【松山英樹のローフェード】#1 勝負所で相手の心を打ち砕く、完璧にコントロールされた攻めのボール
松山英樹のドライバーショットといえば、高い弾道のドローボールが思い浮かぶが、勝負所でときおり見せるのが、抑えの効いた「ローフェード」。いったいどのような場面で使用し、どうやって打っているのか? ジュニア時代から松山としのぎを削ってきた黒宮幹仁コーチに解説してもらった。
TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Blue Sky Photos、Tadashi Anezaki、KJR THANKS/武蔵丘ゴルフコース
解説/黒宮幹仁
連載「世界基準を追いかけろ」でお馴染みのプロコーチ。松山英樹と同世代で、ジュニア時代からしのぎを削ってきたライバルだった。2021年の「ZOZOチャンピオンシップ」では松山のプレーを間近で観察
●CONTENTS●
#1 松山英樹のローフェードってどんな球?
#2 フェードなのに低スピン! どうやって打っている?
#3 ロフトを立てつつ緩やかに…鍵は手首の使い方
悪い流れを打ち破る球
松山英樹の理想の球筋はハイドロー。しかし、「ここぞ」というときに繰り出す決め球は「ローフェード」だと、学生時代に互いにプレーヤーとしてしのぎを削った、黒宮幹仁は言う。
「学生時代は“でっかいドロー”を打っていて、ミスは大体、右にプッシュなんですが、それで崩れそうになるときに、突然、ローフェードを打つんです。それも、出球、高さ、スピン量が完璧にコントロールされていて、ホールの『枠』に入れてくる。それをうまく使いながら、リズムを取り戻していくイメージでしたね。対戦相手の目線でいうと、(崩れかけて隙を見せるのかと思いきや)『そんな球があるの!?』という感じで、心を折られます」(黒宮)
確かに、フェードは「安全」というイメージがあるが、自分の持ち球とは「逆球」になる球筋を、あえて勝負どころで使ってくるのはなぜか。
「アウトサイドインで、でも緩やかな入射角で、というのは元々、苦手なわけじゃなくて、実際に数多くその球を打ってきたから、インパクトのイメージが出やすいんだと思います。大事な場面で安心して打てる球が、あのローフェードということです」(黒宮)
松山が圧勝した昨年の「ZOZO選手権」でも、ローフェードは使われていた。
「初日の5番、パー3で、(同組の)ザンダー・シャウフェレが、バーディを取って、英樹はグリーンを外してパー。次の6番は、ほぼ直角に曲がる右ドッグレッグで、ザンダーはストレートボールで飛距離を出してきたんです。それを見て、英樹が抑えたいいフェードを打ったんですね。流れが悪くなりかけたところを、グッと引き戻すようなショット。その後に打った、パン・チェンツェンが二人二様のナイスショットに混乱して、チーピンを打っちゃうくらい、すごい球でした」(黒宮)
松山英樹の「ローフェード」はこんな球
●「曲げたくないとき」に使用
トーナメントで上位を争うなかで、このホールだけは曲げたくないという「キーホール」で使用。あるいは、ティーショットの調子があまりよくないときに、悪い流れをリセットする意味でも使う。
●フェードなのにスピンが少なくランも出る
PGAツアーの選手は一様に球が高いが、それと比べると段違いで低い。タイガー・ウッズの有名な「スティンガー」にも通じる部分があり、低いが飛距離が出て、コントロールが利いた球筋だ
●多用すると通常のショットに影響も
持ち球のドローとは逆の動きになるため、試合中ずっと打ち続けていると、すぐには本来の体の動きに戻せなくなるリスクがある。また、この球は「ロースピン」のため、アイアンには不向き
どうやって打てばこんな球が出るの?
>>フェードなのに低スピン! どうやって打っている?
>>ロフトを立てつつ緩やかに…鍵は手首の使い方
週刊ゴルフダイジェスト2022年5月10・17日合併号より
こちらもチェック!
- 300Yを超える飛距離に加え、切れ味鋭いアイアンショットが持ち味の注目ルーキー・久常涼。厳しいピン位置をデッドに狙っていける秘密はどこにあるのか。若きアイアン名手の話に耳を傾けよう。 PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/よみうりゴルフウエストコース 解説/久常涼ひさつねりょう。2002年生まれ。岡山県出身。昨年、QT1212位だったにもかかわらず、Abe……
- フェアウェイのど真ん中、なんの変哲もないライで出る突然の「ペチッ」。ボールは右斜め45度のOBゾーンへ……。ゴルフのミスの中でも最も厄介な「シャンク」は、一度出ると二度、三度と連発してしまうタチの悪さ。今回は、そんな恐ろしいシャンクを食い止めるのに役立つレッスン記事をピックアップ。あなたのシャンクに合った治療法が必ずある! 体の開きが早いのが原因かも ……
- ツアーで引っ張りだこのパット専門コーチ・橋本真和氏と松山英樹のコーチ・目澤秀憲が身近なグッズを使ってできるパットの練習法を教えてくれた。まずは、自分のパットの状態をチェックするための動画での撮影方法から。 TEXT/Tadashi Anezaki THANKS/千葉CC川間C 橋本真和(右)TPIレベル1、アスリートボディケア・セルフトレーナーなどの資格を持ち、最新機器を用い……
- 最高峰のPGAツアー選手をはじめ、渋野日向子など多くのトッププロが取り入れ、結果を出している「シャローイング」。強靭な体を持ったアスリートゴルファーだけが可能なスウィングと思われがちだが、我々一般ゴルファーでも、飛距離を伸ばし、かつ曲がらないショットを手に入れるためには有効な動き。では、そもそもどんな動きで、どうすれば身につけることができるのか。動画での練習法なども交え、吉田直樹コーチが分かりや……