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【インタビュー】神谷和奏<後編>子育てしながらでも「いける気がした」自信の裏にあった努力と支え

今年、4度目の挑戦でプロテスト合格を手にした神谷和奏。出産を経て、子育てをしながらのプロテスト挑戦という大変さは想像を絶するが、意外にも本人は「いける気がしたから」とあっけらかんと話す――。

PHOTO/Akira Kato、Hiroaki Arihara、Sinji Osawa

神谷和奏 かみや・わかな 2001年生まれ。千葉県出身。ゴルフ歴は3歳~。身長165センチ

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4回目のプロテストで合格。
「最後のパットはしびれました」

ラウンドは、出産から約半年後。「9ホールのハーフでしたが、担ぎで回りました。感覚は悪くなかったのですが、ちょっと安定しない感じ。フワフワするというか、球がどっちに行くかわからないような……。それは、出産前はなかった感覚でした」。飛距離は落ちていたが「その分、曲がらないので、まあまあ、まとまりました(笑)」。

その後はトレーニングで徐々に飛距離も戻していった。

「実は、出産前に比べて体重が10キロほど落ちていたのですが、体重を戻そうとは思いませんでした。私の場合ですが、もともと体重を生かして飛距離を出すようなスウィングではなかったのだと思います。力のロスが大きかったんですね。今は、もう妊娠前の飛距離とほぼ変わりません」

妊娠・出産がなければ経験し得なかっただろう変化。

「ほんと、いろんなことの積み重ねがあって今のスウィング、プレースタイルがあるんだなあと思います」

前述のとおり、神谷和奏による出産後のプロテスト合格はツアー施行後初の快挙で、世間を驚かせた。小学生の頃から全国に名をとどろかせるアマチュアゴルファーたちが、プロテスト合格に向け一心不乱。そんなシビアな状況で、彼女は、なぜ諦めなかったか。

「え、だって……」、幸宏さんと声を揃えて言う。「いける気がしたから」。周囲からは「子育てしながらの受験は厳しいんじゃない?」という声が大きかった。でも二人とも、ちっともそうは思ってなかった。「その心配を吹き飛ばしてやろうと思ったよね?」と幸宏さん。「うん、そうだね」と和奏。


「1日ってみんな等しく24時間ですよね。たとえトップジュニア選手でも、24時間まるまるゴルフと向き合っている人はいないと思います。みんなSNSをやっているし、友達と出かけることもありますよね。私はその時間を削ってゴルフと向き合ったから、決して負けていないっていう自信はありました」。

一番嫌だと思っていたのが「諦めて後悔すること。とにかくやり尽くしたいと思っていて、プロテストもそんな気持ちで臨みました」と、淡々と話す和奏。それでも最終プロテストの最終日「最後の1メートルちょっとのパットはしびれました。これを入れれば受かるという一打。先に打った二人が入れ、私も何とかカップイン。入ったときは『うれしい』よりも『終わったー』でした。本当に長い道のりだったので。でも、合格者が喜ぶ一方では一打足りずに泣いている子もいる。そんな様子も写真に撮られたりするでしょう。私は、メディアさんに注目されてきた選手でもなかったですけど、落ちたときはメディアさんがいないところでシクシク泣いていました」

子育ては「大変でしょ? と心配してくれる方も多いですが、楽しんでいます。大変にならないよう、頑張っています(笑)。でも、私がそう言えるのも支えてくれる周囲の人たちのおかげだと思っています。夫はもちろんですが、夫の家族のみんなが温かく迎えてくれて。本当にうれしかったです。だって、ある日、息子が知らない女の子を連れて来て、それで孫ができます。私はゴルフやっています、プロテストを受けますって。そんなこと言われたら『ええっ』ってなりませんか? それなのに、スッと私を受け入れてくれて……」

幸宏さんの実家は、埼玉県内で文房具店を営む一家。プロゴルファーを目指す和奏を、温かくごく自然に受け入れ、子育てをサポートしてくれているという。さらに「うちの母も、今は仕事が忙しいので難しいのですが、子育てのサポートに加わってくれるみたい。母はもともと銀行員でしたが、教員免許を持っていて、教員になる夢があったみたいです。それで、思い切って銀行を辞めて今は学校で補助教員をしています」。何と、和奏の“諦めるのが嫌だ精神”は、もしかしてお母さんから受け継いだもの? 

二人の娘は咲凛ちゃん。母のスウィング動画を見て「すごーい」「さいこう」と、おしゃべりする様子が、なんとも愛らしい。この子にも、父の包容力や母のチャレンジ精神が受け継がれるのかなと思うと、なんだかこちらの心に明かりがともるような感じがした。

最後に、幸宏さんのプロフィールを確認しようと代表を務める「合同会社ジョイナー」のホームページを見たら、トップ画面にキャッチフレーズがあった。「結びつけてひと続きのものにする」と。「点」で生きるのもいい、でも「ひと続き」って、なんて心強い響きだろう。

2024年はステップ・アップ・ツアーが主戦場となる。目標は「賞金女王です」。複数回優勝を狙う

週刊ゴルフダイジェスト2024年1月9・16日合併号より
(本文中、プロは敬称略)