【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.63「スコアか、ゴルフの精神か」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Masaaki Nishimoto
何やここ数年ですけど、自分がちゃんとゴルフと向き合ってないのと違うかなと考えることが多くなりました。
やっぱりプロゴルファーですから、成績を出したいとか、シードを守りたいとか、ゴルフの本質とはちょっと違うほうに気がいって、僕が一番大切にせなあかんと考えておる、ゴルフの精神から懸け離れたこともやっておるような気もしたんです。
たとえば、以前も触れたプリファードライ。ゴルフの精神からすれば、どんなに悪条件でもボールを拾い上げて別の場所に置くなんていうことは許されへんのです。
せやけど競技のローカルルールでは、それをやってもええとなることもあります。雨の日か、その翌日ですね。
競技者としてゴルフをやっている以上は、ルールを最大限に使います。ちょっとでもスコアにプラスとなるためです。ただし、ゴルフの精神という自分がよりどころにしておる考えからすると、「ゴルフと向き合っておらんのと違うか?」と考えてしまうのです。
スコアを選ぶか、ゴルフの精神を選ぶか、矛盾ですね。
競技者ですから、予選会も上位にいきたい、試合にも出たいとか、そりゃ、もう僕にとっては生活の糧ですから、試合をやっておる限りついてまわる、永遠のテーマかもしれません。スコアメイクか、それともゴルフの精神に従うのか。
ただ、最近はゴルフと向き合ってさえいれば、競技者やのうて、プロゴルファーとして一生を終えられるのと違うやろうか、と感じる部分が大きくなってきました。
僕も年齢が60代になって、体力も落ちてきているのは自覚しています。それでも、その体力なりの最善のパフォーマンスを目指すというのがゴルフの精神やと思っております。
僕はゴルフに対して一生を貫く仕事だと思ってやってきました。最後の最後に「ゴルフと向き合ってきてよかった」と思えるのは、どっちやろうか、と考えるのです。
アマチュアの人はスコアがどうであれ、それで生活が変わるものでもないし、楽しくゴルフができればええのやと思います。僕も同じようにゴルフの精神と向き合いつつ、楽しくゴルフができるようにしたいと思っておるのです。
「この意味では、エビさん(海老原清治)なんかはほんまにええお手本です」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年1月4日号より