが、当時の状況で、練習場所がきちんと確保できたのは、ラッキーだったと思います。 GD ツアー復帰は6月の「RBCヘリテージ」(18~21日)からとなりましたね。 松山 (ツアーが再開されるのは)勝手に7月くらいかなと思っていたんですが、予想より早く再開されたので、少し慌てました。それまで「いつまでに」「何をすればいいのか」分からない状態で、ただ練習していた感じだったので、復帰直後は自分が思っているよりもゴルフの調子は良くなかったですね。「いい感じ」と思っても、4日間のうち、どこかで“やらかして”しまうんです。それが「BMW選手権」(8月27~30日。松山は3位タイ。ツアー再開後、初のトップ10フィニッシュ)まで続いてしまった感じですね。 GD その後、PGAツアーは新しいシーズン(2020-21)が始まって、「ヒューストンオープン」(11月5日~8日)では、久しぶりに優勝争いに加わりましたね。 松山 ラスベガス(シュライナーズホスピタルオープン。10月8~11日)で予選落ちして、その後2試合は予選落ちのない試合だったので、思い切って新しいことを試せたのがよかったですね。そのタイミングで、目澤さん(目澤秀憲コーチ)と出会えたのも大きかった。新しいことを試すのは勇気がいりますが、目澤さんのアドバイスが背中を押してくれる形になりました。 自分の中の引き出しを目澤コーチが開けてくれた GD 目澤コーチは、年齢も近いですが、以前から面識があったのでしょうか。 松山 いえ、目澤さんのほうが1年先輩で、一応学生の頃からそういう人がいるという認識があった程度です。実際に会ったのは10月の「CJカップ」(15~18日)の練習日が初めてでした。 目澤秀憲コーチは有村智恵、河本結を指導していることでも知られる。週刊GDで「世界基準を追いかけろ!」を連載中 GD それはどういう経緯で? 松山 いつも帯同してもらっているメーカー(スリクソン)のツアーレップの方が目澤さんと知り合いで、「CJカップ」の前週の「全米女子プロ選手権」に、(コーチを務める河本結に帯同する形で)目澤さんが来ていたので、(スウィングを見てもらいたいなら)「電話してみれば」みたいな感じで。そしたら、滞在を延長して「CJカップ」のほうに来てくれました。 GD 松山プロは、これまで決まったコーチについたことがありませんでしたが、目澤コーチとはどうして「一緒にやろう」ということになったのでしょうか。 松山 最初に会ったときに「どういうスウィングにしたいの」って聞かれて、自分の考えを言ったら、「じゃあこういう動きを入れてみたらどうか」って提案されたんですね。その動きというのは、それまでにも試したことはあって、自分ではどちらかというと「入れたくない動き」だったんですが、目澤さんが「なぜその動きが必要か」を説明してくれて、自分でも「そういうことか」って。 GD 最初から納得できたと。その「動き」というのは? 松山 言えません(笑)。でも今までも、できれば(スウィングを)見てほしいという人は何人かいたんですが、実際に会ってみると「教えられない」とか、「(どこが悪いのか)分からない」って言われることもあって。目澤さんには、最初のセッションで、自分が忘れていたことを指摘されたのがよかった。自分の技術の「引き出し」の中には、知らず知らずのうちに、もう使わなくなっているものがけっこうあるんですが、その中のひとつを目澤さんが改めて開けてくれたって感じですかね。 GD これまでに関わった外国人コーチ、たとえばブッチ・ハーモンや、ピート・コーウェンなどとも違うと。 松山 相手が外国人だと、やっぱり「言葉の壁」が大きいんですね。通訳を介してだと、自分がどう思っているのか100%は伝えられないんです。もちろん、契約しているわけじゃないので、深いところまでは教えてくれないということもあるんですが。 GD 目澤コーチなら、その点、細かいニュアンスも伝わると。 松山 そうですね。 早く勝ちたいそのためには“変化”をいとわない GD いま取り組んでいる、あるいは今後取り組んでいくことというのは、スウィングを作り変える作業になりますか。それとも、方向性は変えずにマイナーチェンジをしていく? 松山 「ヒューストンオープン」の前に、もう自分ではかなり大きく変えているので、必要があればどんどん変えていくつもりではいます。19年の10月くらいからずっと取り組んでいたことがあったんですが、それとはまったく違う、新しいことにチャレンジしましたから。 GD それがプラスに働いているということですね。イニシアチブは、松山プロがとる? 松山 目澤さんはコーチですから、常に「こうしたほうがいいよ」という提案をしてくれますが、最終的にやるかどうか決めるのは自分だと思っています。これまでも、自分ひとりでさんざんやってきた蓄積があるので、「まったく新しいこと」は、もうほとんどないんですね。それでも目澤さんは、気づいてなかった部分とか、忘れていたことをポンと目の前に出してくれるので、刺激になります。 GD 以前、「意識せずに軽いドローになるスウィング」が理想と言っていましたが。 松山 それは今も変わっていません。理想のドローのイメージに近づくために、何をするかというところですね。 GD 新たにコーチという力強い味方を得て、2021年の目標は? 松山 「ヒューストンオープン」で久々に優勝争いをして、やっぱり「勝ちたい」という思いが強かったので、まずは早く1勝したいですね。そうすれば、その先に「メジャー」が見えてくるような気がしています。 週刊ゴルフダイジェスト2021年1月5・12日合併号より

マスターズ制覇を果たした
松山英樹のすべてがここに!

  • 【臨時増刊】松山英樹 マスターズ制覇の軌跡
    【臨時増刊】松山英樹 マスターズ制覇の軌跡 【月刊GD2021年6月号臨時増刊】●2021年4月30日発売■紙版定価:700円 ■電子版価格:600円 (ともに税込) 悲願のメジャー優勝を記念して緊急出版! 独占取材、撮り下ろし写真も満載の完全保存版 ついにその日がやってきた。日本のゴルフファン悲願の男子メジャー優勝。それを松山英樹は、マスターズでやってのけた。ゴルフダイジェスト誌では、マスターズ開幕前からアメリカで同行取材を敢行。今シーズンからコーチとなった目澤秀憲をはじめとする「チーム松山」の挑戦を追いかけ、さらにマスターズ4日間の「優勝への軌跡」をつぶさにレポート、そして優勝後の松山の生の声も収録しています。ゴルフ写真家・宮本卓氏による感動的な写真の数々、「マスターズ・グラフィティ」たっぷり掲載。他にもライバルプロたちの言葉、マスターズを制したクラブセッティング、松山の原点・東北福祉大学ゴルフ部で取り組んできた練習の数々などをお届けする完全保存版です。 詳細はこちら サンプル版を読む 電子版書籍をamazon Kindleで購入 ※紙書籍も同じページから購入可能です。 読み応え満点! 快挙の裏側をお届け【目次】 ■松山英樹 マスターズ2021グラフィティ ※撮影:写真家 宮本卓■優勝記者会見 一問一答■“278打”を振り返る 偉業達成の4日間■誇り高きルーザー ザンダー・シャウフェレ■マスターズ直前 密着!フロリダ同行記■コーチ目澤秀憲と挑んだ「3か月間」 …松山のカラダに“感覚”が宿った■いざッ!オーガスタへ What's in the bag?■すべては2011年のローアマから始まった■松山とオーガスタ全記録 10年の積み重ねが栄冠に導いた■Who is him. 松山英樹■松山英樹の原点 東北福祉大ゴルフ部■メジャーの頂に挑んだ「侍」列伝■「涙の惜敗」から4年後の快挙 メジャー全成績■2021マスターズグッズ プレゼント 【関連リンク】番記者が語る松山英樹の凄さ ニッポン放送のポッドキャスト「報道記者レポート2021」で公開された、松山英樹のマスターズ制覇の軌跡。GD記者も登場し、アメリカでの現地レポートや松山英樹の強さ、意外な素顔も語ります。ぜひお聴きください!← 画像をクリック!