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松山英樹が4年ぶりに手にしたスリクソン。「ZX」を選んだ決め手とは?

日本人として初めてマスターズを制した松山英樹が使用するドライバーが、スリクソン「ZX5」。2021年GDアワード、クラブ・オブ・ザ・イヤーのドライバー部門を受賞した、この「ZX」シリーズとは、どんなクラブなのか。松山英樹が4年ぶりにスリクソンのドライバーをバッグに入れた理由とともに見ていこう。

PHOTO/Takahiro Masuda

「ZX」はPGAツアー選手
ターゲットにして作られた

毎年恒例のゴルフダイジェストアワード、今年度のクラブ・オブ・ザ・イヤーのドライバー部門を受賞したのは、スリクソンの「ZXシリーズ」だ。ZXが大きな注目を集めたのは昨年8月。PGAツアーの「BMW選手権」で、松山英樹が4年ぶりにスリクソンのドライバー(ZX5 プロタイプ)を実戦で使用したことが大きな話題となったからだが、まずはこの「ZXシリーズ」がどんなモデルなのかを見ていくことにしよう。

「ZXシリーズ」のコンセプトを一言でいうと、「PGAツアーの選手をターゲットに開発されたモデル」だ。つまり、スリクソンが世界最高レベルの舞台で戦うトッププロたちを満足させるために、“世界基準”で作り上げたクラブということだ。

世界のトッププロを満足させるには、まずは「顔のよさ」が必要だが、ZXでは反発性能的に有利なカップフェースではなく、あえて開口型フェースを採用することですっきりしたトップラインを実現している。

もちろん顔のよさだけでトッププロが使用してくれるほど現在のドライバー競争は甘くない。昨今のツアーでは飛ばし屋が上位に並び、ドライバーの飛距離性能はアマチュアと同様にプロたちにとっても絶対的に必要なものだ。この点については、剛性をエリアによって変えた画期的な4層構造の「リバウンドフレーム」を採用することで、ルール上限の高初速を安定的に生み出すことに成功した。


顔の良さ飛距離性能を両立

Point1 開口型フェース採用ですっきりとした顔つきに
反発性能を考えると「カップフェース」のほうが有利だが、あえて開口型フェースを採用することでネックからトウにかけてのラインをすっきりと見せることに成功

Point2 剛性の高いエリアと低いエリアを交互に配置した4層構造
フェースは剛性を低めに、フェース周辺部は高め、折り返し部は低め、クラウンとソールは高めと剛性の高いエリアと低いエリアを交互に配置した「リバウンドフレーム」で反発性能をアップ

Point3 深重心&高慣性モーメントでやさしく飛ばせる
前モデルよりも重心深度を深くし、慣性モーメントを高めることで、ミスヒットに対する許容性を大幅に向上。トッププロたちにとっても、やさしく飛ばせることは大事な要素なのだ

Point4 寛容性重視の「ZX5」操作性重視の「ZX7」2モデルを用意
高い飛距離性能はそのままに、より重心深度が深く許容性を重視した「ZX5」と、やや浅めの重心深度でコントロール性を重視した「ZX7」の2タイプをラインナップ



こうしたブレークスルーは、仮説と検証というプロセスを地道に繰り返すことで生まれる。ZXの開発にあたっても、ヘッドに網目状の大量のセンサーを張り付けてインパクト時のヘッド挙動を徹底的に分析するなかで、「ここを少し硬くしてみよう」「今度はこっちを軟らかくしよう」といったことをひたすらに繰り返したことによってたどり着いた成果なのだ。

昨今の海外ブランド人気のなかで、スリクソンが日本の技術力により世界のトップブランドとしてのスタートラインに立ったモデルがZXシリーズなのだ。

松山がZXをバッグに入れるまで
初速スピン量が決め手になった」

ZXはPGAツアーの選手をターゲットにしていたが、そこには当然ながら松山英樹も含まれていた。ご存じのようにここ数年、松山はスリクソンのドライバーを使用していなかった。これはスリクソンブランドを愛する松山からの無言のメッセージともいえる。開発陣もそのメッセージを痛いほどに感じ、開発の原動力にもなっていた。

実は開発陣たちは少しずつ手ごたえを感じていた。ZXシリーズの前モデル「Z585/Z785」では飛距離性能に著しい進歩が見られ、メジャーで勝ち星も挙げていた。そうした実績も積み上げたなかで満を持して開発したZXシリーズ。松山が実戦投入した経緯をスリクソンのプロ担当・宮野敏一さんに振り返ってもらった。

「松山選手は、昨年8月のBMW選手権から『ZX5 プロトタイプ』を使い始めたのですが、それまでもずっとテストはしていました。でも、実戦でも使えそうだなと思ったのは、BMW選手権の週ですね。ずっと使ってもらいたいという思いはありましたが、無理に使ってもらいたいとは思っていなくて。松山選手がいいプレーをすることがいちばんですから。それを、スリクソンのクラブでできたらいいなと思っていました。ZX5ならそれができるんじゃないかなという期待はありましたが、自信があったかというと、それは……。クラブを替えるって選手にとっては簡単なことではないですから」

4日間の平均飛距離が
22Yも伸びた

では松山がZX5の使用を決断する理由はどこにあったのか。

「決め手になったのは、松山選手が納得できるボールスピードとスピン量のデータが出たということです。スピン量は2600回転くらい。それまでは2400回転ぐらいでした。2400だと、ちょっと油断してかぶったりすると2000回転くらいになってしまう。ZX5はスピンは入るけど飛びそうな気配があった。ボール初速が3m/sくらい伸びましたから」

そして大会前日の水曜日。宮野さんは実戦投入を“確信”することになる。

「火曜日の練習場で手ごたえがあり、松山選手が『水曜日の練習ラウンドに持っていきます』と。練ランは(コロナの影響で)コースに入れず見送るしかなかったんです。松山選手はドチーピンを打って出ていきましたが、ZX5しか持っていかなかった。そのときに、このクラブをものにしようとしているのを松山選手から感じました。試合で戦うクラブの条件を満たしていましたし、これをものにすれば今よりよくなるというのを松山選手もわかっていました」

4年ぶりにスリクソンのドライバーを使用した松山の4日間の平均飛距離は、それまでのシーズン平均を22Yも上回っていた。

「そこから11月のヒューストンOPまでは、毎日夜の12時くらいまでシャフトやヘッドのジェルの位置の調整など、いろいろやりました。ヘッドだけで30個は調整した。やれることって天文学的にあるので(笑)」

PGAツアーの選手をターゲットにしたZXシリーズは、開発陣と現場のプロ担当による絶え間ない努力によって、最大のターゲットの獲得に成功したのだ。

週刊ゴルフダイジェスト2021年4月13日号より

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