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【新春インタビュー】松山英樹が初めてコーチをつけた! その真相を直撃

TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Takanori Miki、Tadashi Anezaki、Takahiro Masuda

2020年11月、「ヒューストンオープン」で久しぶりに優勝争いを演じた松山英樹。その陰には、意外な人物の存在があったという。コロナ禍でのツアー、2021年の展望など、一時帰国中の松山がすべてを語ってくれた

4日間のうち必ずどこかで
“やらかして”しまっていた

――米PGAツアーの2019-2020シーズンは、新型コロナウイルス蔓延の影響により、3月中旬の「プレーヤーズ選手権」から、5月上旬の「AT&Tバイロンネルソン」までの試合がキャンセルされ、その後もスケジュールの変更や無観客での開催を余儀なくされた。

GD 調子を保つのが難しいシーズンだったかと思いますが。

松山 「ジェネシス招待」(2月13~16日)のときは、スウィングに関してなんとなく「こんな感じかな」という手ごたえがあったんです。「アーノルドパーマー招待」(3月5~8日)で、初日にすごくいいスタートが切れて、「残りの3日間が楽しみ」と思ったんですが、結局、逆にぐちゃぐちゃになってしまって……。それで「プレーヤーズ」から試合がキャンセルになったので、どうしようかと迷いましたが、日本に帰ってくることにしました。最初は仙台で、途中からは宮崎で練習していましたが、当時の状況で、練習場所がきちんと確保できたのは、ラッキーだったと思います。

GD ツアー復帰は6月の「RBCヘリテージ」(18~21日)からとなりましたね。

松山 (ツアーが再開されるのは)勝手に7月くらいかなと思っていたんですが、予想より早く再開されたので、少し慌てました。それまで「いつまでに」「何をすればいいのか」分からない状態で、ただ練習していた感じだったので、復帰直後は自分が思っているよりもゴルフの調子は良くなかったですね。「いい感じ」と思っても、4日間のうち、どこかで“やらかして”しまうんです。それが「BMW選手権」(8月27~30日。松山は3位タイ。ツアー再開後、初のトップ10フィニッシュ)まで続いてしまった感じですね。

GD その後、PGAツアーは新しいシーズン(2020-21)が始まって、「ヒューストンオープン」(11月5日~8日)では、久しぶりに優勝争いに加わりましたね。

松山 ラスベガス(シュライナーズホスピタルオープン。10月8~11日)で予選落ちして、その後2試合は予選落ちのない試合だったので、思い切って新しいことを試せたのがよかったですね。そのタイミングで、目澤さん(目澤秀憲コーチ)と出会えたのも大きかった。新しいことを試すのは勇気がいりますが、目澤さんのアドバイスが背中を押してくれる形になりました。

自分の中の引き出しを
目澤コーチが開けてくれた

GD 目澤コーチは、年齢も近いですが、以前から面識があったのでしょうか。

松山 いえ、目澤さんのほうが1年先輩で、一応学生の頃からそういう人がいるという認識があった程度です。実際に会ったのは10月の「CJカップ」(15~18日)の練習日が初めてでした。

目澤秀憲コーチは有村智恵、河本結を指導していることでも知られる。週刊GDで「世界基準を追いかけろ!」を連載中

GD それはどういう経緯で?

松山 いつも帯同してもらっているメーカー(スリクソン)のツアーレップの方が目澤さんと知り合いで、「CJカップ」の前週の「全米女子プロ選手権」に、(コーチを務める河本結に帯同する形で)目澤さんが来ていたので、(スウィングを見てもらいたいなら)「電話してみれば」みたいな感じで。そしたら、滞在を延長して「CJカップ」のほうに来てくれました。

GD 松山プロは、これまで決まったコーチについたことがありませんでしたが、目澤コーチとはどうして「一緒にやろう」ということになったのでしょうか。

松山 最初に会ったときに「どういうスウィングにしたいの」って聞かれて、自分の考えを言ったら、「じゃあこういう動きを入れてみたらどうか」って提案されたんですね。その動きというのは、それまでにも試したことはあって、自分ではどちらかというと「入れたくない動き」だったんですが、目澤さんが「なぜその動きが必要か」を説明してくれて、自分でも「そういうことか」って。

GD 最初から納得できたと。その「動き」というのは?

松山 言えません(笑)。でも今までも、できれば(スウィングを)見てほしいという人は何人かいたんですが、実際に会ってみると「教えられない」とか、「(どこが悪いのか)分からない」って言われることもあって。目澤さんには、最初のセッションで、自分が忘れていたことを指摘されたのがよかった。自分の技術の「引き出し」の中には、知らず知らずのうちに、もう使わなくなっているものがけっこうあるんですが、その中のひとつを目澤さんが改めて開けてくれたって感じですかね。

GD これまでに関わった外国人コーチ、たとえばブッチ・ハーモンや、ピート・コーウェンなどとも違うと。

松山 相手が外国人だと、やっぱり「言葉の壁」が大きいんですね。通訳を介してだと、自分がどう思っているのか100%は伝えられないんです。もちろん、契約しているわけじゃないので、深いところまでは教えてくれないということもあるんですが。

GD 目澤コーチなら、その点、細かいニュアンスも伝わると。

松山 そうですね。

早く勝ちたい
そのためには“変化”をいとわない

GD いま取り組んでいる、あるいは今後取り組んでいくことというのは、スウィングを作り変える作業になりますか。それとも、方向性は変えずにマイナーチェンジをしていく?

松山 「ヒューストンオープン」の前に、もう自分ではかなり大きく変えているので、必要があればどんどん変えていくつもりではいます。19年の10月くらいからずっと取り組んでいたことがあったんですが、それとはまったく違う、新しいことにチャレンジしましたから。

GD それがプラスに働いているということですね。イニシアチブは、松山プロがとる?

松山 目澤さんはコーチですから、常に「こうしたほうがいいよ」という提案をしてくれますが、最終的にやるかどうか決めるのは自分だと思っています。これまでも、自分ひとりでさんざんやってきた蓄積があるので、「まったく新しいこと」は、もうほとんどないんですね。それでも目澤さんは、気づいてなかった部分とか、忘れていたことをポンと目の前に出してくれるので、刺激になります。

GD 以前、「意識せずに軽いドローになるスウィング」が理想と言っていましたが。

松山 それは今も変わっていません。理想のドローのイメージに近づくために、何をするかというところですね。

GD 新たにコーチという力強い味方を得て、2021年の目標は?

松山 「ヒューストンオープン」で久々に優勝争いをして、やっぱり「勝ちたい」という思いが強かったので、まずは早く1勝したいですね。そうすれば、その先に「メジャー」が見えてくるような気がしています。

週刊ゴルフダイジェスト2021年1月5・12日合併号より