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【世界基準を追いかけろ!】Vol.55 全米アマで見た世界の最先端。多国籍化が激化

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今週から数回にわたり、8月に開催された全米アマチュアゴルフ選手権について語っていく。この大会を視察してきた事情通のX氏を交え、米国並びに世界のアマチュアゴルフ事情を考察する。

前回のお話はこちら

GD X氏は全米アマを見てきたということですが、何か目を引いたことはありますか。

X 今年は中島啓太や米澤蓮ら日本人選手は過去最多の8人が参戦しましたが、それに象徴されるように、米国以外の国からの参戦が目立ちましたね。

GD アマチュアゴルフ界も本格的な多国籍化の波が到来ですか。

X スウェーデンやスペインなどの欧州勢は今までもいましたが、ゴルフ環境がそんなに進んでいると思えないチリなどのゴルフ後進国からの参戦は、その良い例だと思います。

GD 理由は何だと思いますか。


X 中学生の頃から優秀な選手を米国に留学させ、スカラシップを得てカレッジに入学し、そこでゴルフの力を付けていく。その後は国に戻り、母国の選手として活躍するパターンが多いですね。

GD ノルウェーのビクトール・ホブランのケースですね。

X メキシコのカルロス・オルティスやエイブラハム・アンサーもそうですよね。

GD 彼らがアメリカの大学を目指すのは、米国の大学で活躍した選手はプロ転向していきなりPGAツアーで活躍できるというパターンが存在することも影響していますよね。

X そうですね。「PGAツアー・ユニバーシティ制度(※1)」というのがあって、大学の試合での成績上位者はコーンフェリーツアー(※2)への参戦権が与えられます。

目澤 ですから、卒業と同時にコーンフェリーツアーに参戦して、ツアーファイナルズを経て翌年にはPGAツアーに出場も可能というわけです。その最短ルートを目指して、早くからアメリカを目指すプレーヤーは多いですよね。先ほどのチリでいえば、ホアキン・ニーマンやギジェルモ・ぺレイラなどもそうです。

GD やはり環境面の違いが大きいのでしょうか。

目澤 彼らがその後プロ転向したときに回るような米国のいろんなコースを在学中に回ることで、そういったコースで求められるスキルや打つべき球を肌感覚で覚えていけるわけですから、それって大きいですよね。それに、フィジカル面を重視する米国のゴルフ界の流れを身を持って感じますから、トレーニングをしないととてもついていけないと思うはずです。そうした環境に身を置くことで、そこで生き残れたら次のステップのPGAツアーでもやっていけるチャンスがあるという目安が分かります。そうなるとやることが明確になり、頑張れますよね。その意味では、全米アマチュアゴルフ選手権は、今、一番最先端でゴルフを動かしている場であると言ってもいいかもしれません。

GD こういった多国籍化のトレンドに、日本のゴルフ界はついていけているのでしょうか。

目澤 今回、日本人選手が8人参戦したことは、そういう世界の流れを意識している表れだと思いますね。むしろプロよりもその点は敏感に流れに呼応していると思いますよね。

(※1)PGAツアー・ユニバーシティ制度……NCAA(全米大学体育協会)のディビジョン1に所属し4年間プレーした選手を対象に春のシーズン終了時点で、PGAツアー・ユニバーシティ・ランキングリスト成績上位者に、米国のコーンフェリーツアー、PGAツアーカナダのマッケンジーツアー、PGAツアーラテンアメリカ、PGAツアーチャイナの各下部ツアーへの出場権が付与される。(※2)PGAツアーの下部ツアーの名称が従来の「ウェブドットコム・ツアー」から2019年6月より「コーンフェリーツアー」に変更となった

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月28日号より