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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.61「トム・ワトソンとの2ショット」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO / Tadashi Anezaki

前回のお話はこちら

憧れのプロゴルファーというたら、もちろんエビさん(海老原清治)とか、ぎょうさんおります。けど、ワールドワイドとかメジャーウィナーとかのくくりやったら、やっぱりトム・ワトソンやね。

ターンベリーでやった全英オープン(09年)で、ワトソンが最後の最後にボギーを打ってスチュワート・シンクとプレーオフになったときは、めちゃくちゃ応援しておったのに、ほんまに残念で、自分のことのようにがっかりしたものです。

あれで優勝しておったら、ワトソンは59歳やったから、ジュリアス・ボロスが68年の全米プロでつくったメジャー最年長優勝(当時)の48歳を大幅に上まわる大記録になるところやったのです。

その翌年、シニアデビューした僕は、日本オープン優勝者の資格で全英シニアオープンに行きました。会場はカーヌスティです。


ゲームが終わってクラブハウスのロビーに行くとワトソンがおります。選手同士やから「ヘイ・トム!」と英語で気軽に呼びかけて、「キャン・アイ・テーク・ピクチャー・ウイズ・ミー?」と言ったら、「オー・シュアーOK」とニコニコ笑って応じてくれはったのです。ええ男ですな。

一緒に行っていた友人にシャッターを押してもらったのです。そしたらその友人も「僕も」と言うので、「マイフレンドもOKか?」と頼んで、僕がシャッターを押しました。ところが友人が撮った写真はボケボケで、僕が撮った写真はバッチリやったのです。ほんまにガッカリでした。

一昨年のロイヤルリザム&セントアンズの全英シニアで、途中大雨で中断になったときに、僕は鈴木亨とごはんを食べていました。「ワトソンは、この全英シニアが最後の出場になるらしいね」とか話をしておったら、亨がワトソンを見つけて「奥田さん、写真を一緒に撮ってと言ってくださいよ」と言うので、「じゃあ頼みに行こうか」となったのです。

今度は「ウイズ・ミー?」やのうて「ウイズ・アス?」です。

もちろん「シュアーOK」となって、3人で撮った写真はバッチリで、今もお守りのように僕のスマホのなかに保存しております。

何かのインタビューでワトソンは「リンクスは私の人生そのもの」と言っておったそうやけど、僕もそんな台詞を言ってみたいものです。

「カッコええ台詞です。本人もカッコええ男です」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2021年12月21日号より