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渋野、古江は「Qシリーズ」から。ほかにはどんなルートがある? 米女子ツアー参戦への道をおさらい

現在、畑岡奈紗や笹生優花らが参戦し、活躍を続ける米女子(LPGA)ツアー。今年は渋野日向子と古江彩佳が来季の出場権獲得を目指し最終予選会に挑戦するが、そもそも米女子ツアーに参戦するにはどのような資格が必要なのか。予選会を突破する以外にも道はあるのか。日本選手が米女子ツアーに参戦するためのルートをまとめてみた。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Tadashi Anezaki、Shinji Osawa

【米女子ツアーメンバーへの道1】
「Qシリーズ」を通過する

米LPGAツアーに出場するには、予選会である「Qスクール」を勝ち上がり、最終予選会「Qシリーズ」で上位に入るというルートが定石。Qシリーズでは、総額15万ドルの賞金も支給される。

2019年は、河本結(後列右から2番目)と山口すずか(後列右から3番目)がそれぞれ9位、16位の成績でQシリーズを突破した(Photo by Matt Sullivan/Getty Images)

2週間で8ラウンドの過酷な戦い

来季の米LPGAツアー出場権をかけた最終予選会「Qシリーズ」が12月2日に開幕する。米女子ツアーの予選会は1965年から行われ、岡本綾子も81年に出場して出場権を勝ち取っている。この予選会を突破することが、米女子ツアーに参戦する“王道ルート”と言えるだろう。

「Qスクール」と呼ばれる米女子ツアーの予選会のシステムは3年前に変更され、「ステージ1」「ステージ2」、そして最終予選会「Qシリーズ」の3段階になっている。日本からは多くの女子プロが世界ランク(ロレックスランキング)400位以内の資格で「ステージ2」から出ることができ、今年も2名の日本人が参加した。

12月2日に開幕する最終予選会「Qシリーズ」の出場資格は世界ランク75位以内。日本人では例年10人前後が該当し、渋野日向子と古江彩佳はこの資格でQシリーズに挑戦する。45位以内に入れば、晴れて米女子ツアーのメンバーとなる。

渋野は最近の試合で結果を残すなど、復調の兆しを見せ、古江は賞金女王争いに加わるなど好調をキープ。ふたりとも順当にいけば45位以内に食い込めるだろうが、2週間で8ラウンドの長丁場。実力もさることながら、体力と集中力も要求される過酷な戦いになるだろう。

ステージ1は広く門戸が開かれているが、そこから最終予選会に勝ち上がるには実力だけでなく時間と費用もかかり、現実的にはかなり厳しく狭き門。万が一、勝ち上がれたとしても、最終予選会には実力のある世界ランク上位の選手が参戦するため、多くの選手は翌年の下部ツアー「シメトラツアー」出場権どまりとなる


2021 LPGA「Qシリーズ」

ザ・ロバート・トレント・ジョーンズ・ゴルフトレイル(アラバマ州)

Week 1(12月2日~5日) マグノリア・グローブ
Week 2(12月9日~12日)ハイランド・オークス

最終予選会「Qシリーズ」は、432ホールを有するアラバマ州のモンスターコース「ザ・ロバート・トレント・ジョーンズ・ゴルフトレイル」で開催。第1週と第2週で使用するコースが変わる。計8ラウンド144ホールのストロークプレーで45位タイ以内に入ればツアーメンバーに。また45位以内に入れなくても、第2週の予選を通過した選手全員にシメトラツアーの上位出場資格が与えられる


【米女子ツアーメンバーへの道2】
「ノンメンバー40」の資格で出場

最終予選会「Qシリーズ」で45位以内に入れば、文句なしで来年のLPGAツアー出場権が手に入るが、もし突破できなかったとしても、1年後の最終予選会を待たずに2023年の出場権を手に入れられる方法がある。そのひとつが「ノンメンバー40」というシステムだ。

米女子ツアーのノンメンバーとして19年全英女子オープンで優勝した渋野日向子。20年シーズンを迎える前にメンバー登録をすればLPGA会員として20年の試合に出場することができたが、当時は「英語も話せないし……海外への意欲はあまりあるわけではない」と登録を見送った。そのため昨年から今年にかけてはメジャー勝者の資格と推薦によるスポット参戦で米ツアーに挑戦し、今回の最終予選受験に至っている。

しかし、メジャー優勝による出場資格がある大会は来年もあり、彼女の知名度や人気から推薦も多く得られるだろう。さらに世界ランク上位をキープできれば出場可能な試合は増え、そこで勝てば、そのままLPGA会員になることもできる。もし優勝できなくとも出場できる試合で上位を続け、獲得ポイントを積み上げていけば、「ノンメンバー40」の資格で23年の出場権が見えてくる。

「ノンメンバー40」とは
その年に出場した試合で獲得した「CMEポイント」の合計がポイントランク40位以内に相当すれば、翌年の出場権が付与される制度。昨シーズンまでは賞金ランクだったが、今年からポイントランクに変更された。16年には韓国のパク・ソンヒョンが推薦などで7試合に出場し、すべて予選通過、トップ10入り4度と活躍。賞金ランク17位相当で、翌年の出場権を獲得。そしてフル参戦初年度の17年に全米女子オープンを制すなど2勝して賞金女王に輝いた

【米女子ツアーメンバーへの道3】
スポット参戦の試合で優勝する

米女子のツアーメンバーになるもう1つの道が、米ツアーの試合で優勝すること。なかでも最も可能性が高いのが、日本で開催される日米共催競技で優勝することだ。

上田桃子は07年のミズノクラシックを制し、米ツアーへの挑戦権を手にした

新型コロナウイルスの影響により、昨年に続き日本単独での開催となった「TOTOジャパンクラシック」だが、一昨年までは「日米共催競技」という位置づけで、米女子ツアー公式戦として開催されていた。1999年から2014年までは「ミズノクラシック」という名称で開催され、上田桃子が07年大会で優勝。翌年から米女子ツアーに挑戦すると、11年も同大会を制し13年までアメリカを主戦場に戦った。

「オープン競技」で優勝する

畑岡奈紗とのプレーオフを制し、今年の全米女子オープンで優勝した笹生優花。笹生は世界ランク75位以内の資格で出場したが、オープン競技なので、プロ・アマ関係なく予選会を通過すれば出場可能。2014年からは米国以外でも予選会が開催されるようになり、日本地区最終予選が36ホールのストロークプレーで行われている。新型コロナの影響で昨年の予選会は中止となったが、今年はプロ63名、アマ45名の計108名で争われ、勝みなみやアマチュアの小暮千広さんなど5人が全米女子オープンの出場権を手にした。

昨年まではメジャーで優勝するとメンバーは5年のシード権が与えられていたのに対し、ノンメンバーには2年のシード権だった。これが不公平だという意見が多く、今年からメンバー同様、5年シードが与えられるようになり、優勝した大会のポイントも加算されることに。もちろん笹生優花にも適用されている。

週刊ゴルフダイジェスト2021年11月30日号より

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